第39回管理栄養士国家試験(20問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【20問目】アミノ酸・糖質・脂質の代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) ビタミン B1 は、アミノ基転移反応の補酵素である。
(2) 尿素回路は、腎臓に存在する。
(3) セロトニンは、トリプトファンから合成される。
(4) 糖新生は、小胞体で行われる。
(5) 脂肪酸の合成は、ミトコンドリアで行われる。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【20問目】アミノ酸・糖質・脂質の代謝に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(3) セロトニンは、トリプトファンから合成される。 です!


第39回【20問目】アミノ酸・糖質・脂質の代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) ビタミン B1 は、アミノ基転移反応の補酵素である。
ビタミンB1は、糖の代謝に関わるけど、アミノ酸の転移反応には別のビタミンが関わるんだ。
アミノ基転移反応の補酵素として働くのは、ビタミンB6(ピリドキサールリン酸)です。
ビタミンB1(チアミンピロリン酸)は、主に糖代謝におけるTCA回路の前段階であるピルビン酸からアセチルCoAへの変換や、ペントースリン酸経路などで補酵素として機能します。アミノ酸代謝では、特に分岐鎖アミノ酸の脱炭酸反応などにも関わりますが、アミノ基転移反応の主役ではありません。
栄養素(ビタミン) | 関わる三大栄養素 | 主な補酵素としての役割 (反応) |
ビタミンB1 (チアミン) | 糖質 | 糖質代謝におけるピルビン酸からアセチルCoAへの変換、およびTCA回路での脱炭酸反応の補酵素。ペントースリン酸経路にも関与します。 |
ビタミンB2 (リボフラビン) | 糖質、脂質、タンパク質 | FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)やFMNとして、電子伝達系、脂肪酸のβ酸化、TCA回路など、様々な酸化還元反応の補酵素です。 |
ナイアシン (B3) | 糖質、脂質、タンパク質 | NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)やNADPとして、解糖系、TCA回路、電子伝達系、脂肪酸合成など、多くの代謝経路での酸化還元反応の補酵素です。 |
パントテン酸 (B5) | 糖質、脂質、タンパク質 | 補酵素A(CoA)の構成成分として、アセチルCoAやスクシニルCoAの形で、TCA回路、脂肪酸合成・分解、アミノ酸代謝など、広範囲の代謝反応に必須です。 |
ビタミンB6 (ピリドキシン) | タンパク質 | アミノ酸の代謝、特にアミノ基転移反応や脱炭酸反応(セロトニンなどの神経伝達物質合成)、脱アミノ反応の補酵素です。 |
ビオチン (B7) | 糖質、脂質、タンパク質 | カルボキシラーゼ(ピルビン酸カルボキシラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼなど)の補酵素として、炭酸固定反応に関与します。 |
葉酸 (B9) | タンパク質 | C1単位(一炭素単位)の代謝に関わる補酵素として、DNA・RNA合成(プリン、ピリミジン合成)やアミノ酸代謝(ホモシステインのメチオニンへの再メチル化など)に必須です。 |
ビタミンB12 (コバラミン) | タンパク質、脂質 | 葉酸と協調してホモシステインのメチオニンへの再メチル化(DNA合成)に関わるほか、奇数鎖脂肪酸の代謝(メチルマロニルCoAからスクシニルCoAへの異性化)の補酵素です。 |
ビタミンC (アスコルビン酸) | タンパク質、脂質 | コラーゲン合成に必要な水酸化酵素の補酵素として機能します。また、鉄の吸収促進や一部の薬物代謝、コレステロール代謝にも関与します。 |
ビタミンA (レチノール) | 脂質 | 直接的な補酵素作用は限定的ですが、視覚(ロドプシン)や皮膚・粘膜の機能維持に必須であり、脂質代謝の調節にも関与が示唆されています。 |
ビタミンD | 脂質 | ホルモン様作用を持ち、カルシウム・リンの代謝調節が主な役割ですが、脂質代謝への影響も研究されています。 |
ビタミンE | 脂質 | 不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ抗酸化作用が主な役割で、細胞膜の保護に重要です。 |
ビタミンK | 脂質 | 血液凝固因子の活性化に必要なカルボキシラーゼの補酵素です。骨形成にも関与します。 |
✖️(2) 尿素回路は、腎臓に存在する。
尿素回路は、肝臓でアンモニアを無毒な尿素に変える大事な働きをする場所だよ。
尿素回路は、主に肝臓に存在します。
体内で発生した有害なアンモニアを、毒性の低い尿素に変換して体外へ排泄する役割を担っています。肝臓の機能が低下すると、アンモニアが体内に蓄積し、肝性脳症などの症状を引き起こすことがあります。
腎臓は、生成された尿素を尿として体外に排泄する役割を担いますが、尿素を合成する場所ではありません。
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3)尿素回路
1.尿素回路とは 尿素回路とは、有毒なアンモニアを無毒な尿素へと変換するための代謝回路のことで、肝細胞のミトコンドリアと細胞質に存在しています。 「2)グルタミン酸とグルタミンを介したアンモニアの ...
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⭕️(3) セロトニンは、トリプトファンから合成される。
幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から作られるんだよ。
セロトニンとは
セロトニンは、気分、睡眠、食欲、学習など、様々な生理機能に関与しており、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
セロトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンから合成される神経伝達物質です。
トリプトファンは、まず5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)に変換され、その後、脱炭酸反応を経てセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)が生成されます。
✖️(4) 糖新生は、小胞体で行われる。
糖新生は、主に肝臓の細胞の中にあるミトコンドリアと細胞質で行われるよ。小胞体ではないんだ。
糖新生は、主に肝臓で、一部は腎臓でも行われますが、細胞内の場所としてはミトコンドリアと細胞質(細胞質ゾル)で行われます。
具体的には、ピルビン酸からオキサロ酢酸への変換はミトコンドリアで、その後の多くの反応は細胞質で行われます。グルコース-6-リン酸の脱リン酸化反応だけが、小胞体で行われる酵素(グルコース-6-ホスファターゼ)によって触媒されますが、糖新生全体が小胞体で行われるわけではありません。
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2)糖新生の反応
今回は糖新生の反応について学んでいきますが そのなかで特に重要な3つの不可逆反応がありますのでしっかりと覚えていきましょう。 1.糖新生の反応 糖新生の反応はその多くが解糖の逆反応ですが、 解糖の3つ ...
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✖️(5) 脂肪酸の合成は、ミトコンドリアで行われる。
脂肪酸は、細胞の細胞質で作られるよ。エネルギーを作るミトコンドリアとは場所が違うんだ。
脂肪酸の合成は、主に細胞質(細胞質ゾル)で行われます。
ミトコンドリアは、脂肪酸の分解(β酸化)や、アセチルCoAからTCA回路を経てATPを生成する場所です。
脂肪酸合成
脂肪酸合成は、過剰なエネルギーを貯蔵するために行われる反応で、アセチルCoAを原料として、ATPやNADPHなどのエネルギーを消費して行われます。
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