第39回管理栄養士国家試験(27問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【27問目】肝疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) A 型肝炎は、血液感染が最も多い。
(2) B 型肝炎ウイルスは、RNA ウイルスである。
(3) 肝硬変では、プロトロンビン時間が短縮する。
(4) 肝硬変では、血中コリンエステラーゼ値が上昇する。
(5) NASH では、肝の線維化がみられる。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【27問目】肝疾患に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(5) NASH では、肝の線維化がみられる。 です!


【27問目】肝疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) A 型肝炎は、血液感染が最も多い。
A型肝炎は、汚染された食べ物や水から感染することがほとんどです。血液から感染するタイプではありません。
A型肝炎ウイルス(HAV)は、主に経口経路/糞口感染経路(fecal-oral route)で広がります。
これは、HAVに汚染された水や食品(特に生カキなどの二枚貝)を摂取することで感染するということです。海外渡航者や、衛生環境の悪い地域での感染がよく見られます。B型肝炎やC型肝炎が血液を介して感染するのと対照的です。
✖️(2) B 型肝炎ウイルスは、RNA ウイルスである。
B型肝炎ウイルスは「DNAウイルス」の仲間です。RNAウイルスではありません。
ウイルスは、その遺伝情報を持つ核酸の種類によってDNAウイルスとRNAウイルスに大別されます。
DNAウイルスとRNAウイルス
B型肝炎ウイルス(HBV)は、二本鎖DNAをゲノムに持つ「DNAウイルス」です。
一方、C型肝炎ウイルス(HCV)やA型肝炎ウイルス(HAV)などはRNAウイルスに分類されます。
ウイルスの種類によって増殖様式や治療薬が異なるため、この分類は重要です。
肝炎ウイルスの種類 | 核酸の種類 | 主な感染経路 | 特徴 |
A型肝炎ウイルス (HAV) | RNAウイルス | 経口感染(糞口感染):ウイルスに汚染された水や食べ物(特に生牡蠣などの二枚貝)の摂取。 | ・一過性の急性肝炎を引き起こし、慢性化はしない。劇症肝炎になることは稀。 ワクチン接種により予防可能。 |
B型肝炎ウイルス (HBV) | DNAウイルス | 血液・体液感染:母子感染(周産期感染が主)・性行為感染・輸血、針刺し事故、医療行為(注射器・針の使い回しなど)・カミソリや歯ブラシの共用など | ・急性肝炎のほか、一部は慢性化し、肝硬変や肝がんへ移行するリスクがある。乳幼児期の感染は慢性化しやすい。ワクチン接種により予防可能。 |
C型肝炎ウイルス (HCV) | RNAウイルス | 血液感染:・輸血、針刺し事故、医療行為(注射器・針の使い回しなど)・刺青、ピアスの穴開け・薬物乱用による注射針の共有など(性行為・母子感染は稀) | ・約7割が慢性化し、肝硬変や肝がんへ移行するリスクが高い。現在では有効な抗ウイルス薬があり、治癒が可能。ワクチンは未開発。 |
D型肝炎ウイルス (HDV) | RNAウイルス | 血液・体液感染:HBVと同様の感染経路。 | ・B型肝炎ウイルスに同時または重複感染した場合のみ感染が成立する(HBVに依存して増殖するため)。慢性化しやすく、HBV単独感染よりも肝硬変や肝がんへの進行が速いことがある。B型肝炎の予防接種によってD型肝炎も予防できる。 |
E型肝炎ウイルス (HEV) | RNAウイルス | 経口感染(糞口感染):ウイルスに汚染された水や食べ物(特に加熱不十分な豚肉、鹿肉、イノシシ肉など)の摂取。 | ・一過性の急性肝炎を引き起こし、慢性化はしない。A型肝炎に似ているが、妊婦が感染すると劇症肝炎になるリスクが高い。一部の動物からヒトへの感染(人獣共通感染症)が知られている。 |
✖️(3) 肝硬変では、プロトロンビン時間が短縮する。
肝臓は血液を固める「凝固因子」というタンパク質を作っています。肝硬変で肝臓の機能が悪くなると、この凝固因子がうまく作れなくなるので、血液が固まるまでの時間(プロトロンビン時間)は延長します。
プロトロンビン時間は、血液の凝固能力を評価する検査項目の一つです。肝臓は、プロトロンビンを含む多くの血液凝固因子を合成しています。
肝硬変が進行し、肝機能が低下すると、これらの凝固因子の合成能力が落ちるため、血液が固まるまでに要する時間が長くなります。
つまり、プロトロンビン時間は「延長」し、出血しやすくなる傾向が見られます。
✖️(4) 肝硬変では、血中コリンエステラーゼ値が上昇する。
血液中のコリンエステラーゼという酵素は、肝臓で作られています。
肝硬変で肝臓の働きが悪くなると、この酵素が十分に作れなくなるので、血液中の値は低下します。
血中コリンエステラーゼ(ChE)
血中コリンエステラーゼ(ChE)は、主に肝臓で合成される酵素であり、肝臓の合成能力を反映する指標の一つとして用いられます。
肝硬変などで肝臓の機能が低下すると、コリンエステラーゼの合成量が減るため、血中コリンエステラーゼ値は「低下」します。これは、肝臓の予備能力を見る上で、アルブミンなどとともに重要な検査項目です。
⭕️(5) NASH では、肝の線維化がみられる。
NASH(ナッシュ)は、「非アルコール性脂肪肝炎」のことで、脂肪肝があるだけでなく、肝臓に炎症が起きてだんだん硬くなっていく(線維化)病気です。放っておくと肝硬変に進んでしまうこともあります。
NASH(Non-alcoholic Steatohepatitis:非アルコール性脂肪肝炎)は、アルコールの過剰摂取がないにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積し(脂肪肝)、さらに炎症や肝細胞の破壊が起こり、最終的に「肝線維化」が進行する病気です。

肝線維化は、肝細胞が損傷し続けることで、コラーゲンなどの線維組織が異常に増殖する状態を指し、これがさらに進行すると肝硬変へと移行する可能性があります。
NASHは、生活習慣病(肥満、糖尿病、脂質異常症など)と強く関連しており、近年注目されている肝疾患の一つです。
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