タンパク質の定量法(BCA法、Bradford法、Lowry法)
タンパク質の濃度測定の方法には、BCA法、Bradford法(ブラッドフォード法)、Lowry法(ローリー法)などがあります。
BCA法やLowry法の原理を理解するために、まずビウレット反応について理解していることが望まれます。
ビウレット反応とは、アルカリ性条件下で3つ以上のアミノ酸からなるペプチド(あるいはタンパク質)が二価の銅イオン(Cu(Ⅱ))と錯体(キレート)を形成することによって、二価の銅イオン(Cu2+)が一価の銅イオン(Cu(Ⅰ))へと還元され、溶液の色が赤紫色に呈色する反応のことをいいます。
このときの赤紫色に呈色する色の濃さは、タンパク質の濃度(ペプチド結合の数)に依存しますので、この色の濃さ(540nmの吸光度)を測定することでタンパク質の濃度を測定することができます。
タンパク質の定量に用いられるBCA法やLowry法(ローリー法)は、このビウレット反応を応用したものになります。
BCA法
BCA法はタンパク質の定量においてよく使用されている手法の一つで、SDSやTriton Xなどの界面活性剤が含まれていても使用できるというのが大きな特徴となっています。
BCA法では、「①タンパク質による二価の銅イオン(Cu(Ⅱ))からCu(Ⅰ)への還元」と「②ビシンコニン酸(BCA)とCu(Ⅰ)の錯体形成」の2つの段階の反応からなっています。
BCA法では、ビウレット反応によってタンパク質中のペプチド結合と二価の銅イオン(Cu(Ⅱ))が錯体を形成することによって、タンパク質の濃度依存的に一価の銅イオン(Cu(Ⅰ))が生成します。
この状態でも薄い青色を呈しますが、BCA法では、より検出感度を高くするためにビシンコニン酸(BCA)を添加します。
2分子のビシンコニン酸(BCA)は一価の銅イオン(Cu(Ⅰ))と錯体を形成することによって、562 nmに吸収極大をもつ赤紫色〜青紫色の錯体を形成します。
そのため、マイクロプレートリーダー(あるいは分光光度計)を用いて560nm付近の吸光度を測定することで、未知サンプルのタンパク質の濃度を測定することができます。
※実際には、BSA(Bovine serum albumin:ウシ血清アルブミン)などを段階希釈した濃度既知のスタンダードサンプルも同時に560nm付近の吸光度を測定し、タンパク質濃度と吸光度の関係を示す検量線を作成することによって、未知サンプル中のタンパク質濃度を求めることができます。
ちなみに、BCA法は、還元反応によってタンパク質の定量を行うという特徴があることから、EDTAなどのキレート試薬や、ジチオスレイトール(DTT)や2-メルカプトエタノールなどの還元剤などが含まれていると反応が阻害されるということも覚えておきましょう。
Bradford法(ブラッドフォード法)
Bradford法(ブラッドフォード法)では、Commassie brilliant blue G-250という色素が酸性条件下でタンパク質の塩基性アミノ酸や芳香族アミノ酸と結合して、吸収極大が465 nmから595 nm(青色)へと変化することを利用して、未知サンプルのタンパク質の濃度を測定することができます。
BCA法やLowry法(ローリー法)とは違って、ビウレット反応による還元反応を行わないため、EDTAなどのキレート試薬や、ジチオスレイトール(DTT)や2-メルカプトエタノールなどの還元剤などの影響をほとんど受けないという特徴があります。
また、操作が非常に簡便であることからタンパク質の定量においてよく使用されている手法の一つとなっていますが、一方で、界面活性剤の影響を受けやすいということも覚えておきましょう。
Lowry法(ローリー法)
Lowry法(ローリー法)では、「①タンパク質による二価の銅イオン(Cu(Ⅱ))からCu(Ⅰ)への還元」と「②Cu(Ⅰ)によるFolin試薬(リンモリブデン酸とタングステン酸の複合体)の還元」の2つの段階の反応からなっています。
Lowry法では、BCA法と同様に、まずビウレット反応によってタンパク質中のペプチド結合と二価の銅イオン(Cu(Ⅱ))が錯体を形成することによって、タンパク質の濃度依存的に一価の銅イオン(Cu(Ⅰ))が生成します。
この状態でも薄い青色を呈しますが、Lowry法では、より検出感度を高くするためにFolin試薬(リンモリブデン酸とリンタングステン酸の複合体)を添加します。
Folin試薬は還元されると750 nm付近に吸収極大をもつ青色を呈色します。
そのため、マイクロプレートリーダーを用いて750nm付近の吸光度を測定することで、未知サンプルのタンパク質の濃度を測定することができます。
Lowry法(ローリー法)は、EDTAなどのキレート試薬や、ジチオスレイトール(DTT)や2-メルカプトエタノールなどの還元剤などによる阻害を受けるほか、界面活性剤によっても阻害を受ける反応になります。
※Lowry法は、界面活性剤などの変性剤によって阻害を受けることから、Lowry法(ローリー法)を改良してBCA法が生み出されました。
タンパク質の定量法(BCA法、Bradford法、Lowry法)についてはこれで以上です。
次は「1)カラムクロマトグラフィーの原理と概要」について学んでいきましょう。
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