分子生物学

5)遺伝子の転写開始点、開始コドン、非翻訳領域(UTR)などの位置関係

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転写開始点、開始コドン、非翻訳領域(UTR)の位置関係

ここでは、遺伝子のどの部位がmRNAに転写され、どの部位がタンパク質へと翻訳されるかを確認していきましょう。

遺伝子の構成について

まずは基本的な用語の意味を理解していきましょう。

主に覚えておくべき用語には、

転写開始点
5'非翻訳領域(5'UTR)
開始コドン
コーディング領域(CDS)
オープンリーディングフレーム(ORF)
エキソン
イントロン
3'非翻訳領域(3'UTR)
終始コドン

があります。

これらがどのような位置関係になっているか、用語の整理をしていきましょう。

その前に、基本的には遺伝子の構成が、

遺伝子・・・5'非翻訳領域(5'UTR)-オープンリーディングフレーム(ORF)-3'非翻訳領域(3'UTR)

となっていることは覚えておきましょう。

それでは、これらの部位の意味や使い分けを確認していきましょう。

①転写開始点とは

転写開始点は、mRNAの転写が開始される部位のことをいいます。転写開始点はmRNAの1番目の塩基に相当する位置のことなので、よくこの部位を+1と表記します。

そして、その部位から転写される方向を遺伝子の「下流(+2,+3,+4...)」といい、逆にプロモーターの存在する方向を遺伝子の「上流(−1,−2,−3...)」といいます。

※遺伝子の位置を表す場合に、0はないので注意しましょう。

②5'非翻訳領域(5'UTR)とは

5'非翻訳領域5'UTR(5 prime untranslated region)とも呼ばれ、転写開始点から開始コドンの手前までの領域のことをいいます。その名の通り、この部位を含めた領域がmRNAへと転写されますが、翻訳はされない領域になります。

それでは、何のためにこの5'UTRという領域が存在しているかというと、mRNAをタンパク質へと翻訳するときの調節領域として重要な配列になっています。

原核生物の5'UTRには、シャイン-ダルガルノ配列SD配列)と呼ばれるリボソームの結合部位が存在します。一方、真核生物の場合、5'キャップが主要なリボソームの結合部位になりますが、真核生物の5'UTRには、コザック配列と呼ばれる翻訳開始に必要である配列の一部が含まれます。

メモ

コザック配列とは真核生物の翻訳開始に必要である配列(不一致の場合も多い)のことです。コザック配列のコンセンサス配列は、(gcc)gccRccAUGGで表され、特に開始コドン(AUG)の3塩基上流のR(プリン塩基:A or G)と開始コドンの次のGが重要な役割を果たします。

メモ

※コドンとは、アミノ酸や終止シグナルを表す3つの連続したヌクレオチドの配列のことをいいます。

③開始コドンとは

開始コドンは、mRNAがタンパク質へと翻訳されるときの翻訳開始を指定するコドンのことをいいます。この開始コドンは、ほとんどの場合はAUGメチオニンを指定するコドン)なので、覚えておきましょう。

④コーディング領域(CDS)とは

コーディング領域は、CDS(cording sequence)とも呼ばれ、アミノ酸に翻訳される領域のことをいいます。

⑤オープンリーディングフレーム(ORF)とは

オープンリーディングフレームは、ORF(open reading frame)とも呼ばれ、開始コドンで始まり終止コドンで終わるDNA領域のことをいいます。

エキソンとイントロンとは

イントロンとは、スプライシングで取り除かれる部分に対応するDNA領域のことです。

エキソンとは、イントロン以外の成熟mRNAに残るDNA領域のことです。

mRNAはスプライシングの過程を経て、イントロン部分が除去され、エキソン部分が残ります。

エキソンには、タンパク質に翻訳されるコーディング領域CDS)と、タンパク質に翻訳されない非翻訳領域UTR)の2種類があります。

成熟mRNAにおいて、非翻訳領域(UTR) はコーディング領域(CDS)の両端に存在し、開始コドンより上流を 5' UTR、終止コドンより下流を 3' UTR と呼びます。

※真核生物のスプライシングの仕組みについては「1)RNAのプロセシング(転写後調節)」で詳しく解説していますので、よければ見てみてください。

⑧3'非翻訳領域(3'UTR)とは

3'非翻訳領域3'UTR(3 prime untranslated region)とも呼ばれ、終始コドンの後ろにある翻訳されない領域(転写はされます)のことをいいます。

3'UTRにはポリアデニル化シグナルAAUAAA)の配列が存在するため、mRNA の3' 末端への「ポリAテール」の付加に必要な配列になります。

また、3'UTRはmiRNAマイクロRNA、約22塩基の短いRNA分子)による調節部位となっていることが多く、mRNAの翻訳抑制あるいはmRNA分解に関与している領域としても重要です。

※ポリAテールの付加については「1)RNAのプロセシング(転写後調節)」で詳しく解説していますので、よければ見てみてください。

⑨終止コドンとは

終止コドンは、mRNAがタンパク質へと翻訳されるときの翻訳終結を指定するコドンのことをいいます。この終止コドンは、ほとんどの場合はUAA、UAG、UGAの3種類です。

その他

遺伝子上流にはプロモーターと呼ばれる遺伝子発現の制御配列があります。

プロモーターには、さまざまな転写因子などが結合することによって遺伝子発現を促進あるいは抑制しています。

※プロモーターに関しては「1)原核生物の転写調節の仕組み」と「3)真核生物の転写調節の仕組み」で詳しく解説していますので、よければ見てみてください。

ちなみに、遺伝子とプロモーターのように2つの部位が同じDNA上に存在するという位置関係を「シス」の関係といいます。

シスに対応する言葉に「トランス」という言葉があります。

2つの部位が別々のDNA上に存在するという位置関係をトランス」の関係といいます。

よく、別のDNA領域から発現された転写因子などが、ある遺伝子の発現を制御するといった場合には、このことを「トランスに働く」ということがあります。

遺伝子の転写開始点、開始コドン、非翻訳領域(UTR)などの位置関係についてはこれで以上です。
次は「1) ヒストン八量体とヌクレオソーム(コアヒストンを中心に)」について学んでいきましょう。

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