ここでは、ピリミジンヌクレオチドのde novo合成について確認していきましょう。
ピリミジンヌクレオチドとは
ピリミジンヌクレオチドとは、C(シトシン)やT(チミン)などのピリミジン塩基をもつヌクレオチド(塩基、糖およびリン酸からなるDNAやRNAの基本単位)のことをいいます。
プリンヌクレオチドと同様に、核酸(DNAやRNA)の合成材料としても重要な物質なのですが、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドでは、その合成経路や分解経路が大きく異なっていますので注意が必要です。
ピリミジンヌクレオチドの「de novo合成」
それでは、ピリミジンヌクレオチドのde novo合成について確認していきましょう。
ピリミジンヌクレオチドのde novo合成の流れ
プリンヌクレオチドのde novo合成経路では、PRPPを土台としてプリン塩基を合成していました。
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1)プリンヌクレオチドのde novo合成
ここでは、プリンヌクレオチドのde novo合成について確認していきましょう。 プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチド 核酸(DNAやRNAなど)の合成過程では、その原材料であるヌクレオチド(塩基 ...
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一方、ピリミジンヌクレオチドのde novo合成経路ではまず、ピリミジン塩基を完成させてから、リボース-5リン酸の部分(PRPP:ホスホリボシル二リン酸)を結合させることによって、ピリミジンヌクレオチドのde novo合成が行われます。
その大まかな流れとしては、
「グルタミン→カルバモイルリン酸→→→オロト酸(ピリミジン骨格)→→UMP(ウリジル酸)」
という流れでUMPが合成されます。
また、CTPはUMPが変換されることで合成されます。
以下では、これらの過程を確認していきましょう。
グルタミンから「カルバモイルリン酸」の合成
プリンヌクレオチドのde novo合成の最初の段階では、
まずグルタミン由来のアミノ基が、カルバモイルリン酸シンテターゼⅡ(CPSⅡ)という酵素によって、炭酸水素イオン(HCO3-)と反応して、カルバモイルリン酸になります。
このとき、2分子のATPが消費されますが、1つは炭酸水素イオンの活性化に、もう片方はカルバモイルリン酸のリン酸基の形成に必要であると考えられます。
メモ
ここで、カルバモイルリン酸シンテターゼⅠ(CPSⅠ)が「尿素回路」の反応に関わる酵素であったことを思い出しましょう。尿素回路に関わるカルバモイルリン酸シンテターゼⅠ(CPSⅠ)は、ミトコンドリアに局在していますが、ピリミジンヌクレオチドのde novo合成に関わるカルバモイルリン酸シンテターゼⅡ(CPSⅡ)は、細胞質に局在しているという違いがあります。
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3)尿素回路
1.尿素回路とは 尿素回路とは、有毒なアンモニアを無毒な尿素へと変換するための代謝回路のことで、肝細胞のミトコンドリアと細胞質に存在しています。 「2)グルタミン酸とグルタミンを介したアンモニアの ...
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カルバモイルリン酸シンテターゼⅡ(CPSⅡ)による反応
グルタミン+HCO3-+2ATP→カルバモイルリン酸+グルタミン酸+2ADP+2Pi
カルバモイルリン酸から「カルバモイルアスパラギン酸」の合成
生成したカルバモイルリン酸には、
アスパラギン酸カルバモイルトランスフェラーゼ(ACTアーゼ)という酵素によって、アスパラギン酸が付加されてカルバモイルアスパラギン酸が生じます。
アスパラギン酸カルバモイルトランスフェラーゼ(ACTアーゼ)による反応は、最終産物であるUTPやCTPなどのピリミジンヌクレオチドによってフィードバック抑制されます(大腸菌)。
※逆にATPやGTPなどのプリンヌクレオチドが多く存在すると、この反応は促進されます。
※真核生物では、ACTアーゼの反応はフィードバック抑制されず、カルバモイルリン酸シンテターゼⅡ(CPSⅡ)の活性が調節されているので注意が必要です。
アスパラギン酸カルバモイルトランスフェラーゼ(ACTアーゼ)による反応
カルバモイルリン酸+アスパラギン酸→カルバモイルアスパラギン酸+Pi
カルバモイルアスパラギン酸から「オロト酸」の合成
カルバモイルアスパラギン酸は、その後環化と酸化を受けて、オロト酸へと変換されます。
メモ
※真核生物では、CAD (Carbamoyl-phosphate Synthetase 2, Aspartate Transcarbamoylase, and Dihydroorotase)と呼ばれる「多機能タンパク質」が、
・カルバモイルリン酸の生成
・カルバモイルアスパラギン酸の生成
・ジヒドロオロト酸(カルバモイルアスパラギン酸が環化されたもの)の生成
の3つの連続した反応を触媒しています。
オロト酸から「UMP(ウリジル酸)」の合成
オロト酸は、
オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼという酵素によって、ホスホリボシル二リン酸(PRPP)と反応し、OMP(オロチジル酸)へと変換され、その後脱炭酸されることでUMP(ウリジル酸)へと変換されます。
オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼによる反応
オロト酸+PRPP→OMP(オロチジル酸)+PPi
OMPデカルボキシラーゼによる反応
OMP(オロチジル酸)+H2O→UMP(ウリジル酸)+HCO3-
メモ
UMPを合成するための材料・・・
・グルタミン
・アスパラギン酸
・CO2
UMPから「CTP」への変換
UMP(ウリジル酸)はウリジル酸キナーゼの作用によって、UDPに変換されたのち、ヌクレオシド二リン酸キナーゼの作用によってUTPに変換されます。
UMPからUTPの合成
UMP→UDP→UTP
UTPは、CTPシンテターゼという酵素によって、グルタミン由来のアミノ基が付加されてCTPへと変換されます。
UTPからCTPの合成
UTP+グルタミン+ATP→CTP+グルタミン酸+ADP+Pi
ピリミジンヌクレオチドのde novo合成についてはこれで以上です。
次は「4)ピリミジンヌクレオチドの再合成(サルベージ経路)」について学んでいきましょう。
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4)ピリミジンヌクレオチドの再合成(サルベージ経路)
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