第39回管理栄養士国家試験(74問目)
基礎栄養学
第39回【74問目】脂肪酸および脂肪酸由来の生理活性物質に関する記述である。 誤っているのはどれか。1つ選べ。
⑴ オレイン酸は、一価不飽和脂肪酸である。
⑵ α─リノレン酸は、生体内で合成されない。
⑶ EPA は、リノール酸から合成される。
⑷ アラキドン酸は、エイコサノイドの前駆体である。
⑸ プロスタグランジンは、エイコサノイドの一種である
第39回【74問目】脂肪酸および脂肪酸由来の生理活性物質に関する問題、解説スタート!
この問題の誤り(正解)は、(3) EPA は、リノール酸から合成される。 です!


第39回【74問目】脂肪酸および脂肪酸由来の生理活性物質に関する記述である。 誤っているのはどれか。1つ選べ。
⭕️⑴ オレイン酸は、一価不飽和脂肪酸である。
オレイン酸は、体内で最も一般的な脂肪酸の一つで、二重結合が一つだけの「一価不飽和脂肪酸」に分類されます。これは正しい記述です。
脂肪酸はその構造によって分類されます。二重結合を持たないのが飽和脂肪酸、二重結合を持つのが不飽和脂肪酸です。
多価不飽和脂肪酸とは分子内に二重結合を2つ以上持つ脂肪酸のことです。具体的にはリノール酸とα-リノレン酸です。
不飽和脂肪酸の中でも、二重結合が1つだけのものを一価不飽和脂肪酸と呼びます。
一価不飽和脂肪酸の代表的な例は、以下の通りです。
一価不飽和脂肪酸の代表的な例
- オレイン酸: オリーブオイルやキャノーラ油、ナッツ類に多く含まれます。ヒトの体内でも合成できる脂肪酸です。
- パルミトレイン酸: マカダミアナッツオイルやアボカドに含まれます。
⭕️⑵ α─リノレン酸は、生体内で合成されない。
α-リノレン酸は、体内で作ることができない「必須脂肪酸」です。これは正しい記述です。
脂肪酸の中には、私たちの体内で合成できず、食事から摂取しなければならないものがあります。これらを必須脂肪酸と呼びます。
リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)がこれにあたります。これらは、体内で様々な重要な物質の原料となるため、食事での摂取が不可欠です。
リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)を詳しくみてみよう!
必須脂肪酸
体内で合成することができず、食物から摂取しなければならない脂肪酸を必須脂肪酸と呼びます。リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)は、ヒトにとっての必須脂肪酸です。
リノール酸(n-6系脂肪酸)
- 構造: 末端から数えて6番目の炭素に最初の二重結合があるため、n-6系脂肪酸と呼ばれます。
- 働き:体内でアラキドン酸に変換され、アラキドン酸からプロスタグランジンやトロンボキサンなどの生理活性物質が合成されます。血中コレステロールを低下させる作用がありますが、過剰摂取はアレルギーや炎症を引き起こす可能性があります。
- 主な食品: ごま油、ひまわり油、コーン油、大豆油など。
α-リノレン酸(n-3系脂肪酸)
- 構造: 末端から数えて3番目の炭素に最初の二重結合があるため、n-3系脂肪酸と呼ばれます。
- 働き:体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。血圧低下、血中中性脂肪低下、抗炎症作用など、多様な生理作用があります。
- 主な食品: えごま油、亜麻仁油、くるみ、大豆油、緑黄色野菜など。
両者のバランス
リノール酸とα-リノレン酸は、体内で同じ酵素を使って代謝されるため、両者の摂取バランスが重要とされています。
日本人の食事摂取基準では、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の比率が2:1から4:1の範囲内になることが望ましいとされています。現代の食生活では、n-6系脂肪酸の摂取量が多くなりがちなため、α-リノレン酸を意識して摂ることが推奨されています。
✖️⑶ EPA は、リノール酸から合成される。
EPAは、α-リノレン酸から作られます。リノール酸からは作られません。これがこの問題の誤りです。
ポイント
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、n-3系の脂肪酸です。
これらは、n-3系の必須脂肪酸であるα-リノレン酸から体内で合成されます。
一方、リノール酸はn-6系の必須脂肪酸であり、そこから作られるのはアラキドン酸です。この系統をしっかり区別して覚えることが重要です。
⭕️⑷ アラキドン酸は、エイコサノイドの前駆体である。
アラキドン酸は、体内で生理活性物質(エイコサノイド)を作るための「材料」になります。これは正しい記述です。
エイコサノイドとは
エイコサノイドは、私たちの体内でホルモンのように働く生理活性物質の総称です。炎症や免疫反応、血液の凝固など、様々な生理機能に関わっています。
アラキドン酸は、このエイコサノイド(プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなど)を合成するための重要な出発物質(前駆体)となります。
⭕️⑸ プロスタグランジンは、エイコサノイドの一種である。
プロスタグランジンは、アラキドン酸から作られる、エイコサノイドというグループに属する物質です。これは正しい記述です。
プロスタグランジンは、エイコサノイドの代表的な例です。
痛みの伝達や発熱、血管の拡張・収縮など、非常に多様な作用を持ちます。他のエイコサノイドには、血液凝固に関わるトロンボキサンや、アレルギー反応に関わるロイコトリエンなどがあります。
勉強のポイント
この問題は、脂肪酸の分類と代謝経路を問うています。特に、必須脂肪酸であるn-3系(α-リノレン酸)とn-6系(リノール酸)の代謝経路を正確に理解しておくことが重要です。
ポイント
n-6系: リノール酸 → アラキドン酸 → プロスタグランジン、トロンボキサンなど
n-3系: α-リノレン酸 → EPA → DHA
これらの脂肪酸が、最終的にどのような生理活性物質になるのか、代謝の系統図を頭の中で整理しておくと、類似問題にも対応しやすくなります。がんばってください!
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