第39回管理栄養士国家試験(60問目)
食べ物と健康
第39回【60問目】食品の加工法に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) ブランチングは、紅茶製造における茶葉の発酵に用いられる。
(2) 電気透析は、食塩の製造に用いられる。
(3) 噴霧乾燥は、するめの製造に用いられる。
(4) 逆浸透は、ビール製造における酵母の除去に用いられる。
(5) 水素添加は、バターの製造に用いられる。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【60問目】食品の加工法に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(2) 電気透析は、食塩の製造に用いられる。 です!


第39回【60問目】食品の加工法に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) ブランチングは、紅茶製造における茶葉の発酵に用いられる。
ブランチング処置とは
ブランチング(Blanching)処置とは、食品を熱湯や蒸気で短時間加熱した後、急速に冷却する前処理のことです。
主に野菜や果物などの植物性食品に対して行われ、冷凍保存や缶詰、乾燥食品などの加工を行う前段階で非常に重要な工程となります。
ブランチング処置の目的・効果って?
- 酵素の失活
:野菜や果物に含まれるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)などの酵素は、食品の変色(褐変)、風味の劣化、栄養素の破壊などを引き起こします。
ブランチングによりこれらの酵素を失活させることで、品質の低下を防ぎ、長期保存を可能にします。 - 微生物の減少
- 変色防止・色沢の保持
- 組織の軟化・可塑性の向上
- 風味の安定
- 洗浄効果
紅茶の発酵に用いられるのは、茶葉を揉んだ後に酸化酵素を働かせる工程です。
一方、紅茶製造における「発酵」とは、茶葉に含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素が、カテキンなどのポリフェノール類を酸化させる酵素的褐変反応を指します。緑茶ではこの発酵を止めるために蒸す工程が入ります。
⭕️(2) 電気透析は、食塩の製造に用いられる。
電気透析は、海水を濃縮して食塩を作る際に使われる技術の一つです。
電気透析とは
電気透析は、イオン交換膜を利用して、電気の力で水中のイオン(この場合、ナトリウムイオンと塩化物イオン)を分離・濃縮する技術です。
海水から食塩を製造する際には、海水を濃縮する工程でこの電気透析が利用されることがあります。
これにより、効率的に塩分を回収し、食塩を生産することが可能になります。
✖️(3) 噴霧乾燥は、するめの製造に用いられる。
噴霧乾燥(ふんむかんそう)/スプレードライとは
噴霧乾燥(ふんむかんそう)は、英語では「Spray Drying(スプレードライ)」と呼ばれ、液体状の食品(溶液、懸濁液、乳化液など)を微細な液滴として熱風中に噴霧し、瞬時に水分を蒸発させて粉末を得る乾燥方法です。
目的・効果(メリット)
- 品質劣化の抑制(特に熱に弱い成分)
- 瞬間的に乾燥するため、熱に弱い成分(ビタミン、香気成分など)の熱による分解や変質を最小限に抑えることができます。これは他の乾燥方法(例:熱風乾燥)に比べて大きな利点です。
- 均一な粉末の製造
- 溶解性の向上
- 連続生産・大量生産が可能
- 衛生的
・保存性の向上
デメリット・注意点
- 装置が大型で高価
- エネルギーコスト
- 風味や香気の揮散
- 賦形剤の使用
主な利用例(食品分野)
- 乳製品: 粉ミルク、クリーミングパウダー
- 飲料: インスタントコーヒー、粉末茶、粉末ジュース
- 調味料: 粉末醤油、粉末スープ、粉末だし
- 香料: 粉末香料
- 健康食品: プロポリス抽出液、酵素、乳酸菌の乾燥粉末
- その他: 卵白粉、ゼラチン粉末など
一方、するめはイカを洗浄・開いて内臓を取り除き、天日干しや機械乾燥で水分をゆっくりと抜いて作られる、伝統的な水産加工品です。
✖️(4) 逆浸透は、ビール製造における酵母の除去に用いられる。
ポイント
逆浸透(RO膜)は、非常に微細な孔を持つ膜で、主に水から不純物を取り除く(海水淡水化など)のに使われます。
つまり、水分子は透過させるが、それより大きな不純物(イオン、微生物など)は透過させない特性を持つ半透膜です。主に浄水器や海水淡水化プラントなどで使用されます。
ビール製造における酵母の除去には、珪藻土ろ過や精密ろ過などの「ろ過」技術、あるいは「遠心分離」が一般的に用いられます。
✖️(5) 水素添加は、バターの製造に用いられる。
水素添加は、液体の油を固形にするために行われる加工で、主にマーガリンやショートニングの製造に用いられます。バターは牛乳から作られるため、水素添加は行いません。
水素添加(硬化油製造)は、不飽和脂肪酸の二重結合に水素を付加することで、融点を上げて液体状の油脂を固形化する加工法です。これにより、マーガリンやショートニングのように常温で固形の油脂を製造します。
バターは牛乳の乳脂肪を分離・凝集させて作る乳製品であり、水素添加の工程は含まれません。

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