ここでは、プリンヌクレオチドのde novo合成について確認していきましょう。
プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチド
核酸(DNAやRNAなど)の合成過程では、その原材料であるヌクレオチド(塩基、糖およびリン酸からなるDNAやRNAの基本単位)が必要になります。
ヌクレオチドは、結合している塩基の違いによって「プリンヌクレオチド」と「ピリミジンヌクレオチド」の2種類に大きく分類されます。
A(アデニン)とG(グアニン)はプリン塩基と呼ばれ、C(シトシン)とT(チミン)はピリミジン塩基と呼ばれています。プリン塩基とピリミジン塩基は、それぞれプリン環とピリミジン環をもつことに由来しています。
ヌクレオチドのde novo合成とサルベージ経路
まずは、ヌクレオチドの合成について確認していきましょう。
ヌクレオチド合成過程には、アミノ酸などを材料としてヌクレオチドを生合成する「de novo合成」と塩基やヌクレオシド(塩基と糖)を材料としてヌクレオチドを再合成する「サルベージ経路」の2つがあります。
プリンヌクレオチドの「de novo合成」
それでは、プリンヌクレオチドのde novo合成について確認していきましょう。
リボース-5リン酸から「PRPP」の合成
プリンヌクレオチドのde novo合成過程ではまず、リボース-5リン酸をもとにホスホリボシル二リン酸(PRPP:phosphoribosyl pyrophosphate)が合成されます。
ホスホリボシル二リン酸(PRPP)の構造式
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Phosphoribosyl_pyrophosphate.svg
この反応はリボースリン酸ピロホスホキナーゼ(ホスホリボシルピロリン酸シンテターゼ:PRPP合成酵素とも呼ばれます)という酵素によって行われ、この過程でリボース-5リン酸にATP由来の2つのリン酸(ピロリン酸)が付加されます。
リボースリン酸ピロホスホキナーゼによる反応
リボース-5リン酸+ATP→ホスホリボシル二リン酸(PRPP)+AMP
リボースリン酸ピロホスホキナーゼによる、PRPPを合成する反応はプリンヌクレオチドによってフィードバック抑制され、この段階はプリンヌクレオチドのde novo合成の調節段階となっています。
※キナーゼとはリン酸化酵素のことをいいます。ここでのピロホスホキナーゼとは、ATP由来の2つのリン酸(ピロリン酸)を付加する酵素のことをいいます。
ちなみに、このとき基質となるリボース5-リン酸は「ペントースリン酸経路」から供給されます。
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1)ペントースリン酸経路の役割
今回はペントースリン酸経路について学んで行きましょう。 1.ペントースリン酸経路とは ペントースリン酸経路は 解糖系のグルコース6-リン酸を出発物質として核酸などの構成要素となる「リボース5-リン酸」 ...
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PRPPから「IMP」の合成
プリンヌクレオチドのde novo合成経路では、ホスホリボシル二リン酸(PRPP)が10段階の反応を経て、IMP(イノシン酸:イノシン一リン酸とも呼ばれます)へと変換されます。
このPRPPからIMPを生じる10段階の反応過程では、ホスホリボシル二リン酸(PRPP)に3種類のアミノ酸(グルタミン、グリシン、アスパラギン酸)と10-ホルミルテトラヒドロ葉酸(ギ酸)およびCO2の炭素(C)や窒素(N)が供給されて、IMP(イノシン酸)へと変換されます。
プリン骨格の由来
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Nucleotide_synthesis.svg
IMP(イノシン酸)の塩基はヒポキサンチン(プリン塩基)となっています。つまりこの過程では、PRPPを土台としてヒポキサンチン(プリン塩基)が合成されていきます。
中でも第1段階の反応であるグルタミン-PRPPアミドトランスフェラーゼによる、PRPPにグルタミンを反応させて5-ホスホリボシルアミン(PRA)を生成する反応はIMPやAMP、GMPなどのプリンヌクレオチドによってフィードバック抑制され、この段階もプリンヌクレオチドのde novo合成の重要な調節段階となっています。
メモ
PRPPからIMPを合成するための材料・・・
・グルタミン
・グリシン
・アスパラギン酸
・10-ホルミルテトラヒドロ葉酸
・CO2
IMPから「AMP」への変換
IMP(イノシン酸)はアデニロコハク酸を経て、AMP(アデニル酸:アデノシン一リン酸とも呼ばれる)へと変換されます。
この過程ではまず、アデニロコハク酸シンテターゼによって、GTPのエネルギーを用いてIMPにアスパラギン酸が付加されて、アデニロコハク酸が生じます。
この反応はAMPによってフィードバック抑制されます。
その後、アデニロコハク酸リアーゼによってアデニロコハク酸がAMP(アデニル酸)に変換されます。
ここで覚えておきたいのは、IMPがAMPへと変換されるにはGTPが十分量存在することが必要であるということです。
この仕組みによって、AMPとGMPのバランスが保たれています。
IMPから「GMP」への変換
一方、IMP(イノシン酸)はキサントシン一リン酸(XMP)を経て、GMP(グアニル酸:グアノシン一リン酸とも呼ばれる)へと変換されます。
この過程ではまず、IMPデヒドロゲナーゼによって、IMPが酸化されてキサントシン一リン酸(XMP)が生じます。
この反応はGMPによってフィードバック抑制されます。
その後、GMPシンテターゼが、ATPのエネルギーを用いてキサンチル酸(XMP:キサントシン一リン酸とも呼ばれる)にグルタミン由来のアミノ基を付加して、GMP(グアニル酸)に変換されます。
ここで覚えておきたいのは、IMPがGMPへと変換されるにはATPが十分量存在することが必要であるということです。
この仕組みによって、AMPとGMPのバランスが保たれています。
プリンヌクレオチドのde novo合成経路のまとめ
以下にプリンヌクレオチドのde novo合成経路の流れをまとめておきます。
プリンヌクレオチドのde novo合成経路
リボース5-リン酸→ホスホリボシル二リン酸(PRPP)→IMP→AMP,GMP
AMP(GMP)からATP(GTP)の合成反応
最後にAMPやGMPをもとに、ATPやGTPが合成される過程を見ていきます。
AMPとGMPはそれぞれアデニル酸キナーゼとグアニル酸キナーゼの作用によって、ADPとGDPに変換されたのち、ヌクレオシド二リン酸キナーゼの作用によってATPとGTPに変換されます。
プリンヌクレオチドのde novo合成についてはこれで以上です。
次は「2)プリンヌクレオチドの再合成(サルベージ経路)」について学んでいきましょう。
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2)プリンヌクレオチドの再合成(サルベージ経路)
ここでは、プリンヌクレオチドのサルベージ経路について確認していきましょう。 ヌクレオチドのde novo合成とサルベージ経路 「1)プリンヌクレオチドのde novo合成」で解説しているように、 ヌク ...
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