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1)ビタミンの種類と性質

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1.ビタミンとは

 ビタミンとは、生命活動に必須な微量栄養素のうち、体内で作ることができない(あるいは、必要量を体内で作ることができない)ため、体外から摂取する必要のある有機化合物のことをいいます。

 ビタミンは、5大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)のうちの一つになりますが、3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)とは違い、エネルギー源や生体の構成成分になることはありませんが、生体にとって必須の生理作用をもった栄養素になります。

ミネラル(無機質)もビタミンと同様、生体にとって必須の生理作用をもった栄養素ですが、有機化合物ではなく元素(カルシウム、マグネシウム、鉄など)であり、生体の構成成分になる点でビタミンとは異なります。

○ビタミンの由来

 ビタミン(vitamin)という名前は、ビタミンB1の欠乏症である脚気を治す「必須アミン(vital amine)」として、ビタミンB1が発見されたことに由来しています。その後、多くのビタミンはアミンではないことがわかったのですが、その後もビタミンという名前で呼ばれ続けています。

○水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン

 ビタミンには、水溶性ビタミン脂溶性ビタミンの2種類があります。水溶性ビタミンには、ビタミンCB群(B1、 B2、 B6、 B12、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸など)があり、これらは水溶性であることから、熱に弱く、過剰に摂取した場合には尿中に排出されるといった性質があります。

 一方、脂溶性ビタミンには、ビタミンA、E、D、Kがあり、脂質と一緒に摂取することで体内に吸収されやすくなりますが、体内(肝臓や脂肪組織)に蓄積されるため、過剰摂取では生体に悪影響を及ぼしてしまうといった特徴があります。

 以下に、13種類のビタミンに関する生理作用や特徴を詳しく解説していきます。

2.脂溶性ビタミン

○ビタミンA

 ビタミンAの生理作用には、主に視覚作用と細胞の分化や成長、皮膚粘膜の形成作用の2つがあります。ビタミンAは肝臓でエステル体として貯蔵されていますが、エステルの加水分解が行われると、血中のレチノール結合タンパク質と結合して全身の細胞に供給されるようになります。

 ビタミンAとは、下図のような炭素数20個をもつアルコールとして発見された、レチノールと呼ばれる物質のことをいいます。レチノールは生体内で酸化されることで、生理活性をもった物質に変換されます。すなわち、レチノールは、第1級アルコールですので、生体で酸化されて「レチノール(アルコール)→レチナール(アルデヒド)→レチノイン酸(カルボン酸)」と変化します。このうち、第一の酸化段階であるアルデヒド(レチナール)は視覚作用、第二の酸化段階であるカルボン酸(レチノイン酸)は細胞の分化や成長、皮膚粘膜の形成作用に関わっています。

 ビタミンAが欠乏すると、夜盲症を発症し、暗い場所での視力の低下、あるいは、暗さに目が慣れるのが遅くなることが知られています。これは、網膜内の光を認知する視物質であるロドプシンが、レチナールを補酵素として使用しているためです。一方、脂溶性ビタミンであるビタミンAは、細胞膜を通過すると、核内受容体を介して細胞の分化や成長、皮膚粘膜の形成などに関するさまざまな遺伝子発現の調節をするホルモン様のシグナル伝達物質としても作用することが知られています。

※広義のビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸およびこれらの3-デヒドロ体やその誘導体の総称(レチノイドと呼ばれています)のことをいいます。

※ビタミンAは、核内受容体を介した遺伝子発現の調節を行い、また、体内で蓄積されてしまうことからも、過剰摂取には注意が必要な栄養素となっています。特に、妊婦や妊娠の可能性のある女性は注意が必要とされています。

 ビタミンAは、食事由来のβカロテンなどのカロテノイド類からも体内で生成することができますが、これらの物質はビタミンAとしての効力をもつことからプロビタミンAと呼ばれています。下図のように、βカロテンの構造は炭素数40個からなり、酵素で酸化的に切断されることによってビタミンA(レチナール)を生じます。

○ビタミンD

 ビタミンDの生理作用には、主にカルシウムやリンの吸収促進作用と細胞の分化や成長、免疫調節作用の2つがあります。ビタミンDは、紫外線による皮膚での生合成および食物からの摂取により血液中に供給され、肝臓と腎臓での修飾を経て、25‐(OH)ビタミンD1,25‐(OH)2ビタミンD活性型ビタミンDと呼ばれます)に変化します。

 ビタミンDにはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)の2種類がありますが、ヒトの生体内で大部分を占めている生理活性物質は、ビタミンD3由来の1,25‐(OH)2ビタミンD3です。

 活性型ビタミンDである1,25‐(OH)2ビタミンD3は、脂溶性ビタミンであり、細胞膜を通過すると、核内受容体を介してカルシウムやリンの吸収促進と細胞の分化や成長、免疫調節などに関するさまざまな遺伝子発現の調節をするホルモン様のシグナル伝達物質としても作用することが知られています。

