管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【22問目】加齢・疾患に伴う変化に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

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第39回管理栄養士国家試験(22問目)

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

第39回【22問目】加齢・疾患に伴う変化に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1) テロメアは、細胞分裂を繰り返すと長くなる。

(2) 肉芽組織は、線維芽細胞に富んでいる。

(3) 良性腫瘍は、悪性腫瘍に比べて細胞の分化度が低い。

(4) 上皮性の悪性腫瘍は、肉腫と呼ばれる。

(5) 脳死では、自発呼吸がみられる。

厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf

第39回【22問目 加齢・疾患伴う変化に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(2) 肉芽組織は、線維芽細胞に富んでいる。 です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【22問目】加齢・疾患に伴う変化に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️(1) テロメアは、細胞分裂を繰り返すと長くなる。

テロメアは、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなっていく「命の回数券」のようなものです。長くなることはありません。

テロメアは、染色体の末端にある特別な構造で、DNAが損傷するのを防ぐ役割をしています。
細胞が分裂するたびに、DNAが複製されるのですが、その際にテロメアの部分が少しずつ短くなっていきます。ある程度まで短くなると、細胞はそれ以上分裂できなくなり、老化や細胞死が誘導されます。これが細胞の寿命と関連していると考えられています。テロメラーゼという酵素がテロメアを伸長させる働きを持ちますが、これは生殖細胞や一部のがん細胞などで活発に見られるものです。

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⭕️2) 肉芽組織は、線維芽細胞に富んでいる。

肉芽組織は、傷が治るときにできる新しい組織のことで、傷を埋めてくれる「線維芽細胞」がたくさん集まっています。

肉芽組織とは

肉芽組織は、炎症反応の過程で、特に組織の欠損が起きた部分を埋めて修復する際に形成される組織です。
この組織には、傷を修復するためにコラーゲンなどの細胞外基質を産生する「線維芽細胞」が非常に豊富に含まれています。その他にも、新しい血管(新生血管)や炎症細胞なども見られます。

この肉芽組織が成熟して最終的に瘢痕組織(傷跡)へと変化していきます。

✖️(3) 良性腫瘍は、悪性腫瘍に比べて細胞の分化度が低い。

・良性腫瘍は、元の細胞に似ていてお行儀が良い(分化度が高い)のが特徴です。
・悪性腫瘍の方が、元の細胞と似ていない(分化度が低い)ことが多いです。

腫瘍の「分化度」とは、腫瘍細胞が元の正常な細胞にどれだけ似ているかを示す指標です。
分化度が高いほど、元の細胞の形態や機能に近く、成熟した状態を意味します。

良性腫瘍は、細胞の分化度が高く、成長が比較的遅く、周りの組織を壊したり転移したりすることは通常ありません。
一方、悪性腫瘍(がん)は、細胞の分化度が低い(未分化な)ものが多いです。これは、細胞が異常な増殖を繰り返し、元の細胞としての特徴を失っていることを示しています。

分化度が低いほど、悪性度が高い傾向にあります。

✖️(4) 上皮性の悪性腫瘍は、肉腫と呼ばれる

上皮からできる悪性腫瘍は「がん(癌腫)」と呼ばれます。肉腫は、骨や筋肉など「間葉系」という別の種類の組織からできる悪性腫瘍のことです。

悪性腫瘍とは

悪性腫瘍は、発生源となる組織によって大きく2つに分類されます。
癌腫(Carcinoma): 消化管や肺、皮膚など、体の表面や臓器を覆う「上皮組織」から発生する悪性腫瘍を指します。悪性腫瘍の多くはこのタイプです。
肉腫(Sarcoma): 骨、軟骨、筋肉、脂肪、血管など、「間葉系組織」と呼ばれる結合組織から発生する悪性腫瘍を指します。癌腫に比べて発生頻度は低いですが、進行が早いものもあります。

したがって、上皮性の悪性腫瘍は「癌腫」と呼ばれるのが正しいです。

✖️(5) 脳死では、自発呼吸がみられる。

脳死は、脳幹を含めた脳のすべての機能が完全に停止した状態です。
自発呼吸は脳幹がコントロールしているので、脳死状態では自発呼吸は完全に停止します。

脳死の判断基準

脳死は、以下の主要な特徴によって判断されます。

  • 意識がない(深昏睡): どんな刺激にも全く反応せず、意識が完全に失われている状態です。
  • 瞳孔が開きっぱなしで光に反応しない: 瞳孔が大きく開いたまま(散大)で、光を当てても縮むことがありません。
  • 脳幹反射がない: 脳幹が司る反射(瞳孔反射、対光反射、眼球運動、嚥下反射、咳反射など)が全て消失しています。例えば、のどに物が触れても咳が出ない、といった状態です。
  • 自発呼吸が完全に停止している: 呼吸中枢のある脳幹の機能が停止しているため、人工呼吸器を外すと、自分で息をすることができません。
  • 平坦な脳波: 脳の電気的活動を測る脳波検査で、全く活動が見られない状態(平坦な脳波)が確認されます。
  • 回復不能な状態である: これらの状態が、現在の医学では決して回復することがないと判断されることです。

 

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