分子生物学

2)翻訳の仕組み②(開始、伸長、終結)

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翻訳の仕組み②(開始、伸長、終結)

翻訳はタンパク質合成の仕組みになっています。ここでは翻訳の仕組み②に関して、翻訳の開始反応、伸長反応、終結反応の3つの段階を確認していきましょう。

1.翻訳開始

原核生物における翻訳開始

原核生物のmRNAには、複数のオープンリーディングフレーム(ORF:open reading frame)と呼ばれる、遺伝子としてタンパク質をコードしている読み枠が存在します。

そのため、原核生物の場合、一本のmRNAから同時に複数のタンパク質を翻訳できるという特徴があります。これを特にポリシストロニックといいます。

原核生物の翻訳開始の段階では、まず、70Sリボソーム(50Sの大サブユニットと30Sの小サブユニットから構成される)の小サブユニットに複数の翻訳開始因子(IF1とIF3:initiation factor)が結合した複合体が、mRNAの5'非翻訳領域(5'UTRに存在するリボソーム結合部位シャイン-ダルガルノ配列:SD配列と呼ばれます)に結合します。

原核生物の翻訳開始の流れ

さらに同時に、翻訳開始因子(IF2:GTPと結合している)を結合した開始tRNAが、小サブユニット翻訳開始因子の複合体に結合し、これらの複合体にさらに大サブユニットが結合することで、70S開始複合体が形成され、翻訳開始のための準備が整います。

30Sリボソーム内の16S rRNAとシャイン-ダルガルノ配列(SD配列)
原核生物のリボソームの小サブユニット内には16S rRNA(SD配列と相補的な部位をもつ)と呼ばれるrRNAが存在していて、これがリボソームの小サブユニットが、mRNA上のシャイン-ダルガルノ配列SD配列)に結合することができる仕組みになっています。

 

※ORF、5’UTRについては「5)遺伝子の転写開始点、開始コドン、非翻訳領域(UTR)などの位置関係」で詳しく解説していますので、興味があれば是非見てみてください。

真核生物における翻訳開始

真核生物の一本のmRNAには、1つのオープンリーディングフレーム(ORF:open reading frame)が存在します。

真核生物の翻訳開始の段階では、まず、8oSリボソーム(60Sの大サブユニットと40Sの小サブユニットから構成される)の小サブユニット翻訳開始因子(eIF3:eukaryotic initiation factor)が結合し、別の翻訳開始因子(eIF2:GTPと結合している)を結合した開始tRNA小サブユニットに結合することで複合体を形成します。

真核生物の翻訳開始の流れそして、複数の翻訳開始因子(eIF4A、eIF4E、eIF4GからなるeIF4F複合体)が結合したmRNAの5'キャップに、小サブユニットの複合体が結合します。その後、これらの複合体は5'キャップから下流に移動していき、開始tRNAが最初の開始コドン(AUG)を見つけると、そこで大サブユニットと結合することで、80S開始複合体が形成され、翻訳開始のための準備が整います。

このような仕組みで翻訳開始複合体が形成されますので、真核生物の場合では、5’キャップが主要なリボソームの結合部位になるのですが、真核生物の5’UTR(開始コドンの周辺)には、コザック配列と呼ばれる翻訳開始に必要である配列の一部が含まれていて、コザック配列があることで翻訳効率が向上しています。

コザック配列とは
コザック配列とは、真核生物の翻訳開始に必要である配列(不一致の場合も多い)のことです。コザック配列のコンセンサス配列は、(gcc)gccRccAUGGで表され、特に開始コドン(AUG)の3塩基上流のR(プリン塩基:A or G)と開始コドンの次のGが重要な役割を果たします。

 

2.翻訳の伸長

 翻訳の伸長過程は、mRNAに結合した80Sリボソーム内で、tRNAがmRNAのコドンに対応したアミノ酸を次々と運んでくることで、tRNA上にアミノ酸が連結されていくという流れで進んでいきます。

tRNAのリボソームへの結合部位は3箇所ありますが、これらは右から順にA部位(アミノアシルtRNA結合部位)、P部位(ペプチジルtRNA結合部位)、E部位(ペプチジル基を転移した後のtRNA結合部位)と呼ばれています。

リボソームがどのようにして翻訳を行うかリボソーム内のP部位には、その名の通りポリペプチド鎖を結合したtRNAが結合し、A部位には新たにアミノ酸を運んできたアミノアシルtRNA(tRNAにアミノ酸が結合したもの)が結合します。

最初の段階では、まず①アミノアシルtRNAがリボソーム内のA部位に結合します。

次に、②P部位に結合していたtRNAのもつポリペプチド鎖が、ペプチジル基転移酵素によって、A部位に結合したアミノアシルtRNAのアミノ酸へと移されます(ペプチド結合により連結されます)。

その後、③リボソームが1コドン分移動することによって、アミノ酸が一つ分長くなったポリペプチド鎖をもつtRNAがP部位へと移動し、もともとポリペプチド鎖をもっていたtRNAがE部位へと移動することでリボソームから解離していきます。

そして、再び「①→②→③」という流れで、伸長反応が終止コドンの位置まで繰り返されます。

3.翻訳の終結

翻訳の終結部位は、終止コドン(UGA、UAG、UAA)になります。

この終止コドンには対応したtRNAが存在しませんので、代わりにtRNAと構造が類似した終結因子がA部位に結合してきます。

そのため、終止コドンがA部位にきた時点で、アミノ酸へのポリペプチド鎖の転移が行われなくなります。

その結果、リボソームはmRNAから解離して翻訳が終結します。

訳の仕組み②(開始、伸長、終結)についてはこれで以上です。
次は「」について学んでいきましょう。

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