HE染色とは?HE染色の原理と流れについて
HE染色とは
HE染色(Hematoxylin and Eosin staining)は、病理学や組織学において最も一般的に使用される染色法です。
この染色法は、組織切片を観察しやすくするために行われ、特に細胞や組織の構造を明確に可視化することができます。
HE染色は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)とエオジン(Eosin)の2つの染料を使用します。
HE染色像⇩
出典:厚生労働省ホームページ 第59回臨床検査技師国家試験の問題および正答について 午後問題別冊(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp130422-05d.pdf)
HE染色の原理
- ヘマトキシリン染色
- ヘマトキシリンは塩基性色素であり、核酸や核タンパク質などの酸性構造(例:DNAやRNA)に親和性があります。
- ヘマトキシリン自体は無色ですが、金属塩と結合すると青紫色を発色します。
- 結果として、細胞核やリボソームなどの酸性成分が青紫色に染まります。
- エオジン染色
- エオジンは酸性色素であり、細胞質や細胞外マトリックスなどの塩基性構造に親和性があります。
- エオジンはピンクから赤色を呈し、細胞質や結合組織を染色します。
パラフィン包埋とは?
パラフィン包埋(Paraffin Embedding)とは、組織標本をパラフィン(固体のワックス状物質)に浸透させて固めるプロセスのことです。この方法は以下のような目的で行われます:
- 組織の保存:長期間保存しても形態を保つ。
- 顕微鏡観察用の薄切標本作成:組織を非常に薄い切片(3~10 µm程度)にするために硬さを与える。
- 染色の準備:H&E染色や免疫染色などの処理に適応。
パラフィン包埋の流れ
それでは、パラフィン包埋の流れを確認していきましょう。
ステップ1:固定
組織の形態を維持するため、「ホルマリン溶液(10%中性緩衝ホルマリン)など」で固定します。
ステップ2:脱水
組織内の水分を除去(脱水)し、パラフィンと置き換えやすくします。
- 使用する液体:エタノール(70%→80%→95%→100%など濃度を徐々に上げます)。
ステップ3:脱アルコール
キシレンを用いてエタノールを除去(脱アルコール)し(通常3回)、パラフィンが浸透しやすい状態にします。
- 使用する液体:キシレン
ステップ4:パラフィン浸透
脱水・脱アルコール処理を行った組織を「液体状のパラフィン(60℃程度)」に浸して組織内に浸透させます(=パラフィン浸透)。
- プロセス:通常2~3回、数時間かけて行います。
Tips:パラフィンの温度管理:温度が高すぎると組織が損傷するため、60℃程度を保とう!。
ステップ5:パラフィン包埋
組織を液体パラフィンで固めます(=パラフィン包埋)。
ステップ6:冷却
冷却し、パラフィンを固めます。これで「パラフィンブロック」が完成します。
ミクロトームでの切片作成(薄切)
準備したパラフィンブロックから、ミクロトームを使って薄切標本を作成できます。
HE染色の流れ
次に、HE染色の流れを確認していきましょう。
ステップ1:脱パラフィン
パラフィン包埋された組織切片を脱パラフィン処理します。通常、キシレンを用いて行われます。
- 使用する液体:キシレン(通常、3回)。
ステップ2:浸水
脱パラフィン後、切片をアルコール濃度を徐々に下げることで水性状態に戻します(=浸水)。
- 使用する液体:エタノール(100%→100%→100%→95%→80%など濃度を徐々に下げます)。
ステップ3: ヘマトキシリン染色
切片をヘマトキシリン溶液に浸し、細胞核を青紫色に染色します。
その後、Washを行い、過剰な染料を除去します。
ステップ4:エオジン染色
切片をエオジン溶液に浸し、細胞質や結合組織をピンク色に染色します。
ステップ5:脱水
再びアルコールを用いて切片を脱水します。
- 使用する液体:エタノール(80%→95%→100%→100%→100%など濃度を徐々に上げます)。
ステップ6:透徹
キシレンを用いて切片を透徹します。
- 使用する液体:キシレン(通常、3回)。
ステップ7:封入
封入剤を用いてカバーガラスを取り付け、観察可能な状態にします。
染色結果の観察
- 細胞核:青紫色
- 細胞質:ピンク色
- 結合組織:薄いピンクから赤色
HE染色は、組織や細胞構造の基本的な観察を可能にする重要な技術であり、病理診断や研究において欠かせない手法です。
HE染色とは?【HE染色の原理と流れ】についてについてはこれで以上です。
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