第39回管理栄養士国家試験(73問目)
基礎栄養学
第39回【73問目】空腹時と比べたときの食後の脂質代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。
⑴ 小腸上皮細胞でキロミクロンの合成が抑制される。
⑵ 末梢血管でリポたんぱく質リパーゼの活性が抑制される。
⑶ 骨格筋でβ酸化が亢進する。
⑷ 脳でケトン体の利用が亢進する。
⑸ 血中への遊離脂肪酸の放出が抑制される。
第39回【73問目】空腹時に比べたときの食後の脂質代謝に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(5) 血中への遊離脂肪酸の放出が抑制される。 です!


第39回【73問目】空腹時と比べたときの食後の脂質代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️⑴ 小腸上皮細胞でキロミクロンの合成が抑制される。
食後は、脂を吸収しているので「宅配便(キロミクロン)」をどんどん作って送り出すモードです。なので、合成は抑制されません。
- 食事で脂っこいものを食べると、小腸がその脂肪を吸収します。
- 吸収した脂肪は、そのままでは血液に乗って運べないので、特別な「運搬車(キロミクロン)」に詰め込まれます。
- この運搬車は、小腸で作られ、リンパ管を通って全身へと向かいます。
食後はキロミクロンをどんどん作るため、抑制されるというのは間違いです。
✖️⑵ 末梢血管でリポたんぱく質リパーゼの活性が抑制される。
全身の細胞は、運ばれてきた脂肪を解体したいので、解体屋さん(リポたんぱく質リパーゼ)が血管のあちこちで「脂肪の分解はこちらです!」とスタンバイしています。なので、この配達員さんの働きは活性化します。
先ほどのお届け物(キロミクロン)が全身の毛細血管まで来ると、血管壁にいる「解体屋(リポたんぱく質リパーゼ:LPL)」が荷物(トリグリセリド)を細かく分解して、筋肉や脂肪細胞に渡します。
食後は多くの荷物が届くので、この解体係はフル稼働します。つまり、末梢血管でリポタンパク質リパーゼの活性は増殖します。抑制されるというのは間違いです。
✖️⑶ 骨格筋でβ酸化が亢進する。
食後はガソリン(グルコース)が満タンなので、わざわざ別の燃料(脂肪酸)を使う必要はありません。
β酸化って何?
β酸化とは、「体が脂肪をエネルギーに変えるための作業」のことです。
私たちの体は、活動するためのガソリンとして「グルコース」を使いますが、グルコースが足りなくなると、次に「脂肪」を燃やしてエネルギーを生み出します。この脂肪を燃やす作業がβ酸化です。
私たちの体は、まず手軽なエネルギー源であるグルコースを使います。
食後はインスリンの働きで、筋肉細胞にたくさんのブドウ糖が取り込まれるため、グルコースが優先的にエネルギーとして使われます。
脂肪を燃やす(β酸化)のは、グルコースが足りない空腹時や運動時です。したがって、食後にβ酸化は減少するのが正解になります。
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2)脂肪酸のβ酸化
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✖️⑷ 脳でケトン体の利用が亢進する。
脳のメインのごはんはグルコースです。ケトン体は、グルコースがなくなった時の非常食のようなものなので、食後にわざわざ非常食を使う必要はありません。
脳は通常、ブドウ糖だけをエネルギー源として利用します。
しかし、飢餓状態などグルコースが不足すると、肝臓で脂肪から作られる「非常食(ケトン体)」を使い始めます。食後はブドウ糖が豊富にあるため、脳はケトン体を使う必要がありません。
⭕️⑸ 血中への遊離脂肪酸の放出が抑制される。
食後はインスリンが「もう十分食べたから、これ以上脂肪を分解してエネルギーを作る必要はないよ!」と、脂肪分解にストップをかけます。
空腹時は、脂肪細胞に蓄えられた脂肪が分解され、エネルギーとして使われるために遊離脂肪酸(FFA)として血液中に放出されます。
しかし、食後は血糖値が上がり、インスリンが分泌されます。このインスリンには、脂肪分解を抑える働きがあります。そのため、脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出が抑制されます。
勉強のポイント
この問題のように、ホルモン(インスリン、グルカゴンなど)が、脂質や糖質の代謝にどう影響するかは、管理栄養士国家試験では頻出テーマです。特に、インスリンの働きは、食後や食間の代謝を理解する上で非常に重要です。
インスリン → 食後、「貯蔵」モードに切り替えるホルモン
- グルコースを筋肉や肝臓に取り込むのを促進
- 脂肪の合成を促進
- 脂肪の分解を抑制
グルカゴン → 空腹時、「分解」モードに切り替えるホルモン
- 肝臓のグリコーゲンをブドウ糖に分解
- 脂肪を分解してエネルギーに
これらのホルモンが、食後と空腹時で私たちの体をどのようにコントロールしているか、ぜひイメージしながら覚えるようにしましょう!がんばってくださいね!
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