分子生物学

1) ヒストン八量体とヌクレオソーム(コアヒストンを中心に)

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ヒストン8量体とヌクレオソーム

 ヒトなどの真核生物がもつ染色体は、部分的に弛緩した状態と凝集した状態の両方をもっています。「クロマチン繊維が弛緩すると遺伝子発現が促進され、逆にクロマチン繊維が凝集していると遺伝子発現は抑制される」ということがよく知られています。ここでは、この意味を理解するために染色体の構造変化の仕組みについて学んでいきましょう。

1.ヌクレオソームとは

 まずは、染色体がどのような構造を保持しているかを理解していきます。DNAは「ヒストン8量体と呼ばれる塩基性タンパク質に約2回ほど巻きついた形で「ヌクレオソーム」と呼ばれる基本構造をつくっています。イメージとしては、非常に長いDNAの鎖を複数のビーズに巻きつけることによって染色体を核の中に収納しているといった感じです。また、このヌクレオソームとヌクレオソームの間のDNA領域(ヌクレオソームを形成していないDNA領域)は、ヌクレオソーム間をつなぐという意味から「リンカーDNA」といいます。

染色体はこのようなヌクレオソームがいくつも数珠状につながった「クロマチン構造」をとっていますが、このクロマチン構造は、高度に凝集された状態では「30nmのクロマチン繊維」を形成しています。このようなクロマチン構造はDNAを核内に効率よく収納する役割だけでなく、「クロマチン繊維の弛緩と凝集を巧みに調節することによって、遺伝子発現の「on」と「off」を調節することができる」という面で非常に合理的な構造となっています。これは遺伝子発現、特に「転写調節」の原理の根幹となっています。

2.ヒストン8量体とは

 ヒストンには大きく分けて5種類のヒストン「H1、H2A、H2B、H3、H4」があります。このうちH1を除く「H2A、H2B、H3、H4」の4つのヒストンは「コアヒストン」と呼ばれ、ヌクレオソームではこれらの4つのコアヒストンがそれぞれ2個ずつ集まった8量体(これを「ヒストン8量体」といいます)にDNAが巻き付いた構造をしています。

一方で、H1は「リンカーヒストン」と呼ばれ、ヌクレオソームとリンカーDNAの両方に結合することによって、クロマチン構造がより高度に凝集されることを助けています。

※ヒストンは、リジンアルギニンなどの塩基性アミノ酸を多く含む塩基性タンパク質です。ヒストンのもつ正電荷は、全体として負の電荷をもつDNAと静電的な相互作用によって結合することができます。

3.ヒストンコード仮説とヒストン修飾

①ヒストンテールとヒストン修飾

 ヒストン8量体を構成する「H2A、H2B、H3、H4」の4つのコアヒストンのN末端には、「ヒストンテール」(テールは尻尾という意味)と呼ばれる多数の正電荷のアミノ酸(リジンとアルギニン)を含む領域があります。ヒストンテールには、アセチル化メチル化などの化学修飾が付加されることが知られていて、これがクロマチン繊維の弛緩と凝集を巧みに調節する仕組みの一つとなっています。

※ちなみにこのように翻訳されたタンパク質(ここではヒストンタンパク質)が、アセチル化やメチル化などの化学修飾を受けることを「翻訳後修飾」といいます。

この仕組みを理解する上で重要なのは、ヒストンとDNAの結合の仕組みです。先にも述べたように、ヒストンは正(プラスの)電荷をもつ塩基性タンパク質なので、リン酸基による負(マイナスの)電荷をもつDNAと強固に結合し、凝集したクロマチン構造をつくります。一方で、この凝集したクロマチン構造は、ヒストンの化学修飾(翻訳後修飾)によって弛緩された状態に変化することが知られています。

②ヒストンコード仮説

 一般的に、「ヒストンのアセチル化は遺伝子発現を促進する」ということが知られていますが、これはヒストンテールを構成する塩基性アミノ酸(正電荷をもつリジンアルギニン)にアセチル基(-COCH3)が付加されることによって、ヒストンのもつ正電荷が減少するためです。ヒストンのもつ正電荷が減少すると、ヒストンとDNAとの結合が弱くなり、凝集したクロマチン構造が弛緩しますので、転写因子やRNAポリメラーゼなどの遺伝子発現の調節因子がプロモーター領域に結合しやすくなります。

※ヒストンのメチル化は遺伝子発現を促進するだけでなく遺伝子発現の抑制もします。

ヒストンコード仮説とは、このように「ヒストンテールの化学修飾の組み合わせが、遺伝子発現調節のための暗号(コード)として機能している」という考え方のことをいいます。

 例えば、ヒトの臓器を形成する細胞は、それぞれ脂肪細胞であれ肝細胞であれ同じDNAを保持していて、その形質が異なるのはそれぞれ発現している遺伝子の組み合わせなどが異なると説明されますが、この遺伝子発現調節の仕組みの一つがヒストンの化学修飾であるというイメージを持たれると良いかもしれません。

※ちなみにヒストンの化学修飾以外の遺伝子発現調節の仕組みには、DNAの化学修飾(DNAメチル化)などがあります。

ヒストン八量体とヌクレオソームについてはこれで以上です。
次は「1)DNA複製の仕組みとテロメア」について学んでいきましょう。

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