生化学

2)細胞におけるシグナル分子の受容(受容体による認識)

Sponsored Link

細胞におけるシグナル分子の受容(受容体による認識)

ここでは、細胞がどのようにして細胞外のシグナル分子を認識するのかについて学んでいきましょう。

1. 受容体の種類

細胞外のシグナル分子は、リガンド(ここでは受容体に特異的に結合する物質のこと)として、細胞膜あるいは細胞内に存在する受容体に結合し、細胞内シグナル伝達を引き起こします。

この受容体にはさまざまな種類がありますが、大きく分けて2つのタイプに分類できます。

細胞膜受容体・・・Gタンパク質共役型受容体酵素共役型受容体イオンチャネル共役型受容体の3つ
細胞内受容体・・・いわゆる核内受容体のこと

それでは、それぞれの受容体の特徴について確認していきましょう。

細胞膜受容体

水溶性のシグナル分子は、脂質二重層からなる細胞膜を通過することはできませんので、細胞膜に存在する受容体を介したシグナル伝達が行われます。

①Gタンパク質共役型受容体(GPCR)

Gタンパク質共役型受容体について説明する前に、そもそもGタンパク質とは何かについてご説明したいと思います。

Gタンパク質とは?

Gタンパク質とは、グアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称のことです。

ここでのグアニンヌクレオチドは、GDPあるいはGTPのことをいいますので、Gタンパク質は「GDPあるいはGTPが結合するタンパク質の総称」になります。

※ヌクレオチドについては「1)DNAとRNAの構造と性質」で解説していますのでよければ見てみてください。

一般的には、このGタンパク質はGDPが結合している状態不活性型で、GTPが結合している状態活性型になります。そのため、Gタンパク質は、このGDPとGTPの結合状態を変化させることによって、さまざまな刺激に応じて活性型と不活性型を行き来することができます。

そして、このGタンパク質には大きく分けて「三量体Gタンパク質」と「低分子量Gタンパク質」の2種類があるということを覚えておいてください。

 

Gタンパク質共役型受容体とは、この三量体Gタンパク質が結合している7回膜貫通型の受容体のことをいいます。この7回膜貫通型の構造は、Gタンパク質共役型受容体の大きな特徴の一つになります。

Gタンパク質共役型受容体にリガンドが結合するによって、Gタンパク質のαサブユニットからGDPが解離し、GTPが結合することで、細胞内シグナル伝達が進行していきます。

この7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体の代表例には、アドレナリン受容体グルカゴン受容体などがあります。

※現在市販されている薬の多くが、この7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体をターゲットとしています。

※グルカゴン受容体を介したシグナル伝達については「3)ホルモンによるグリコーゲン代謝の調節」で解説していますのでよければ見てみてください。

低分子量Gタンパク質はどのようにして活性化されるか?「GEF」

ここまでで、三量体Gタンパク質は受容体と共役することで、リガンド依存的に活性化されることがわかりました。それでは、細胞内に存在し、受容体とは共役していない低分子量Gタンパク質はどのようにして活性化されるのでしょうか。

この低分子量Gタンパク質を活性化する因子、すなわち低分子量Gタンパク質に結合しているGDPをGTPに交換する因子があります。これを特に「グアニンヌクレオチド交換因子(Guanine nucleotide Exchange Factor:GEF)」といいます。

低分子量Gタンパク質はこのGEFによって、活性化が行われています。

 

活性型になったGタンパク質はどのようにして不活性化されるか?「GAP」

Gタンパク質自体は、弱いGTPase活性(GTPをGDPに加水分解する酵素活性)をもちますが、Gタンパク質自身では、活性化Gタンパク質を不活性型にすぐに戻すことはできません。

そこで、細胞内にはGタンパク質がもつGTPase活性を活性化する「GTPase活性化タンパク質(GTPase- activating protein:GAP)」と呼ばれる因子が存在しています。

活性型のGタンパク質はこのGAPによって、不活性型へと戻ります。

 

②酵素共役型受容体

酵素共役型受容体とは、自身が酵素活性をもつ受容体あるいは、酵素が直接結合している受容体のことをいいます。

細胞外のシグナル分子がリガンドとして、受容体に結合すると細胞内の酵素が活性化して、細胞内シグナル伝達が進行していきます。

代表的な例は、チロシンキナーゼ活性をもつインスリン受容体です。

※インスリン受容体を介したシグナル伝達については「3)ホルモンによるグリコーゲン代謝の調節」で解説していますのでよければ見てみてください。

③イオンチャネル共役型受容体

イオンチャネル共役型受容体とは、リガンドが結合することによってチャネルが開口し、細胞内外のイオンを通過させるタイプの受容体のことをいいます。

細胞内受容体(核内受容体)

 疎水性のシグナル分子は、脂質二重層からなる細胞膜を通過することができますので、細胞内に取り込まれて、細胞内に存在する受容体(核内受容体)を介したシグナル伝達が行われます。

※核内受容体とは、普段は細胞質に存在しますが、リガンドの結合によって核内へと移行することによって、転写因子として標的遺伝子の発現を調節するタイプの受容体のことをいいます。

これらの疎水性の物質には、ビタミンAやビタミンDなどの脂溶性ビタミンステロイドホルモンなどがあります。

細胞におけるシグナル分子の受容(受容体による認識)についてはこれで以上です。
次は「3)代表的なシグナル伝達の例(細胞内シグナル伝達)」について学んでいきましょう。

合わせて読みたい
インスリンシグナル伝達(PI3K-Akt-mTORC1)の流れ
3)代表的なシグナル伝達の例(細胞内シグナル伝達)

ここでは、細胞内でシグナル伝達がどのようにして行われていくかを確認していきましょう。 シグナル伝達の様式 シグナル伝達の仕組みを理解するためには、どのようにしてシグナル分子が活性化されたり不活性化され ...

続きを見る

 

Sponsored Link

-生化学

© 2024 Bio-Science~生化学・分子生物学・栄養学などの『わかりやすい』まとめサイト~