第39回管理栄養士国家試験(30問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【30問目】腎・尿路系の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) 1個の腎臓には、約1万個のネフロンがある。
(2) ヘンレ係蹄は、遠位尿細管と集合管との間に存在する。
(3) 近位尿細管では、グルコースが再吸収される。
(4) 健常成人の1日当たりの糸球体濾過量は、約 1. 5 L である。
(5) 健常成人の尿比重は、1. 100 以上に調節されている。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【30問目】腎・尿路系の構造と機能に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(3) 近位尿細管では、グルコースが再吸収される。 です!


【30問目】腎・尿路系の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) 1個の腎臓には、約1万個のネフロンがある。
腎臓の中には、尿を作る基本的な単位である「ネフロン」が、なんと片方の腎臓だけでも約100万個も詰まっています。
1万個では全然足りませんね!
ネフロンは、腎小体(糸球体とボーマン嚢)と尿細管(近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管)から構成される、腎臓の構造と機能の最小単位です。
成人では、1つの腎臓に約100万個ものネフロンが存在し、両方の腎臓で合わせて約200万個が働いています。この膨大な数のネフロンが連携して、血液の濾過、必要な物質の再吸収、不要な物質の分泌を行い、尿を生成しています。
✖️(2) ヘンレ係蹄は、遠位尿細管と集合管との間に存在する。
ネフロンの構造は、血液を濾過する場所(糸球体)の後に、尿細管が「近位尿細管」→「ヘンレ係蹄」→「遠位尿細管」と続いています。集合管は遠位尿細管のさらに先にあるので、記述は順番が違います。
ネフロンにおける尿の生成過程は、各部分が連携して行われます。
ポイント
糸球体とボーマン嚢:血液が濾過され、原尿が作られる。
近位尿細管:原尿中の大部分の物質(水、グルコース、アミノ酸、電解質など)が再吸収される。
ヘンレ係蹄:尿の濃縮に重要な役割を果たし、水の再吸収(下行脚)や電解質の再吸収(上行脚)が行われる。
遠位尿細管:電解質や水の再吸収が細かく調節される。
集合管:遠位尿細管からの尿が集められ、さらに水の再吸収などが調節されて最終的な尿となる。
したがって、ヘンレ係蹄は近位尿細管と遠位尿細管の間に位置しており、遠位尿細管と集合管の間ではありません。
◯(3) 近位尿細管では、グルコースが再吸収される。
糸球体で濾過されて原尿に含まれたブドウ糖(グルコース)は、体にとって大切なエネルギー源なので、ほとんどが尿細管の最初の部分である近位尿細管で血液中に戻されます(再吸収されます)。
糸球体で濾過された原尿には、水や電解質の他に、グルコースやアミノ酸などの体に必要な物質も含まれています。
これらの物質が尿として体外に排出されてしまわないように、尿細管で選択的に再吸収されます。
特に、グルコースとアミノ酸は、近位尿細管においてほぼ100%が能動輸送によって再吸収されます。健常な状態であれば、尿中にグルコースはほとんど含まれません。
しかし、糖尿病などで血糖値が高くなりすぎると、近位尿細管のグルコース再吸収能力(閾値)を超えてしまい、尿中にグルコースが排泄される「尿糖」が見られるようになります。
✖️(4) 健常成人の1日当たりの糸球体濾過量は、約 1.5 L である。
糸球体濾過量(GFR)は、腎臓が1日に濾過する血液の量で、なんと約150〜180リットルもの膨大な量になります。1.5Lでは少なすぎますね。実際に尿として体から出るのは、そのごく一部です。
糸球体濾過量(GFR: Glomerular Filtration Rate)は、腎臓が1分間にどのくらいの血液を濾過できるかを示す指標で、腎機能の評価に非常に重要です。
健常成人では、1日あたり約150〜180 L(1分あたり約100〜120 mL)もの原尿が生成されます。
この原尿の大部分(約99%)は尿細管で再吸収され、最終的に1日あたり約1〜1.5 Lの尿として体外に排出されます。1.5Lという値は、1日あたりの「尿量」に相当するものであり、糸球体濾過量とは大きく異なります。
✖️(5) 健常成人の尿比重は、1.100 以上に調節されている。
尿比重は尿の濃さを示す値ですが、健常な成人の尿比重は、体調や水分摂取量によって変わりますが、だいたい1.005〜1.030くらいの範囲です。1.100以上というのは、非常に異常な高値です。
尿比重は、尿中の溶質(尿素、塩分など)の濃度を示す指標で、腎臓の尿濃縮能を反映します。
健常な成人の尿比重は、飲水量や発汗量によって変動しますが、通常は1.005~1.030程度の範囲に調節されています。
1.100以上という尿比重は極めて高く、通常の生理的範囲を大きく逸脱しており、脱水や特定の病態でしか見られないような異常な値です。
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