管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【69問目】管腔内消化の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

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第39回管理栄養士国家試験(69問目)

基礎栄養学

第39回【69問目】管腔内消化の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

⑴ 腸相は、胃に食物が入ることによって起こる応答である。

⑵ 交感神経は、消化液の分泌を促進する。

⑶ 副交感神経は、消化管の運動を抑制する。

⑷ ガストリンは、胃酸分泌を抑制する。

⑸ コレシストキニンは、胆嚢の収縮を促進する。

第39回【69問目】管腔内消化の調節に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(5) コレシストキニンは、胆嚢の収縮を促進する です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【69問目】管腔内消化の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️(1) 腸相は、胃に食物が入ることによって起こる応答である。

脳相、胃相、腸相は、消化吸収という一つのゴールに向かって、脳、胃、腸が連携プレーをしているイメージです。

定義

  • 脳相(Cephalic Phase): 食べ物の視覚、嗅覚、味覚、聴覚、思考が刺激となり、摂食前に消化管の準備が始まる段階
  • 胃相(Gastric Phase): 食べ物が胃に到達し、胃壁が伸展したり、消化生成物(ペプチド)が胃壁細胞を刺激したりすることで、胃の機能が本格的に活発化する段階。
  • 腸相(Intestinal Phase): 胃から十二指腸に食塊(糜粥)が送り出され、小腸での消化吸収が中心となる段階。

脳相:消化のはじまりは、あなたの「脳」から!

「お腹空いたなぁ」「今日の夜ごはんは何にしよう?」

そう考えただけで、じゅわっと唾液が出てきたり、お腹が「グー」と鳴ったりした経験はありませんか?実はこれ、あなたの脳が消化をスタートさせているサインなんです!

脳相は、まさに「食べ物の予習期間」
食べ物を見る、匂いを嗅ぐ、考えるだけで、脳が迷走神経を通じて胃に「まもなく食べ物が入ってきますよ~!」と準備を促します。このおかげで、食べ物が口に入った瞬間からスムーズに消化が始まるんですよ。

胃相:胃の中は、食べ物の「調理場」!

おいしいご飯を一口食べると、いよいよ消化の本番が始まります。口の中で噛み砕かれた食べ物が胃に到着すると、胃が「さあ、仕事の時間だ!」と活発に動き出します。

この胃相では、食べ物が胃に入ってきた刺激を受けて、胃酸や消化酵素がたくさん分泌されます。
さらに、ガストリンというホルモンが分泌されて、胃の動きをさらにパワフルにしてくれるんです。

食べ物をどろどろに溶かすことで、次のステップである小腸での消化を助ける大切な役割を担っています。

メカニズム

① 胃壁の伸展

② ペプチド刺激
迷走神経を介した反射(迷走神経-迷走神経反射)により、胃酸、ペプシノーゲンの分泌が促進される。

③ G細胞からガストリンが分泌される。
ガストリンは、壁細胞に直接作用、またはヒスタミンを介して胃酸分泌を強力に促進する。

④胃の運動も促進する。

腸相:栄養を吸収する「最終ステージ」!

胃でドロドロになった食べ物が小腸に送られると、いよいよ消化のクライマックス!これが腸相です。

小腸は、送られてきた食べ物の「質」をチェックします。
脂質が多いな、酸っぱいな、と感じると、今度は小腸が胃に「もう十分だから、ちょっと休んでてね」とブレーキをかけます。

そして同時に、膵臓や胆嚢には「仕事ですよ!」と合図を送り、消化酵素や胆汁をたっぷり出させて、栄養の吸収をスタートさせます。
このとき活躍するのがセクレチンやコレシストキニン(CCK)というホルモン。彼らがチームを組んで、消化吸収をしっかりサポートしてくれるんです。

まとめ

消化の3相 キーとなる神経/ホルモン 主要な働き 出題傾向
脳相 迷走神経 摂食前の消化準備(唾液・胃液分泌) 消化が始まるタイミング、迷走神経の役割
胃相 ガストリン、迷走神経 胃酸・ペプシノーゲン分泌、胃運動の促進 ガストリンの分泌刺激と作用(胃酸分泌促進)
腸相 セクレチン、CCK 胃機能の抑制、膵液・胆汁分泌の促進 各ホルモンの分泌刺激、標的、生理作用(特にCCKとセクレチンの違い)

✖️(2) 交感神経は、消化液の分泌を促進する。

交感神経は、体を活動させるための神経で、消化活動は抑制します。消化液の分泌や消化管の運動を促進するのは、副交感神経の主な働きです。

自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があります。

ポイント

  • 交感神経が優位になると、心拍数が上がったり、血管が収縮したりして、消化管への血流は低下し、 消化は後回しになります。
    胃腸への血流が減り、消化液の分泌や胃腸の動きが抑えられます
    その結果、「お腹がすかない」と感じたり、緊張するとお腹が痛くなったりすることがあります。
  • 副交感神経が優位になると、消化管の血流が増加し、消化液の分泌や消化管の運動が促進され、消化が最優先されます。胃腸への血流が増え、消化液がたくさん分泌され、胃腸の動きが活発になります。これにより、食べたものの消化吸収が効率よく行われます。
    これが、「食後に眠くなる」主な理由の一つです。

✖️(3) 副交感神経は、消化管の運動を抑制する。

これは上記(2)の解説と逆です。副交感神経は、消化管の運動を促進する働きがあります。

✖️(4) ガストリンは、胃酸分泌を抑制する。

ガストリンは、胃酸の分泌を促進するホルモンです。抑制する働きはありません。

ガストリンは、胃の幽門部にあるG細胞から分泌される消化管ホルモンです。食物が胃に入ると分泌が促進され、胃の壁細胞に作用して胃酸の分泌を促し、消化を助けます。また、胃の運動も活発にする働きがあります。

⭕️(5) コレシストキニンは、胆嚢の収縮を促進する。

コレシストキニンは、脂肪が十二指腸に入ってきたときに分泌され、胆嚢を収縮させて胆汁を分泌させるホルモンです。

コレシストキニンとは

コレシストキニン(CCK)は、脂肪やアミノ酸が十二指腸に入ってきたときに、十二指腸や空腸の粘膜から分泌されます。このホルモンは、胆嚢を収縮させて胆汁(脂肪の乳化を助ける)を分泌させるとともに、膵臓に働きかけて消化酵素(リパーゼ、アミラーゼなど)の分泌を促します。
また、脳に作用して食欲を抑制する働きも持っています。

消化管の働きは、自律神経と様々なホルモンが連携して、非常に精巧に調節されています。これらのメカニズムを理解することは、消化器系の病態や栄養管理を学ぶ上で非常に重要です。

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