管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【19問目】生体エネルギー源と代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

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第39回管理栄養士国家試験(19問目)

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

第39回【19問目】生体エネルギー源と代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1) AMP は、分子内に高エネルギー結合をもつ。

(2) ホスホエノールピルビン酸は、高エネルギー化合物である。

(3) 電子伝達系は、ミトコンドリアの外膜にある。

(4) 電子伝達系の電子受容体は、窒素分子である。

(5) 脱共役たんぱく質(UCP)による熱産生は、ATP の合成を伴う。

厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf

第39回【19問目】生体エネルギー源と代謝に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(2) ホスホエノールピルビン酸は、高エネルギー化合物である。 です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【19問目】生体エネルギー源と代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️(1) AMP は、分子内に高エネルギー結合をもつ。

AMP(アデノシン一リン酸)は、リン酸が1つだけくっついた状態なので、エネルギーをたっぷり持っている「高エネルギー結合」はないんです。

ATP(アデノシン三リン酸)は、リン酸が3つくっついていて、そのうちの2つのリン酸結合が「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれます。
ADP(アデノシン二リン酸)も1つの高エネルギーリン酸結合を持っています。

これに対して、AMPはリン酸が1つしかなく、この結合は高エネルギー結合ではありませんエネルギーを貯蔵したり、放出したりするのに重要なのは、たくさんのリン酸が「高エネルギー」な形でつながっているかどうか、なんですね

⭕️(2) ホスホエノールピルビン酸は、高エネルギー化合物である。

ホスホエノールピルビン酸(PEP)は、すごいエネルギーを秘めている物質なんです。

ホスホエノールピルビン酸は、解糖系の代謝中間体として登場します。
この分子が持つリン酸結合は、加水分解されると非常に大きなエネルギーを放出し、ADPをATPに変換する反応(基質レベルのリン酸化)に利用されます。つまり、ホスホエノールピルビン酸は、ATPを合成するための「高エネルギー源」として働く、とても重要な化合物なんですよ。

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✖️(3) 電子伝達系は、ミトコンドリアの外膜にある。

電子伝達系は、ミトコンドリアの「内側の膜」にあります。外膜じゃなくて、もっと大事な仕事をするための場所なんですね。

電子伝達系は、呼吸鎖とも呼ばれ、細胞のエネルギー通貨であるATPを大量に合成するための主要なシステムです。
このシステムを構成する様々なタンパク質複合体は、ミトコンドリアの「内膜」に埋め込まれています
内膜には、クリステと呼ばれるひだがあり、表面積を増やすことで、より多くの電子伝達系複合体を配置できるように工夫されています。この構造が、効率的なATP合成を可能にしているんです。

✖️(4) 電子伝達系の電子受容体は、窒素分子である。

電子伝達系で最後に電子を受け取るのは、私たちの呼吸に欠かせない「酸素分子」です。窒素分子ではありません。
電子伝達系では、NADHやFADH2から運ばれてきた電子が、次々に電子伝達体(複合体)を移動していきます。
最終的に、これらの電子とプロトン(水素イオン)を受け取って水が生成されるのですが、この最後の電子の受け皿となるのが「酸素分子(O2)」です。酸素は最終電子受容体として非常に重要な役割を担っており、もし酸素が不足すると、電子伝達系がうまく機能せず、ATPの合成が滞ってしまいます。

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しろくまさん
しろくまさん
詳しくはこの記事を読んでね!

✖️(5) 脱共役たんぱく質(UCP)による熱産生は、ATP の合成を伴う。

脱共役たんぱく質(UCP)が働くときは、熱はたくさん出るけれど、ATPは作られません。熱を出すために、わざとATPを作らないようにしているんです

通常、電子伝達系では、電子の移動に伴ってプロトン(水素イオン)がミトコンドリア膜間腔に汲み出され、プロトン勾配が形成されますこのプロトン勾配のエネルギーを利用して、ATP合成酵素がATPを合成します。
しかし、脱共役たんぱく質(UCP)が存在すると、このプロトンがATP合成酵素を通らずにミトコンドリアマトリックスに戻ってしまいます。これにより、プロトン勾配のエネルギーがATP合成に使われず、その代わりに熱」として放散されます。これは、特に褐色脂肪組織などで見られる現象で、体温維持などに役立っています。ATPの合成を「脱共役」させることで熱を産生するため、ATP合成は伴わないのです。

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