生化学(実験手法)

1)特定のRNAの検出と遺伝子発現の解析

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1)特定のRNAの検出と遺伝子発現の解析

特定のRNAを検出し、その遺伝子発現を調べるために最もよく使用される方法としては、

リアルタイムPCR法」や「In situ ハイブリダイゼーション法

がよく用いられています。

リアルタイムPCR法については「3)リアルタイムPCRによる定量PCR」で紹介していますので、今回は「In situ ハイブリダイゼーション法(In situは「インサイチュー」と読みます)」について解説していきたいと思います。

In situ ハイブリダイゼーション法とは?

in situ ハイブリダイゼーションとは、組織や細胞において、特定のmRNAなどがどの部位どれくらい発現しているか発現分布)を調べることができる手法のことです。

in situとは、ラテン語で「本来の場所で」という意味で、生命科学の分野では「組織や細胞などの中で」ということを意味しています。

ハイブリダイゼーションとは、RNAなどの核酸が相補的に複合体を形成することを意味しています。

AZARASHI
この内容ではまだ分かりにくいかと思いますので、具体的な例をあげて解説していきます。

肝臓のある特定の部位において、ある遺伝子AのmRNA発現を調べたいとします。

肝臓全体での遺伝子AのmRNA発現を調べたい場合、まずは肝臓を破砕して、RNAを抽出し、逆転写-リアルタイムPCR法によって解析できます。

一方で、リアルタイムPCR法では、肝臓全体での遺伝子AのmRNA発現は調べられても、どの部位において遺伝子Aが発現しているかという位置情報は分かりません。

肝臓は肝細胞と血管の集合体である「肝小葉」から構成されていますが、この肝小葉においては、中心静脈付近の肝細胞と門脈付近の肝細胞では、遺伝子発現プロファイル(どのような遺伝子を発現しているか)が全く異なっていることが明らかになっています。

すなわち、中心静脈付近の肝細胞において、ある遺伝子AのmRNA発現を調べたい場合には、RNA を抽出せずに、in situ(本来の場所で、すなわち肝臓中で)でmRNAの発現を検出する必要があるのです。

In situ ハイブリダイゼーション法では、RNA を抽出せずにプローブとハイブリダイゼーションさせることによって、特定のmRNAなどがどの部位でどれくらい発現しているか発現分布)を調べることができます。

FISH(蛍光in situ ハイブリダイゼーション)とは?

蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization、FISH)とは、in situ ハイブリダイゼーション法の原理をもとに、蛍光物質で標識したプローブ(標的遺伝子と相補的な塩基配列をもつ合成オリゴヌクレオチドなど)を用い、検出したいmRNAとハイブリダイゼーションさせ、蛍光顕微鏡で検出する手法のことです。

In situ ハイブリダイゼーション法とその他の手法の比較

in situ ハイブリダイゼーションでは特定のDNAやmRNAなどの核酸の可視化を主に行いますが、特定のタンパク質の可視化には「免疫染色(目的のタンパク質に対する抗体を用いてタンパク質の発現や局在を可視化)」がよく用いられます。

 

また、組織を構成する細胞は一種類ではなく、さまざまな細胞集団から構成されていますので、どのような遺伝子が発現しているかを単一細胞レベルで調べたい場合には、「シングルセル解析(シングルセルRNA-seq解析)」がよく用いられます。

シングルセルRNA-seq解析(-seqはシークエンスの略です)では、各細胞に特徴的な遺伝子発現プロファイルをもとに細胞を分類て、次世代シークエンサーで検出することで、単一細胞に含まれる全てのmRNAの発現を解析できます。

黒アザラシ
実験の目的に応じてさまざまな実験手法が使用できるのですね。

特定のRNAの検出と遺伝子発現の解析についてはこれで以上です。
次は「2)遺伝子発現の網羅的解析(マイクロアレイ法)」について学んでいきましょう。

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2)遺伝子発現の網羅的解析(マイクロアレイ法)

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【参考】

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