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1)脂肪酸合成

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1.脂肪酸合成

β酸化はミトコンドリアで行われますが、脂肪酸の生合成は細胞質において行われます。まず最初に炭素数16(C:16)の飽和脂肪酸であるパルミチン酸が合成されます。その後、C16より長い脂肪酸や不飽和脂肪酸といったその他の脂肪酸に変換されていくという具合で進行していきます。

脂肪酸合成の原料には、アセチルCoANADPHが用いられます。これらは主にグルコースの代謝過程で供給されているため、食後などに血糖値が上昇して、摂取したグルコース量がエネルギー生産やグリコーゲン合成に必要な量を上回った場合には、炭水化物は脂肪酸に変換されます。

2.アセチルCoAの細胞質への輸送

脂肪酸合成の原料になるほとんどのアセチルCoAは、ミトコンドリア内においてピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によってピルビン酸から作られています。(これは解糖からクエン酸回路に入る前に行われる以下の反応です。)

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体が触媒する反応はこちら(復習)↓

そのため、ミトコンドリアのアセチルCoAを細胞質へと移動させなければなりませんが、アセチルCoAのままではミトコンドリア内膜を通過することができません。そこで、ミトコンドリアのアセチルCoAをオキサロ酢酸と縮合させることで生じたクエン酸を細胞質へと輸送しています。そして、このようにして細胞質へと輸送されたクエン酸は、ATPクエン酸リアーゼ(ACL)という酵素によって再びアセチルCoAに戻されています。

クエン酸は普段、クエン酸回路で利用されますが、「3)クエン酸回路の調節」でも解説したように、NADHやATPといったエネルギー源が豊富にある状態ではクエン酸回路は抑制されるので、クエン酸が脂肪酸生合成の経路に使われることになります。

3.マロニルACPとアセチルACPの合成

脂肪酸の合成は、パルミチン酸(C:16)をつくるところから始まります。その他の脂肪酸はパルミチン酸を材料にして作られていきます。

まずは、パルミチン酸がどのようにして作られていくのかを確認していきましょう。

アセチルCoAからマロニルCoAへ

脂肪酸生合成は、2炭素単位が繰り返し付加されることで行われています。

アセチルCoAから脂肪酸を合成するにあたって、まずアセチルCoAの「活性化」が行われています。付加されるC2単位には、アセチルCoAが直接利用されるのではなく、一旦、マロニルCoAが作られます。そして、このマロニルCoAがCO2を放出しながら脂肪酸の鎖にアセチル基を付加させているのです。

の反応は、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)という酵素によって行われ、ATPのエネルギーを使ってアセチルCoAに炭酸(HCO3−)を付加し、マロニルCoAを生成しています。

アセチル CoA を原料として、アセチル CoA カルボキシラーゼによりマロニル CoA が合成されるこの反応は、脂肪酸合成の律速段階の1つになっています。

以下、アセチルCoAとマロニルCoAからNADPHを補酵素としてパルミチン酸を合成する反応は、動物の場合、すべて多機能酵素である脂肪酸合成酵素(FAS)によって行われています。

マロニルCoAからマロニルACPへ

まず、マロニルCoAは、脂肪酸合成酵素(FAS)の一部であるアシルキャリアタンパク質(ACP)というタンパク質に結合することでマロニルACPになります。アシルキャリアタンパク質は、分子量10,000の小型タンパク質で、名前の通りアシル基を運ぶ役割をもちます。このマロニルACPが、脂肪酸に付加されていくC2単位になります。

この反応は、ACP-マロニルトランスフェラーゼという酵素によって行われています。(トランスフェラーゼは、転移酵素のことをいいます。)

アセチルCoAからアセチルACPへ

また、アセチルCoAは、脂肪酸合成酵素(FAS)の一部であるアシルキャリアタンパク質(ACP)に結合することでアセチルACPになります。このアセチルACPは、脂肪酸合成の最初の反応に用いられるアセトアセチルACPをつくるために必要な物質になります。

この反応は、ACP-アセチルトランスフェラーゼという酵素によって行われています。

4.アセトアセチルACPの合成

ここまでは、脂肪酸生合成に用いられる材料にアシルキャリアタンパク質(ACP)が結合して「安定化」(反応に利用できる形に変換)させる反応を確認してきました。

ここからは、脂肪酸合成の初期反応であるアセトアセチルACPの生成と脂肪酸の鎖の延長反応について解説していきます。

脂肪酸合成の初期反応(C4単位の形成)

脂肪酸合成の初期反応であるアセトアセチルACPは、マロニルACPとアセチルACPが反応することでつくられます。ちなみにアセトアセチルACPは、最も短い3-オキソアシルACP(一般名)です。

この反応では、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)の反応によって付加されたCO2が取り除かれているため、一見無駄なことをしているように思えますが、2 分子のアセチル ACP からアセトアセチルACPを生成する反応はエネルギー的に進まず、より高いエネルギーをもつマロニル ACP をアセチルACPと反応させることでアセトアセチルACPを生成しています。

5.パルミチン酸の合成

3-オキソアシルACPは「還元脱水還元C2単位付加」という一連の流れでマロニルACPを原料として2炭素単位ずつ付加されていきます。ちなみに、最初は炭素数4つ(C:4)の3-オキソアシルACPであるアセトアセチルACPから始まります。

脂肪酸の鎖の延長反応

まず、3-オキソアシルACP(アセトアセチルACP)は、3-オキソアシルACPレダクターゼによって還元されて、D-3-ヒドロキシアシルACPに変換されます。

次に、D-3-ヒドロキシアシルACPは、3-ヒドロキシアシルACPデヒドラターゼによって脱水されて、trans-Δ2-エノイルACPに変換されます。

その後、trans-Δ2-エノイルACPは、エノイルACPレダクターゼによって還元されて、アシルACPに変換されます。

最後に、アシルACPにマロニルACP由来のC2単位が付加されて、2炭素分が延長された3-オキソアシルACPに変換されます。

ちなみに動物の場合、これらの反応はすべて、脂肪酸合成酵素(FAS)によって行われ、反応の途中のC2単位の炭素および伸長中の脂肪酸は脂肪酸合成酵素の一部(アシルキャリアタンパク質:ACP)に結合しています。

最終産物としてのパルミチン酸

上記のC2単位が付加される反応が繰り返されることによって、最終的にパルミトイルACPが合成されます。

パルミトイルACPは、脂肪酸合成酵素(FAS)がもつチオエステラーゼによって加水分解され、最終産物であるパルミチン酸(C:16)となります。

パルミチン酸の合成を化学式で表すと以下の式のようになります。

これで脂肪酸合成については以上になります。
次は「2)脂肪酸のβ酸化」について学んでいきましょう。

 

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