第39回管理栄養士国家試験(79問目)
基礎栄養学
第39回【79問目】鉄の吸収と体内利用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
⑴ 鉄の吸収は、体内鉄貯蔵量の影響を受けない。
⑵ 非ヘム鉄は、Fe3+ として吸収される。
⑶ トランスフェリンは、鉄の血中輸送を行う。
⑷ 貯蔵鉄は、主にヘモグロビンとして蓄えられる。
⑸ 赤血球の破壊で遊離した鉄は、再利用されない。
第39回【79問目】鉄の吸収と体内利用に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(3) トランスフェリンは、鉄の血中輸送を行う。 です!


鉄の生理作用をしろう!
体内の鉄に量は約4g程度と言われています。
生理作用として知られているのは主に下の3つであります!
- 機能鉄:体内の鉄の約80%が機能鉄である。構成成分はヘモグロビンやミオグロビン、シトクロムで構成されている。
- 貯蔵鉄:構成成分は主にフェリチンや少量はヘモシデリンとして肝臓、脾臓、骨髄や血清等に蓄えられている。
- 運送鉄:鉄たんぱく質の形で運搬されるトランスフェリンが構成成分である。
第39回【79問目】鉄の吸収と体内利用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) 鉄の吸収は、体内鉄貯蔵量の影響を受けない。
体内の 貯蔵鉄(フェリチンやヘモシデリン)が不足しているときは、吸収率が上がり、
逆に貯蔵鉄が十分に貯蔵されているときは、吸収率が下がるように調整されます。
鉄は、過剰に摂取すると体に有害な影響を及ぼす可能性があるため、その吸収は厳密にコントロールされています。
✖️(2) 非ヘム鉄は、Fe3+ として吸収される。
ヘム鉄と非ヘム鉄
ヘム鉄 :Fe2+(二価鉄)を多く含む
ヘム鉄は、動物性食品に多く含まれています。特に、肉類や魚の内臓、赤身の肉、レバーなどに豊富です。
- 特徴: 血液中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンといった、タンパク質と結合した状態で存在します。このため、消化管での吸収効率が非常に高いのが特徴です。
- 吸収率: 吸収率は約15~25%と高く、体内に効率よく取り込まれます。
- 吸収への影響: 他の食品成分(ビタミンCや食物繊維など)の影響をほとんど受けません。
非ヘム鉄 :Fe2+(二価鉄)Fe3+(三価鉄)を両方含む
由来: 非ヘム鉄は、植物性食品に多く含まれています。例えば、ほうれん草、大豆、ひじき、穀物などです。
- 特徴:タンパク質と結合していない状態で存在します。
- 吸収率: 吸収率は約2~5%と、ヘム鉄に比べてかなり低いです。
- 吸収への影響: 吸収にはビタミンCが不可欠です。
ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を促進します。
また、柑橘類や梅干しに入っているクエン酸も非ヘム鉄の吸収を促進します。(キレート作用:酸化防止効果)
逆に、タンニン(お茶やコーヒーに含まれる)や食物繊維、フィチン酸などは吸収を阻害することがあります。
ココがポイント
非ヘム鉄は、小腸に吸収される前にFe2+(二価鉄)に形を変える必要があります。
理由として吸収される小腸は弱アルカリ環境であり、Fe2+(二価鉄)はFe3+(三価鉄)に比べて、アルカリ側で溶解度が高いため。
つまり、小腸とFe2+(二価鉄)は同じアルカリ性を持つため似たもの同士でくっつきやすい!
野菜や穀類に多く含まれる非ヘム鉄は、Fe3+(三価鉄)の状態で存在します。
小腸の吸収細胞で吸収されるためには、Fe2+(二価鉄)に還元される必要があります。(ポイントで説明)
一方、肉や魚に含まれるヘム鉄は、そのままの形で効率よく吸収されます。
⭕️3. トランスフェリンは、鉄の血中輸送を行う。

