生化学(実験手法)

プラスミドDNAの抽出

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プラスミドDNAの抽出

前項では「大腸菌の形質転換について」を学びました。本項では大腸菌を形質転換した後に行われる「プラスミドDNAの抽出」について学んでいきましょう。

1.アルカリ変性法の原理

細胞や組織からのDNAやRNAの抽出」では、ゲノムDNAを取り出す操作について解説しましたが、大腸菌にはゲノムDNAだけではなく、プラスミドと呼ばれる環状の二本鎖DNAが存在します。

プラスミドなどのベクターを用いることによって「組換えDNA」を作製し、大腸菌に形質転換した後には、大腸菌からこのプラスミドを取り出す操作(これを「抽出」といいます)が必要になります。このときによく用いられる方法が「アルカリ変性法」です。

※ここでの組換えDNAとは、プラスミドなどのベクター(運び屋)に外来のDNAを挿入して作製したDNAのことを想定してください。

アルカリ変性法は、その名の通り、ゲノムDNAが強アルカリ性の条件下で「アルカリ変性」し、一本鎖DNAに解離するという原理を利用しています。ゲノムDNAはDNA鎖が非常に長いため、ここでは解離した一本鎖DNAは再び二本鎖DNAには戻りません。

※DNAの変性とは、DNAが二本鎖から一本鎖に解離することをいいます。二本鎖DNAは互いに水素結合(GとC:3つ、AとT:2つ)によって結合を維持していますが、この水素結合に使われている水素は、強アルカリ性の条件下(高pH)では遊離してきます(水素結合の消失)。

一方、プラスミドDNAは環状の二本鎖DNAであり、そのDNA鎖は短く、またコイル状の形状スーパーコイルと呼ばれます)をもちます。そのため、プラスミドDNAの場合、アルカリ変性によって解離した一本鎖DNAは、その後、酸を加えることによって中和することによって、もとの二本鎖のDNAの状態に戻ることができます。

2.プラスミドDNAの抽出のための準備

プラスミドDNAを抽出するにあたって、主に以下の4つを用意します。

形質転換した大腸菌
細胞溶解液
アルカリ-SDS液
中和液

形質転換した大腸菌・・・前日に形質転換した大腸菌(LB寒天培地に植菌した)のプレートを用意します。

※LB寒天培地は大腸菌をプレート上で培養するための培地です。

細胞溶解液・・・Tris(pH8.0)EDTAグルコースを含む細胞膜を破壊するための溶液です。Tris(pH8.0)は緩衝液(バッファー)、EDTAはキレート試薬(二価の金属イオンに結合し、活性を封じ込めます。ここではMg2+をキレートすることで、DNase(DNA分解酵素)が働かないようにします)、グルコースは浸透圧を高めることで細胞膜を破裂させるといった作用があります。

アルカリ-SDS液・・・NaOH(強アルカリ)SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、界面活性剤)を含む溶液です。NaOHによって、ゲノムDNAをアルカリ変性(一本鎖にする)させ、SDSでタンパク質を変性させます。SDSは強力な界面活性剤なので、細胞膜の溶解にも作用します。

中和液・・・酢酸アンモニウムなどの酸性の塩溶液です。NaOHによる強アルカリを急速に中和するとともに、塩析作用によってタンパク質とゲノムDNAが絡まって沈殿してきます。

3.プラスミドDNAの抽出の流れ

大腸菌の回収

 形質転換した大腸菌を37℃で培養すると、翌日にはLB寒天培地(プレート)上で大腸菌のコロニーが形成されてきます。これらのコロニーは1つ1つが同じ大腸菌由来のクローンになります。そのため、まずこのコロニーを1つチップの先などでつついて、大腸菌の培養液(LB液体培地のことです)に加えて、37℃で振とう培養しておきます。そうすれば、翌日には大腸菌が多量に増殖した培養液を得ることができます。これをチューブに加えて、遠心分離を行うことを繰り返すと大腸菌の沈殿物が回収できます。

プラスミドDNA抽出

①大腸菌の溶解

Tris(pH8.0)、EDTA、グルコースを含む細胞溶解液をチューブの大腸菌の沈殿物の上に加えます。細胞を懸濁させることによって、大腸菌を溶解させることができます。

②アルカリ-SDS変性

その後、NaOH(強アルカリ)SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、界面活性剤)を含む溶液を加えます。ゆっくりと転倒混和することで、細胞膜を溶解するとともに、ゲノムDNAやタンパク質を変性させることができます。

③中和

次いで、酢酸アンモニウムなどの酸性の塩溶液を加えます。転倒混和で混ぜ合わせることによって、アルカリ性となっていた溶液を中和させることができます。

RNaseを加えることによって、RNAを分解させます

③フェノール・クロロホルム抽出

フェノールとクロロホルムの混合液(1:1)を加えることで、タンパク質を完全に変性させます。遠心分離することで、水層(プラスミドDNA有り)とフェノール層に分離できますので、プラスミドDNAが含まれている水層を別のチューブに移します。

④イソプロパノール沈殿

当量のイソプロパノールを加え、遠心分離することによって、プラスミドDNAを沈殿させることができます(これを「イソプロパノール沈殿」といいます)。ここでのイソプロパノール沈殿の原理は、エタノール沈殿の原理と同じですが、イソプロパノールの方がエタノール よりも疎水性が高いので、より沈殿を形成させやすいという利点があります。

以降の作業は、「細胞や組織からのDNAやRNAの抽出」で解説した流れと同じです。70-80%エタノールでWashし、バッファーに溶解することでプラスミド抽出は完了です。

近年では、カラムなどを用いてDNAを吸着させることで、プラスミドDNAを精製するキットが販売されています。これらのキットを使用する際にも、上記の原理をしっかりと理解して実験操作を行うように心がけていきましょう。

プラスミドDNAの抽出についてはこれで以上です。
次は「1)ジデオキシ法による塩基配列解析の原理と概要」について学んでいきましょう。

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