今回は「モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の作製」について解説していきますが、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の違いについては「2)ウエスタンブロッティング(モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の違い」で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
1.ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の作製
○ポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体の作製には複雑な技術は必要とせず、生産にかかる手間も少ないことから、ポリクローナル抗体は比較的安価に入手(あるいは作製)することができます。
まず、ウサギやヒツジやマウスなどの動物に抗原を注射する操作を複数回行うことにより、血液中に抗体を多量に産生させます。次に、最初に抗原を注射した数ヶ月後に血液を回収し遠心分離にかけると、血清が得られます。このようにして分離した血清は、抗原に対する抗体が含まれていることから、抗血清と呼ばれます。
抗血清中には抗原に対する多種多様な抗体が含まれているので、抗血清から抗体のみを精製することでポリクローナル抗体を得ることができます。
○モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体の作製では、ハイブリドーマを樹立しなければならず、高度な技術を必要とすることから、モノクローナル抗体は比較的高価なものになります。
モノクローナル抗体の作製の過程では、ハイブリドーマと呼ばれる融合細胞を作製します。これは、ポリクローナル抗体の場合では抗血清からの精製によって得ることができますが、モノクローナル抗体を得るためには、抗原を注射した動物からB細胞を単離してB細胞(抗体産生細胞)から単一の抗体を産生させる必要があるためです。
B細胞は寿命が短く、効率的に増殖させることが困難であるため、モノクローナル抗体の作製過程では、B細胞とミエローマ細胞(がん細胞)をポリエチレングリコールを用いて細胞融合させ、抗体産生能と無限増殖能をもったハイブリドーマを形成させます。
まず、マウスやウサギなどの動物に抗原を注射する操作を複数回行った後、抗体を産生するB細胞(ヘルパーT細胞により活性化され、抗体産生細胞に分化することで抗体を産生する)が免疫反応を行う場である脾臓を取り出します。その後、脾臓にある抗体産生をしているB細胞とミエローマ細胞(不死化したがん細胞)をポリエチレングリコールにより細胞融合させ、抗体産生能と無限増殖能をもったハイブリドーマを形成させます。
このようにして形成されたハイブリドーマは、各クローンごとに特定の抗体のみを産生するため、このハイブリドーマの中から抗原との特異性の高いモノクローナル抗体を産生する細胞のみを選択(スクリーニング)します。このようにして選択したハイブリドーマを細胞培養し、分泌される抗体を精製することでモノクローナル抗体を得ることができます。
※動物に抗原を注射し始めてから、モノクローナル抗体を得るまでには一般的に5〜6ヶ月がかかります。
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の作製についてはこれで以上です。
次は「1)クロマチン免疫沈降(ChIP)の原理と概要」について学んでいきましょう。
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