管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【18問目】アミノ酸・たんぱく質・糖質に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

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第39回管理栄養士国家試験(18問目)

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

第39回【18問目】アミノ酸・たんぱく質・糖質に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1) アミノ酸は、両性化合物である。

(2) たんぱく質の二次構造は、ジスルフィド結合により形成される。

(3) たんぱく質は、プロテアソームにより折りたたまれる。

(4) フルクトースは、アルデヒド基をもつ。

(5) でんぷんは、β1,4 グリコシド結合をもつ。

厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf

第39回【18問目】アミノ酸・たんぱく質・糖質に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(1) アミノ酸は、両性化合物である。 です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

 

⭕️(1)アミノ酸は、両性化合物である。

アミノ酸は、アミノ基(塩基性)とカルボキシ基(酸性)の両方を持つため、酸にも塩基にもなる性質、つまり「両性化合物」です 。
体内の生理的pHでは、プラスとマイナスの両方の電荷を持つ「双性イオン」として存在します 。

アミノ酸が両性化合物であるのは、アミノ基がプロトンを受け取る塩基として、カルボキシ基がプロトンを放出する酸として機能するためです 。

プロトン(proton)とは

プロトン(proton)は、原子核を構成する正の電荷を持つ粒子です 。化学や生物学の文脈では、電子を失った水素原子、つまり水素イオン(H+)を指すこともあります。

生理的pHでは、アミノ基は-NH3+に、カルボキシ基は-COO-となり、分子内に正負の電荷を持つ「双性イオン」として存在します
この性質は、アミノ酸の多様な機能や、pH変化に対する緩衝作用に重要で、生体内のpH恒常性維持に貢献します 。

タンパク質の立体構造や機能も、アミノ酸のイオン化状態に影響されるため、管理栄養士として食品加工や調理におけるpH変化の影響を理解する上で基礎知識となります。

✖️(2)たんぱく質の二次構造は、ジスルフィド結合により形成される。

たんぱく質の二次構造(αヘリックスやβシート)は、ペプチド結合の主鎖間で形成される「水素結合」によって安定化されます 。
一方、「ジスルフィド結合(S-S結合)」は、システインの硫黄原子同士が結合する強い共有結合で、主にたんぱく質の「三次構造」や「四次構造」の安定化に重要です 。

タンパク質の二次構造は、ポリペプチド鎖が規則正しい立体構造をとるもので、αヘリックスやβシートが代表的です 。これらは、ペプチド結合のN-H基とC=O基の間で形成される「水素結合」によって安定化されます 。
対照的に、「ジスルフィド結合」はシステイン残基の硫黄原子間に形成される非常に強い「共有結合」で、主にタンパク質の「三次構造」や「四次構造」を安定させ、正しい立体構造を保つ役割を担います 。
この結合の違いが、タンパク質の多段階的な構造形成と機能発現に寄与しており、熱やpH変化によるタンパク質の変性を理解する上でも重要です。

✖️(3)たんぱく質は、プロテアソームにより折りたたまれる。

プロテアソームは、細胞内で不要になったり損傷したりしたたんぱく質を「分解」する巨大な酵素複合体です 。
たんぱく質を正しい形に「折りたたむ(フォールディング)」のは、主にシャペロンと呼ばれる別のたんぱく質の役割です。プロテアソームは分解のためにたんぱく質を「ほどく」働きをします 。

プロテアソームは、細胞内のタンパク質品質管理において、不要・損傷タンパク質を分解し、アミノ酸へと分解する重要な役割を担います 。分解プロセスでは、タンパク質は折りたたみが解かれ、小さなペプチド断片になります 。
一方、タンパク質の「フォールディング」は、シャペロンと呼ばれるタンパク質が助け、新しく合成されたタンパク質が正しい立体構造に折りたたまれるのを促進します。これらは、タンパク質の「生合成後の処理」として、細胞の恒常性維持に不可欠な、異なる補完的なプロセスです。

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✖️(4)フルクトースは、アルデヒド基をもつ。

ポイント

糖類は、アルデヒド基を持つ「アルドース」(例:グルコース)と、ケトン基を持つ「ケトース」(例:フルクトースに分類されます 。
フルクトースは、とが示すように「ケトン基」を持つケトースです。  

しろくまさん
しろくまさん
グルコースとフルクトースに関してはよく出るから2つとも覚えよう!

単糖類は、アルデヒド基を持つアルドースと、ケトン基を持つケトースに大別されます 。
フルクトースはケトン基を持つケトースの代表例です 。ただし、フルクトースは水溶液中で環状構造と鎖状構造の間で平衡状態にあり、鎖状構造になった際に分子内置換反応により一時的にアルデヒド基を形成するため、ケトン基を持つにもかかわらず還元性を示します 。この構造的特徴は、糖質の代謝経路や食品科学におけるメイラード反応への関与を理解する上で重要です。

✖️(5)でんぷんは、β─1,4 グリコシド結合をもつ。

でんぷんは、多数の「α─グルコース」「α─1,4 グリコシド結合」で結合した多糖類で、枝分かれ部分には「α─1,6 グリコシド結合」も含まれます 。
一方、「β─1,4 グリコシド結合」を持つのは、植物の細胞壁の主成分である「セルロース」です 。

でんぷんは、アミロース(直鎖状)とアミロペクチン(枝分かれ状)からなり、主に「α─1,4 グリコシド結合」と、枝分かれ部分の「α─1,6 グリコシド結合」で構成されます 。
これに対し、「β─1,4 グリコシド結合」は、多数のβ─グルコースが結合した「セルロース」の特徴です 。このαとβの結合の立体配置の違いが、ヒトの消化酵素による分解の可否を決定し、でんぷんがエネルギー源となる一方、セルロースが食物繊維として機能する理由となります。

 

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