1.糖新生とは
糖新生は、飢餓状態において主に肝臓で炭水化物以外の基質から
グルコースを生合成する経路のことです。
※腎臓においても一部的に糖新生は行われます。
→グルコース+2NAD++4ADP+2GDP+6Pi
解糖では計2ATPを生成しますが、
糖新生は6ATPを消費する反応となっています。
※ATPとGTPは「ATP+GDP⇄ADP+ATP」の反応で可逆的に変換されますので、GTPはATPと等価であるといえます。
糖新生の基質
糖新生に用いられる基質にはさまざまものがありますが
その中でも特に覚えておくことが望まれるものについてみていきます。
①「ピルビン酸」
→末梢組織のピルビン酸は「グルコース-アラニン回路」によってアラニンに変換されてから肝臓に運ばれて糖新生に用いられます。
②「乳酸」
→「コリ回路」によって肝臓に運ばれた乳酸がピルビン酸に変換されて糖新生に利用されます。
③「アミノ酸」
→糖原性アミノ酸がオキサロ酢酸やピルビン酸に変換されて糖新生に利用されます。(「ロイシン」と「リシン」以外のアミノ酸が糖原性アミノ酸です。)
④「プロピオン酸」
→中性脂肪であるトリアシルグリセロール(TG)由来の奇数鎖脂肪酸のβ酸化によって生じたプロピオニルCoAがスクシニルCoAに変換されて「クエン酸回路」に入りオキサロ酢酸に変換されて糖新生に利用されます。
⑤「グリセロール」
→中性脂肪であるトリアシルグリセロール(TG)由来のグリセロールが糖新生に利用されます。
糖新生は飢餓状態において行われますが、これは糖新生を行う酵素がグルカゴン(血糖値をあげるホルモン)のシグナルによって合成されるからです。
飢餓状態において血糖値が低下するとグルコースの脳への供給が不足します。
脳やミトコンドリアを持たない細胞(赤血球や角膜)はグルコースを唯一のエネルギー源とするので、血糖値の低下は生体にとって致命的な影響を及ぼすことになります。
そのため、低血糖の時には肝臓での糖新生によって血糖値を維持する仕組みが確立されています。(飢餓時には「ケトン体」も脳のエネルギー源となります。)
少し話が難しくなりますが、重要なポイントになりますので糖新生と「グルコース-アラニン回路」や「コリ回路」との関わりについて確認しておきましょう。
糖新生と「グルコース-アラニン回路」
絶食時に血糖値が低下し、糖によるエネルギー供給が不足した状態になると
グリコーゲンやグルコースを分解する代わりにタンパク質の分解とアミノ酸の異化が促進されてその炭素骨格がエネルギー源として用いられます。
このとき筋肉ではアミノ酸の異化によって生じたアミノ基がグルタミン酸のアミノ基として固定された後、グルタミン酸のアミノ基をピルビン酸に転移してアラニンに変換します。
これによってアミノ酸の異化で生じるアミノ基を固定するα-ケトグルタル酸が再生されて、アミノ酸の分解を再び行うことができるようになります。
※多くの組織ではグルタミン酸のアミノ基は転移されずに、遊離しているアンモニアの無毒化のために使われます。このためグルタミン酸はさらにアミノ基が固定されてグルタミンを生じます。この過程ではα-ケトグルタル酸が再生されませんので、アミノ酸の分解を再び行うことはできません。(グルタミンは血流に入って肝臓まで届き処理されます。)
このようにして生じたアラニンは血流に入って肝臓まで届き糖新生によってグルコースに変換されます。
肝臓の糖新生で合成されたグルコースは再び血流に入って
筋肉などに絶えずグルコースを供給します。
このような回路は特に「グルコース-アラニン回路」と呼ばれ、絶食時などの血糖維持に特に重要な役割をしているのでしっかりと覚えておきましょう。
糖新生と「コリ回路」
赤血球などのミトコンドリアを持たない細胞や嫌気的条件にある筋肉では
グルコース分解の最終産物として乳酸を生じますが
これらの乳酸は血流に入って肝臓まで届き糖新生によってグルコースに変換されます。
肝臓の糖新生で合成されたグルコースは再び血流に入って
赤血球などのミトコンドリアを持たない細胞に絶えずグルコースを供給します。
このような回路は特に「コリ回路」と呼ばれ、激しい運動時などの血糖維持に特に重要な役割をしているのでしっかりと覚えておきましょう。
解糖の役割についてはこれで以上です。
次は「2)糖新生の反応」について学んでいきましょう。
-
2)糖新生の反応
今回は糖新生の反応について学んでいきますが そのなかで特に重要な3つの不可逆反応がありますのでしっかりと覚えていきましょう。 1.糖新生の反応 糖新生の反応はその多くが解糖の逆反応ですが、 解糖の3つ ...
続きを見る