1. 運送鉄:トランスフェリン
✔️作用
トランスフェリン:食事から吸収された鉄は、まず血液中のトランスフェリンと結合します。
トランスフェリンは、鉄を必要としている全身の細胞、特に赤血球が作られる骨髄まで安全に運ぶ「鉄の運送屋」です。
2. 機能鉄:ヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロム
✔️作用
トランスフェリンによって運ばれた鉄は、各細胞で利用されます。
ヘモグロビン(約80%): 赤血球内に存在し、肺から取り込んだ酸素を全身の細胞に運ぶ「酸素運搬体」です。
ヘモグロビン中の鉄が酸素と結合することで、この機能が成り立っています。鉄が不足するとヘモグロビンが十分に作られず、貧血の原因となります。
ミオグロビン(約20%): 筋肉に鉄を供給し、筋肉内で酸素を貯蔵・供給する役割を担います。よって筋肉が効率よく活動できます。
シトクロム(約数%): 細胞のミトコンドリアで、エネルギー(ATP)を生み出すために重要な役割を果たします。
電子伝達系の一部として、酸素を使ってエネルギーを作り出す際に不可欠なタンパク質です。
3. 貯蔵鉄:フェリチン、ヘモジデリン
✔️作用
運ばれてきた鉄のうち、すぐに使われない分は、体内に貯蔵されます。
フェリチン: 肝臓や脾臓などで、鉄を貯蔵する「鉄の貯蔵」です。
鉄が過剰にならないよう、バランスを考えて蓄えます。体内の鉄貯蔵量を反映するため、重要な指標とされています。
ヘモジデリン: フェリチンが分解された後などにできる、安定した形で鉄を貯蔵する複合体です。
ほとんどフェリチンになり貯蔵されていますが、過剰な鉄が長期間にわたって蓄積された場合に作成されます。
✖️4. 貯蔵鉄は、主にヘモグロビンとして蓄えられる。
(3)で解説をしています。
体内に貯蔵される鉄は、主にフェリチンやヘモシデリンというタンパク質と結合した形です。
✖️5. 赤血球の破壊で遊離した鉄は、再利用されない。
正解は・・
古い赤血球から出た鉄は、再利用されます。
鉄は閉鎖的に体内循環している?!
鉄は5つのステップで体内循環をしています。
step
1血清鉄として運搬
食事から吸収された鉄、または体内の貯蔵鉄は、トランスフェリンと結合して血液中を移動します。
この状態の鉄を血清鉄といい、全身の組織に運ばれる準備が整った状態です。
step
2骨髄での赤血球合成
トランスフェリンによって運ばれた鉄は、骨髄に届けられます。
骨髄では、鉄を材料としてヘモグロビンが合成され、その後、酸素を運ぶ赤血球が作られます。
このプロセスは、貧血の診断において非常に重要な部分と「なっています。
step
3赤血球の利用
成熟した赤血球は、血液中に入って全身を巡ります。
ヘモグロビン中の鉄が酸素と結合し、肺から取り込んだ酸素を体の隅々の細胞に効率よく届け、生命活動を支えます。(機能鉄として働いている)
この酸素運搬の役割は、赤血球が体内を循環している間、約120日間続きます。
step
4脾臓や肝臓での赤血球破壊
120日間働いきを終えた赤血球は、主に脾臓や肝臓で破壊されます。
このとき、赤血球内のヘモグロビンも分解され、鉄がタンパク質から分離されます。

step
5回収・再利用
赤血球から分離された鉄は、再びトランスフェリンに結合し、血清鉄として血液中に戻されます。
その後、骨髄で新しい赤血球の合成に再利用されるか、フェリチンとして肝臓などに貯蔵されます。
つまり機能鉄になるか貯蔵鉄になるよ!
このように、体内の鉄は約95%が効率よくリサイクルされるため、日々の鉄の摂取量は比較的少量で済みます。

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