第39回管理栄養士国家試験(25問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【25問目】脂質代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) インスリンは、リポたんぱく質リパーゼ活性を低下させる。
(2) リポたんぱく質リパーゼの異常では、高キロミクロン血症をきたす。
(3) 家族性高コレステロール血症は、グルコース─6─ホスファターゼの欠損によって起こる。
(4) ネフローゼ症候群の診断基準では、脂質異常症が必須条件である。
(5) 著明な高コレステロール血症では、急性膵炎を起こす。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【25問目】疾病の自然史と予防手段の適用段階に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(2) リポたんぱく質リパーゼの異常では、高キロミクロン血症をきたす。です!


第39回【25問目】脂質代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) インスリンは、リポたんぱく質リパーゼ活性を低下させる。
インスリンは、食後に血糖値を下げるホルモンです。余った糖を脂肪として体に蓄える働きも持っていて、脂肪の分解酵素であるリポたんぱく質リパーゼの活性は高めます。
インスリンは、食後に膵臓から分泌され、血糖値を下げるだけでなく、エネルギーを貯蔵する方向へ体を働かせます。リポたんぱく質リパーゼ(LPL)は、血液中のカイロミクロンやVLDLに含まれるトリグリセリドを分解し、脂肪細胞などへ取り込ませる酵素です。
インスリンは、このLPLの合成を促進し、その活性を高めることで、食後に血液中のトリグリセリドが速やかに脂肪細胞に取り込まれ、貯蔵されるように誘導します。したがって、インスリンはLPL活性を「低下させる」のではなく「上昇させる」が正しいです。
⭕️(2) リポたんぱく質リパーゼの異常では、高キロミクロン血症をきたす。
リポたんぱく質リパーゼは、食事で摂った脂肪(キロミクロン)を分解して、体に取り込むための酵素です。この酵素がうまく働かないと、分解されないキロミクロンが血液中に増えすぎ、「高キロミクロン血症」になります。
キロミクロンは、食事から吸収されたトリグリセリド(中性脂肪)を小腸から全身へ運ぶリポたんぱく質です。
リポたんぱく質リパーゼ(LPL)は、血管の内壁に存在する酵素で、キロミクロンやVLDLのトリグリセリドを分解し、脂肪酸を脂肪細胞や筋肉細胞に取り込ませる役割を担います。LPLの遺伝的欠損や機能低下があると、キロミクロンが効率的に分解・除去されなくなり、食後だけでなく空腹時にも血液中にキロミクロンが大量に滞留します。この状態が「高キロミクロン血症」と呼ばれ、重度の高トリグリセリド血症を引き起こし、急性膵炎などのリスクが高まります。
リポタンパク質については、「3)リポタンパク質と脂質の輸送」をご覧管ください。
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3)リポタンパク質と脂質の輸送
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✖️(3) 家族性高コレステロール血症は、グルコース-6-ホスファターゼの欠損によって起こる。
家族性高コレステロール血症は、血液中の悪玉コレステロール(LDL)を回収する仕組みが生まれつき弱い病気です。グルコース-6-ホスファターゼは、糖の代謝に関わる酵素で、コレステロールの病気とは関係がありません。
家族性高コレステロール血症は、血中のLDL(悪玉コレステロール)濃度が異常に高くなる遺伝性の疾患です。これは主に、細胞がLDLを取り込むための「LDL受容体」の遺伝子に異常があるために起こります。LDL受容体の機能が低下したり欠損したりすると、血液中のLDLが細胞に取り込まれずに蓄積されてしまいます。
一方、グルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)は、肝臓などで糖新生やグリコーゲン分解の最終段階を担う酵素です。この酵素の欠損は、糖原病Ia型(フォン・ギールケ病)という糖代謝異常症を引き起こし、低血糖や乳酸アシドーシスなどの症状を呈します。したがって、両者は全く異なる疾患であり、原因も異なります。
✖️(4) ネフローゼ症候群の診断基準では、脂質異常症が必須条件である。
ネフローゼ症候群は、腎臓の病気で、診断には大量のタンパク質が尿に出ること(タンパク尿)と、血液中のタンパク質が減ること(低アルブミン血症)が必須です。脂質異常症もよく見られますが、診断に必須の条件ではありません。
ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体障害により、血液中のタンパク質が大量に尿中に漏れ出す病態です。その診断基準には、「高度タンパク尿」と「低アルブミン血症」が必須とされています。これに伴って体内の水分バランスが崩れて「浮腫(むくみ)」が見られ、また肝臓でのリポたんぱく質合成の亢進や分解能の低下により「高脂血症」も高頻度で合併します。しかし、高脂血症はネフローゼ症候群に伴う二次的な症状であり、診断のための「必須条件」とはされていません。必須なのはタンパク尿と低アルブミン血症です。
✖️(5) 著明な高コレステロール血症では、急性膵炎を起こす。
急性膵炎は、お腹の膵臓という臓器が炎症を起こす病気です。血液中の「中性脂肪(トリグリセリド)」が非常に高い場合に起こりやすい病気で、コレステロールが高いこと自体は直接の原因にはなりにくいです。
急性膵炎は、膵臓が自己消化酵素によって炎症を起こす病態であり、その主な原因は胆石症やアルコール多飲です。高脂血症も急性膵炎の原因となることがありますが、これは著明な高トリグリセリド血症(特に血中トリグリセリド値が1000mg/dL以上、あるいは2000mg/dLを超える場合)に限られます。
血中のトリグリセリドが高すぎると、膵臓の毛細血管が詰まったり、膵臓内でトリグリセリドが分解される際に放出される遊離脂肪酸が膵臓組織を傷害したりすることで炎症が誘発されます。一方、高コレステロール血症は主に動脈硬化性疾患のリスクを高めますが、急性膵炎の直接的な原因となることは稀です。
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