補酵素には、NAD+やFAD、補酵素A(CoA)、ピリドキサールリン酸(PLP)といったビタミンB群由来のものだけでなく、ATPやビタミンKなどさまざまなものが含まれます。今回は、「補酵素とは何か」「補酵素はどのような働きをしているのか」「補酵素と補因子は何が違うのか」などについて解説していきます。
まずは、補酵素と補因子の言葉の違い(分類)について整理していきましょう。
1.補因子とは
補因子とは、酵素の働きを助ける非タンパク質性の単体や化合物のことです。多くの酵素は、それ自体では活性を持っていないため、補因子と結合することによって酵素活性、すなわち触媒活性を発揮することができるようになります。
○補因子の分類
補因子は、大きく「補酵素」と「金属イオン」の2種類に分けられます。
補酵素とは、酵素の働きを助ける低分子量の有機化合物のことで、主に、酵素の基質となって反応ごとに酵素の活性部位から離れて別の酵素の働きで元の構造に戻る補助基質(ATPなど)と常に酵素に固く結合していて基質とはならない補欠分子族(ピリドキサールリン酸など)の2つがあります。
このように、酵素には、補酵素(補助基質や補欠分子族)などの有機化合物を補因子とするものや、金属イオン(Mg2+、Fe2+など)などの無機物を補因子とするものがあります。
○アポ酵素とホロ酵素
アポ酵素とは、それ自体では酵素としての活性をもたない酵素のことで、アポ酵素に補因子(補酵素など)が結合することで初めて活性をもった酵素(これをホロ酵素といいます)として機能することができます。すなわち、アポ酵素(タンパク質のみ)に補因子が結合したものがホロ酵素(タンパク質+補因子)となります。
※アポ酵素 + 補因子(補酵素など) ⇆ ホロ酵素
○主な補酵素
主な補酵素には、以下のようなものがあります。
【補助基質】
・ATP
・S-アデノシルメチオニン
・UDPグルコース
・NAD+、NADP+
・補酵素A(由来:パントテン酸)
・テトラヒドロ葉酸:(由来:葉酸)
・ユビキノン
【補欠分子族】
・FAD、FMN(由来:ビタミンB2)
・チアミン二リン酸(由来:ビタミンB1)
・ピリドキサールリン酸(由来:ビタミンB6)
・ビオチン
・レチナール(由来:ビタミンA)
これで補酵素については以上です。
次は「1)解糖の役割」について学んでいきましょう。
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1)解糖の役割
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【参考】