分子生物学

RNAのプロセシング(転写後調節)

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RNAプロセシング

 真核生物における遺伝子発現調節の仕組みの特徴の一つには、転写された前駆体mRNAが「RNAのプロセシング」という過程を経る、ということがあります。これらのプロセシングという過程は、転写された後の段階で行われる転写後調節の一つになります。

3つのmRNAプロセシング

 RNAのプロセシングとは、転写されたRNAが修飾やスプライシングの過程を経て成熟RNAへと変換される過程のことをいいます。

ここでは、mRNAのプロセシングのなかでも特に覚えておきたい3つの過程
①5'末端への「キャップ構造の付加

②3'末端への「ポリAテールの付加

③「スプライシング

について学んでいきましょう。

①5'末端への「キャップ構造」の付加

 転写された前駆体mRNAの5'末端には、7-メチルグアノシンが結合した「キャップ」と呼ばれる構造が付加されます。

キャップ構造が形成されるメカニズム
 前駆体mRNAの5'末端のリン酸基が、ホスファターゼ(脱リン酸化酵素)によって脱リン酸化(リン酸基2つ除去)された後、そこに「GTP(リン酸基3つ)」が反応することによって、結果的に「グアノシン(グアニン(塩基)+リボース(糖))」が付加された形となります。続いて、グアニン(塩基)のN-7位がメチル化されることによって、7-メチルグアノシンが付加された形になります。

 

下図は「5'-キャップ」の模式図になりますが、前駆体mRNAの5'末端に7-メチルグアノシン(赤色)が結合しているのがわかります。引用元:https://en.wikipedia.org/wiki/Five-prime_cap

※この場合の5'末端とは、前駆体mRNAが合成されてきたときの「頭」の部分(一番最初に合成されるヌクレオチドの部分)のことをいいます。この「頭」の部分に修飾がなされることから「キャップ(帽子、cap)」と呼ばれています。

5'末端にキャップ構造が付加される意味

①mRNAの分解抑制」+「②翻訳開始に必須である

①について…
→5'-エキソヌクレアーゼ活性をもつRNA分解酵素(RNase)による分解を防ぎます。(核酸分解酵素にはエキソヌクレアーゼとエンドヌクレアーゼの2つがありますが、それらの違いは、外側から分解していくか、内側から分解していくかという分解様式にあります)

②について…
→翻訳開始に関わるタンパク質は、mRNAの5'-キャップ構造を認識することによって翻訳を開始させます。

②3'末端への「ポリAテール」の付加

転写された前駆体mRNAの3'末端には「ポリAテール」と呼ばれるA(アデニン)が20-200個も連続した配列が付加されるという特徴があります。

※実際はAMP(アデニル酸)が連続して結合しています。

※この場合の3'末端とは、前駆体mRNAが合成されてきたときの「尻尾」の部分(一番最後に合成されるヌクレオチドの部分)のことをいいます。この「尻尾」の部分に修飾がされることから「テール(尻尾、tail)」と呼ばれています。

3'末端にポリAテールが付加される意味

①mRNAの分解抑制

③「スプライシング」

 「スプライシング」とは、核内で転写された前駆体RNA の一部が取り除かれた後、残りの部分が再結合する反応のことをいいます。

このスプライシングによって取り除かれる部分をイントロン、それ以外の部分をエキソンといいます。

選択的スプライシングとは
 スプライシングによって、前駆体mRNAのエキソン部分が互いに結合することではじめて、成熟mRNAが完成するのですが、このとき組み合わされるエキソンが選択されて成熟mRNAが形成されることがあります。これを「選択的スプライシング」といいます。選択的スプライシングによって、ある単一の遺伝子から複数種類のタンパク質を作り出すことが可能になっています。

 

一般的なスプライシングの過程は「スプライソソーム」と呼ばれるRNAとタンパク質の複合体によって行われます。

このスプライソソームには、複数のsnRNA(核内低分子RNA)と呼ばれるRNAが含まれているという特徴があります。

それでは、どのようにしてイントロンが除去されるかというと、イントロンの塩基配列には「GU-AG則」という規則があり、イントロンの塩基配列はGUで始まり、AGで終わるという特徴があります。イントロンとエキソンの結合部位は「スプライス部位」と呼ばれ、イントロン内部には、コンセンサス配列(分枝部位といいます)があります。

一般的なスプライシングのメカニズム
 スプライシングの過程では、まず、分枝部位のA(アデニン)の-OH基がイントロンの5’末端(スプライス部位)と結合し、その後、新たに作られたエキソンの-OH基がイントロンの3’末端(スプライス部位)に結合することで、エキソンどうしが連結され、スプライシングが完了します。

 

このとき取り除かれるイントロンは、「ラリアット(投げ縄形)構造」となっているということも特徴の一つです。

mRNAのメチル化(RNAの塩基修飾)

 真核生物では、mRNAの化学修飾によっても転写後調節が行われています。DNAと比べて、RNAはメチル化を含めて様々な化学修飾を受けることが知られています。

mRNAをメチル化する「RNAメチル化酵素」や、脱メチル化する「RNA脱メチル化酵素」、さらに「RNAメチル化を認識する酵素」など数々のRNAメチル化に関与するタンパク質が見つかってきています。

特に、N6-メチルアデノシン(m6A)はmRNAの中に豊富に存在している修飾であることが知られていて、mRNA自体もDNAやヒストンと同様に化学修飾を受けることによって、さまざまな調節を受けているようです。

RNAのプロセシング(転写後調節)についてはこれで以上です。
次は「1)翻訳の仕組み①(アミノアシルtRNA合成酵素、リボソーム)」について学んでいきましょう。

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