管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【70問目】栄養素の吸収に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

Sponsored Link

第39回管理栄養士国家試験(70問目)

基礎栄養学

第39回【70問目】栄養素の吸収に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

⑴ フルクトースは、Na+ の濃度勾配を利用して吸収される。

⑵ ラクトースを構成する単糖は、SGLT1により吸収される。

⑶ アミノ酸は、H+ の濃度勾配を利用して吸収される。

⑷ 短鎖脂肪酸は、主にミセルを形成して吸収される。

⑸ コレステロールの吸収は、胆汁酸を必要としない。

第39回【70問目】栄養素の吸収に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(2) ラクトースを構成する単糖は、SGLT1により吸収される。 です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【70問目】栄養素の吸収に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️(1) フルクトースは、Na+ の濃度勾配を利用して吸収される。

フルクトース(果糖)は、Na+(ナトリウムイオン)の濃度勾配を利用するのではなく、GLUT5(グルコース輸送体5)というタンパク質によって促進拡散によって吸収されます。

糖の吸収メカニズム

糖質は消化されて単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)となり、主に小腸から吸収されます。吸収には2つの主要なトランスポーターが関わっています。

  • SGLT1(ナトリウム・グルコース共輸送体1)
  • GLUT5(グルコース輸送体5)
SGLT1(ナトリウム・グルコース共輸送体1)

SGLT1は、グルコースとガラクトースの吸収を担うタンパク質です。

小腸の細胞膜に存在し、ナトリウムイオン(Na+)の濃度差を利用してこれらの単糖を細胞内に能動的に取り込みます。この輸送にはエネルギーが消費されるため、「能動輸送」に分類されます。

この仕組みを簡単に言うと、細胞外のNa+濃度が高いことを利用して、Na+が細胞内に入っていく際のエネルギーを使って、グルコースやガラクトースも一緒に細胞内に取り込む、という「共輸送」が行われます。

GLUT5(グルコース輸送体5)

GLUT5は、主にフルクトースの吸収を担うタンパク質です。
SGLT1とは異なり、細胞内外の果糖の濃度差を利用して、濃度が高い方から低い方へフルクロースを輸送します。この輸送にはエネルギーが直接的に消費されないため、「促進拡散」と呼ばれます。

濃度勾配に従って輸送されるため、小腸内の果糖濃度が低い場合は吸収効率が下がります。この輸送は、ブドウ糖やガラクトースの輸送より遅いのが特徴です。

⭕️(2) ラクトースを構成する単糖は、SGLT1により吸収される。

ラクトース(乳糖)は、そのままでは吸収されます。ラクターゼという酵素で分解されたグルコースとガラクトースが、主にSGLT1によって吸収されます。

ラクトースは二糖類なので、小腸の刷子縁膜に存在するラクターゼという酵素によって、グルコースとガラクトースという2つの単糖に加水分解されてから吸収されます。

このグルコースとガラクトースは、Na+の濃度勾配を利用して、SGLT1という輸送体を介して小腸上皮細胞内に取り込まれます。

✖️(3) アミノ酸は、H+ の濃度勾配を利用して吸収される。

アミノ酸は、H+(水素イオン)の濃度勾配を利用するのではなく、Na+の濃度勾配を利用して吸収されます。

タンパク質が分解されてできるアミノ酸は、種類によって様々な輸送体がありますが、主にNa+の濃度勾配を利用した二次性能動輸送で小腸上皮細胞に吸収されます。

H+の濃度勾配を利用して吸収されるのは、ジペプチドやトリペプチドなどのオリゴペプチドです。

✖️(4) 短鎖脂肪酸は、主にミセルを形成して吸収される。

短鎖脂肪酸は、水に溶けやすいため、ミセルを形成せずに、直接小腸上皮細胞に吸収されます。ミセルを形成するのは、長鎖脂肪酸やモノグリセリドです。

脂肪酸は鎖の長さによって吸収経路が異なります。

ポイント

  • 短鎖脂肪酸(炭素数6以下)や中鎖脂肪酸(炭素数8~10)は、胆汁酸ミセルを必要とせず、水溶性であるため、門脈に入って直接肝臓へと運ばれます。
  • 長鎖脂肪酸やモノグリセリドは、水に溶けにくいため、胆汁酸と結合してミセルを形成し、小腸上皮細胞に取り込まれた後、再びトリグリセリドに再合成され、カイロミクロンとしてリンパ管へと入ります。

✖️(5) コレステロールの吸収は、胆汁酸を必要としない。

コレステロールは脂溶性なので、吸収されるには胆汁酸とミセルを形成する必要があります。

しろくまさん
しろくまさん
(4)で詳しく説明しているから見てね!

栄養素の吸収経路は、栄養素の種類によって様々です。それぞれの栄養素がどのようにして体内に取り込まれるのかを理解することは、消化器系の病態や栄養アセスメントを深く学ぶ上で非常に重要です。

←前の問題へ
no image
第39回【69問目】管腔内消化の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

第39回管理栄養士国家試験(69問目) 基礎栄養学 第39回【69問目】管腔内消化の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。 ⑴ 腸相は、胃に食物が入ることによって起こる応答である。 ...

続きを見る

次の問題へ→
no image
第39回【71問目】インスリンの作用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

第39回管理栄養士国家試験(71問目) 基礎栄養学 第39回【71問目】インスリンの作用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。 ⑴ 食欲を促進する。 ⑵ GLUT4の細胞膜への移行を促進 ...

続きを見る

 

Sponsored Link

-管理栄養士国家試験問題・解説