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1)PCRの原理と概要

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 PCR法は、これまで多大な時間と労力を要した遺伝子クローニングにとって代わる手法となり、RT-PCRやリアルタイムPCR、DNAシークエンシングなどのさまざまな手法として応用されています。今回は、そのようなPCR法の原理と概要について解説しています。

PCRとは

 PCRとは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、DNA配列上の特定の領域(目的のDNA領域)を1対のプライマー耐熱性DNAポリメラーゼを用いて増幅させる方法のことです。

 プライマーの設計は自由に行うことができますので、PCR法を用いることで、微量のDNAから特定のDNA領域のみを迅速かつ簡便に増幅させることができます。

 PCR法では「①熱変性→②アニーリング→③伸長反応」という3段階の温度変化による反応を繰り返すことによって、理論的にはDNA量を指数関数的(n:2倍、4倍、8倍…)に増幅させることができます。このため、約20サイクル後には理論的に100万倍にまで目的DNAを増幅させることができます。また、PCR法での温度変化は専用の装置(サーマルサイクラー)を用いて行いますので、操作自体は簡単です。

PCRに必要な物質

 PCRは、反応チューブの中に、①鋳型DNA、②プライマー、③耐熱性DNAポリメラーゼ、④dNTP、⑤Mg2+を含む緩衝液が含まれている必要があります。以下にそれぞれの用語を解説しておきます。

鋳型DNA

 増幅させたい配列を含むDNA断片を用います。 

プライマー

 鋳型 DNA に相補的な塩基配列を持つ短い一本鎖 DNAやRNAのことで、増幅したいDNA領域を挟むように2か所に設計します。生体内のプライマーはRNAですが、PCR法ではDNAのプライマーを用います。通常のプライマー長は、20塩基程度で設計することが多いです。

耐熱性DNAポリメラーゼ

 PCR法では、反応溶液の高温加熱と冷却を繰り返すため、多くの生物がもつDNAポリメラーゼでは失活してしまい、PCRの反応を連続的に行うことはできません。そこで、100℃近くまでを生育至適温度とする好熱菌がもつ耐熱性DNAポリメラーゼがPCRに用いられています。

dNTP

 DNAを合成するために必要なdATP, dGTP, dCTP, dTTPの4種類の基質のことです。

Mg2+

 DNA ポリメラーゼが働くために必要です。

PCRの原理

 PCR法では、以下の3つの段階を繰り返すことによりDNAを増幅します。下図に示したように、まず、92〜95°CでDNAを①熱変性させ一本鎖とし、次に、任意の温度でプライマーを②アニーリングさせます。最後に、72°CでDNAの③伸長反応を行います。PCRでは、これを1サイクルとして、サイクルが1回行われるごとにDNA量を2倍に増幅させます。

PCR法の長所と短所

それでは、従来の遺伝子クローニングと比較しながら、PCR法の長所と短所について解説していきます。

PCR法の長所

PCR法の長所としては

①クローニングと比べて、簡便かつ迅速に特定のDNA配列を増幅させることができること。

②一度に多量のサンプルをPCRに用いることができること。

ごく少量の鋳型DNAでPCRを行うことができること。

④実験の再現性が高いこと。

などが挙げられます。

PCR法の短所

一方、PCR法の短所としては

プライマーが絶対的に必要であり、一般的には1対のプライマーで挟まれた領域のDNA以外を増幅させることはできないこと。
(PCRでは、プライマーを設計するためのDNA配列が既知であることが大前提となります。)

②PCRに用いる耐熱性DNAポリメラーゼは、通常のDNAポリメラーゼとは違い、校正機能(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性)がないこと。そのため、PCRサイクル数や増幅させるDNAの長さが長くなるにつれて塩基の取り込みミス(PCRエラー)が増えて、目的DNA配列とは塩基配列の異なる産物が増幅してしまうことがあります。

→PCR後の4)アガロースゲル電気泳動によって、目的DNA配列が増幅されたかどうかを確認できます。

③PCRでは初期DNA量に関して定量性はないこと。(数十回のPCRサイクルを行なった後にDNAが十分に増幅されたかどうかは確認できますが、初期のDNA濃度に数倍の差があったとしても、数十回のPCRサイクル後にはプラトー現象によって増幅産物の量に差が見られなくなります。)

初期DNA量を定量したい場合、3)リアルタイムPCRによる定量PCRで定量することができます。(リアルタイムPCRを用いると遺伝子発現解析などを行うことができます。)

④コンタミしたDNAに1対のプライマーが結合できる領域があると、そのDNAまで増幅してしまうことがあること。

などが挙げられます。

PCRの原理と概要についてはこれで以上です。
次は「2)RT-PCRによるRNAの検出」について学んで行きましょう。

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