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2)グルコース1分子あたりのATP合成量(計算)

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電子伝達系では、NADHとFADH2のどちらを電子供与体として用いるかによって、マトリクスから膜間腔へ移動されるH+の数は違っていました。今回は解糖やクエン酸回路によって供給されたNADHやFADH2から実質的に何分子のATPが電子伝達系で合成されているのかを理解し、グルコース1分子あたりのATP合成量について計算できるようになることを目的として解説していきます。

1.ATP合成

電子伝達系でのATP合成は、ミトコンドリア内膜のATP合成酵素によって行われています。「1)電子伝達系の役割とプロトン勾配」で解説したように、ATP合成酵素によるATP合成では、ミトコンドリア内膜を挟んだプロトン勾配( H+の濃度差)によるプロトン駆動力利用されています。

このようなプロトン駆動力を用いたATP合成の機構は、ミッチェルによって「化学浸透圧説」として最初に提唱されました。

ちなみに、プロトン駆動力とは①H+の濃度差②電荷の差を合わせた電気化学ポテンシャルのことで、プロトン勾配がもつエネルギーのことをいいます。

2.ATP合成酵素

それではまず、ATP合成酵素の構造と性質について確認していきましょう。

ATP合成酵素は分子モーターとして機能しており、F0というサブユニットとF1というサブユニットをもつことからF0F1-ATPアーゼとも呼ばれています。構造としては、F0はミトコンドリア内膜に埋まっていて、F1はミトコンドリアマトリクスに突き出た形で存在しており、F0モーターがH+の濃度勾配によるエネルギーを使ってF1モーターを回すことによって、ATPを産生しているのです。

ATP合成酵素のイメージ図はこちら↓

ではATP1分子を合成するためには、どれくらいのH+がマトリクスへと輸送されているのでしょうか。

膜間腔のH+はマトリクスのH+よりも高濃度に保たれているますので、H+がATP合成酵素のFoモーターを通ってマトリクス側へと輸送されていますが、このとき3分子のH+がマトリクスへと輸送されるごとにATP1分子が合成されています

しかし、実際にマトリクスにおいてATPを合成するためには、ATP合成の材料となるADPやPiをマトリクス内に取り込む必要があります。また、合成されたATPの大部分は細胞質で利用されるため、マトリクスから細胞質へと輸送される必要があります。

3.内膜を隔てたATP、ADP、Piの輸送

内膜を隔てたATP、ADP、 Piの輸送は「アデニンヌクレオチドトランスロカーゼ」と「リン酸輸送体」という2つの膜タンパク質によって行われています。

アデニンヌクレオチドトランスロカーゼは、ATP-ADP交換タンパク質のことで、細胞質のADP3-をミトコンドリア内へ、ミトコンドリア内のATP4-を細胞質へと対向輸送しています。この対向輸送では、プロトン勾配のもつプロトン駆動力のうち②電荷の差が用いられています。

リン酸輸送体は、細胞質のPiをミトコンドリア内へと輸送するときにH+も同時にミトコンドリア内へと共輸送します。この共輸送では、プロトン勾配のもつプロトン駆動力のうち①H+の濃度差が用いられています。

つまり、「アデニンヌクレオチドトランスロカーゼ」と「リン酸輸送体」がATP、ADP、Piを輸送するために、H+1個分のプロトン駆動力が用いられているのです。

ちなみに、対向輸送とは、膜の内外で異なる物質を相互に逆方向に移動させる輸送のことで、共輸送とは、膜の片側から異なる物質を同方向に移動させる輸送のことをいいます。

内膜を隔てたATP、ADP、Piの輸送のイメージ図はこちら↓

これらのことを踏まえると、細胞質内のATPを1分子増やすためには、4個分のH +が膜間腔からマトリクスに流入する必要があるということになります。この数はNADHやFADH2が1分子あたりでどれくらいのATPを産生するかの指標となりますので、覚えておきましょう。

4.グルコース1分子あたりのATP合成量

1)電子伝達系の役割とプロトン勾配」で解説したように、電子伝達系においてNADHとFADH2のどちらを電子供与体として用いるかによって、マトリクスから膜間腔へと移動されるH+の数は違っています。

電子伝達系におけるH+の膜間腔への移動のイメージ図はこちら↓

NADHを電子伝達系で用いる場合には、計10H+が膜間腔へと輸送され、FADH2を電子伝達系で用いる場合には、計6H+が膜間腔へと輸送されます。

NADHとFADH2を用いたH+の膜間腔への移動数はこちら↓

細胞質内のATPを1分子増やすためには、4個分のH +が膜間腔からマトリクスに流入するということを踏まえると、NADH1分子あたり10/4=2.5ATP、FADH21分子あたり6/4=1.5ATPが合成されることになります。

NADHとFADH21分子あたりのATP合成量はこちら↓

好気呼吸では、1分子のグルコースが「解糖系→ピルビン酸のアセチルCoAへの変換→クエン酸回路」という経路でATPやNADH、FADH2を生成していました。

解糖の過程で2分子のATP2分子のNADH、2ピルビン酸→2アセチルCoAの過程で2分子のNADH、クエン酸回路の過程で2分子のATP(GTP)6分子のNADH2分子のFADH2が生成されます。

これらを表にまとめると下図のようになります↓

このように、好気呼吸では理論上、グルコース1分子あたり計32ATPが合成されています。これは乳酸発酵やアルコール発酵での2ATP合成と比べても、エネルギー生成量が16倍も得られていることがわかります。

 

グルコース1分子あたりのATP合成量(計算)はこれで以上になります。
次は「3)活性酸素/スーパーオキシドアニオンの処理」について学んでいきましょう。

 

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