※活性型ビタミンDの血中濃度は、カルシウムの血中濃度と密接に関連しています。血中のカルシウム濃度が減少すると、副甲状腺からのパラトルモン(血中カルシウム濃度を上昇させるホルモン)が放出され、活性型ビタミンDである1,25‐(OH)2ビタミンD3の血中濃度が上昇することで、腸からのカルシウムの吸収促進腎臓でのカルシウムの再吸収の促進、および破骨細胞による骨吸収の促進などが行われます。

○ビタミンE

 ビタミンEの生理作用には、主に抗酸化作用、生体膜の安定化があります。ビタミンEには8種類の同族体(α-,β-,γ-,δ-トコフェロールとα-,β-,γ-,δ-トコトリエノール)がありますが、ヒトの生体内で生理活性が最も高いα-トコフェロールが主要なビタミンEとして知られています。

 ビタミンEの抗酸化作用は、分子内のフェノール性ヒドロキシ基が酸化されやすいことによります。生体膜で生じる脂質ペルオキシラジカルなどのフリーラジカルは生体膜を障害する原因となりますが、ビタミンEが存在すると、ビタミンE自身が(ラジカルによる酸化の身代わりとなって)酸化される(ビタミンEラジカルに変化する)ことで、生体膜リン脂質を構成する不飽和脂肪酸の酸化を防ぎ、生体膜の安定化に重要な役割を果たします。

※ビタミンEは、多くの食物に含まれており生体内の貯蔵量も多いことから、欠乏症になることはほとんどないとされています。

※ビタミンEには、リポタンパク質であるLDLの生体膜の酸化を防ぎ、マクロファージの飛沫化によるプラーク形成を防ぐことによる動脈硬化の抑制といった役割もあります。一方で、ビタミンEには、直接細胞内シグナル伝達に関与する作用をもつといった抗酸化作用以外の新たなビタミンEの生理作用があることも知られてきています。

○ビタミンK

 ビタミンKの生理作用は、主に血液凝固作用骨作用の2つがあります。天然に存在するビタミンKには、ビタミンK1(フィロキノン:植物の葉緑体に存在)とビタミンK2(メナキノン:腸内細菌などの細菌が生成)の2種類がありますが、ビタミンK2は腸内細菌によって産生されるため、欠乏症になることはあまりないといわれています。

 ビタミンKは、血液凝固に関するタンパク質の活性化に必要な栄養素ですが、その生理的な役割は、ビタミンKが哺乳類のカルボキシラーゼの補酵素として用いられているところにあります。ビタミンK依存性のカルボキシラーゼは、特定のグルタミン酸残基をγ-カルボキシグルタミン酸残基に変換しますが、このときに、ビタミンKが還元剤としてカルボキシ化に関与しています。

※血液凝固因子は、γ-カルボキシグルタミン酸残基に変換されるとカルシウムイオンが結合して活性化され、トロンビンを生成し、最終的にはフィブリノーゲンがフィブリンに変換され、血液凝固が起こります。

 また、ビタミンKには、骨に存在するオステオカルシンと呼ばれるタンパク質を石灰化し、骨形成を促進する骨作用が新しく知られてきています。そのため、ビタミンKの摂取不足は、骨粗鬆症の危険因子であることがいわれています。

3.水溶性ビタミン

○ビタミンC

 ビタミンCの生理的作用には、主にコラーゲンの生成抗酸化作用の2つがあります。ビタミンCは、アスコルビン酸とも呼ばれますが、一般に抗酸化作用をもつアスコルビン酸は、還元型のアスコルビン酸のことをいいます。アスコルビン酸は、抗酸化作用によって水溶性ラジカルなどを捕捉すると、酸化型のデヒドロアスコルビン酸に変換されます。このデヒドロアスコルビン酸は再び還元型のアスコルビン酸に再生されることで、抗酸化作用を継続的に発揮することができます。

※ビタミンCの抗酸化作用の重要な役割として、ビタミンEラジカルの再生活性酸素種(ROS)の除去などがあります。

※活性酸素に関しては「3)ミトコンドリアでの活性酸素の発生と除去」で詳しく解説しています。

 ビタミンCが欠乏すると、壊血病を発症し、血管や皮膚の張りがなくなることで全身から出血がしやすくなります。これは、ヒトの総タンパク質の約30%を占めるコラーゲンの合成にビタミンCが必須であるからです。コラーゲンが正常に架橋構造を形成するためには、そのペプチド鎖中に含まれるプロリンが水酸化され、ヒドロキシプロリンがつくられる必要がありますが、そのとき、還元剤としてビタミンCが必須の物質となります。

※ビタミンCは、コラーゲン合成でヒドロキシプロリン残基の生成反応の補酵素としてだけでなく、遺伝子発現レベルでもコラーゲンの合成を促進していることも知られています。

※このほかにも、ビタミンCの還元力を利用して、チロシンの代謝シトクロムP-450(肝臓での薬物代謝に関わる)の発現促進、免疫機能の高める作用などが生体で行われていることが知られています。

○ビタミンB群

 ビタミンB群にはビタミンB1、 B2、 B6、 B12、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸 、葉酸などがありますが、そのほとんどすべてが、糖代謝や脂質代謝に関連する酵素の補酵素の前駆体として重要な栄養素となっています。

これでビタミンの種類と性質については以上です。
次は「2)補酵素」について学んでいきましょう。

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