第39回管理栄養士国家試験(29問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【29問目】循環器疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) 心室細動では、心拍出量が増加する。
(2) 深部静脈血栓症では、急性肺塞栓を起こす。
(3) 右心不全では、肺うっ血がみられる。
(4) 心不全では、血中 BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)値が低下する。
(5) 重度の貧血では、低心拍出性心不全がみられる。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【29問目】循環器疾患に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(2) 深部静脈血栓症では、急性肺塞栓を起こす。 です!


【29問目】循環器疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) 心室細動では、心拍出量が増加する。
心室細動は、心臓のポンプ役である心室がバラバラに震えて、血液を全身に送り出せなくなる非常に危険な状態です。この状態では、全身に血液がほとんど送られないので、心拍出量(心臓が1回に送り出す血液量)はほぼゼロになります。
心室細動(Ventricular Fibrillation: VF)は、心室の心筋が無秩序に興奮し、不規則に細かく震えるだけで、有効な収縮が行われない致死性の不整脈です。
心室が正常に収縮できないため、血液を全身に送り出すポンプ機能が失われ、結果として心拍出量は著しく低下し、ほぼゼロとなります。これにより、全身の臓器への血流が途絶え、意識消失、心停止に至ります。緊急の除細動(電気ショック)が必要です。
◯(2) 深部静脈血栓症では、急性肺塞栓を起こす。
足の深い部分の静脈に血の塊(血栓)ができる「深部静脈血栓症」が起きると、その血栓が剥がれて肺の血管に詰まってしまうことがあります。これが「急性肺塞栓」です。
深部静脈血栓症
深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis: DVT)は、主に下肢の深部静脈に血栓が形成される病態です。
この血栓が、何らかの拍子に血管壁から剥がれ落ちると、血液の流れに乗って心臓を通過し、肺動脈へと到達して血管を閉塞させることがあります。
これが「急性肺塞栓症(Pulmonary Embolism: PE)」です。
PEは突然の呼吸困難や胸痛を引き起こし、重症の場合は死に至ることもある非常に危険な合併症です。DVTはPEの主要な原因の一つであり、両者を合わせて静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ぶこともあります。
✖️(3) 右心不全では、肺うっ血がみられる。
右心不全は、全身から心臓に戻る静脈血がうっ滞しています。
そのため、血液が肺にたまる(肺うっ血)のではなく、全身にたまって足のむくみなどが起こりやすいです。肺うっ血は左心不全で見られます。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。
右心不全と左心不全の違い
右心不全:右心室のポンプ機能が低下し、全身から心臓に戻る静脈血がうっ滞します。これにより、全身の臓器(肝臓、腎臓など)や下肢に血液がたまり、肝腫大、腹水、下肢の浮腫(むくみ)などが特徴的に見られます。
左心不全:左心室のポンプ機能が低下し、肺から左心房に戻る血液がうっ滞します。その結果、肺に血液がたまり(肺うっ血)、呼吸困難や咳などの症状を引き起こします。
したがって、肺うっ血は主に左心不全の症状です。
✖️(4) 心不全では、血中 BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)値が低下する。
心不全になると、心臓に負担がかかるため、心臓はBNPというホルモンをたくさん出します。このBNPは心臓を守ろうとする働きがあるので、心不全では血液中のBNPの値は上昇します。
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)
BNPは心臓の心室から分泌されるホルモンで、心臓への負担(特に心不全)の有無や程度を示す重要な指標です。
1. 作用
体内の水分やナトリウムの排泄を促し(利尿・ナトリウム利尿作用)、血管を広げて血圧を下げる(血管拡張作用)ことで、心臓の負担を和らげようとします。
2. 臨床的意義
心不全の診断・重症度評価に最も広く用いられます。
BNPの値が高いほど、心不全である可能性が高く、また重症であると考えられます。
治療効果の判定や予後予測にも利用されます。
3. 高値を示す主な病態
心不全(最も重要)
心筋梗塞、弁膜症などの心疾患
腎不全(排泄が低下するため)
心臓が弱って機能が低下し、心室に過剰な負担がかかると、BNPの分泌量が増加します。

BNPは、ナトリウム利尿作用(尿へのナトリウム排泄を促進する作用)や血管拡張作用を持ち、体内の水分や塩分を排泄することで、心臓の負担を軽減しようと働くんだね!
そのため、心不全の診断や重症度評価、治療効果のモニタリングにおいて、血中BNP値は非常に重要な指標であり、心不全時には「上昇」します。
✖️(5) 重度の貧血では、低心拍出性心不全がみられる。
重度の貧血では、血液中の酸素が少ないため、全身に十分な酸素を送ろうとして、心臓がいつもよりたくさん血液を送り出そうと頑張ります。その結果、心臓に負担がかかり、「高心拍出性心不全」という状態になることがあります。
貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が低下し、酸素運搬能力が低下した状態です。
重度の貧血では、体が酸素不足になるのを補うために、心臓は拍動数を増やしたり、1回に送り出す血液量(1回拍出量)を増やしたりして、全身に酸素を供給しようとします。
これにより、心拍出量はむしろ「増加」します。
この状態が長く続くと、心臓に過大な負担がかかり、結果として心不全を発症することがあります。
このような心不全は、心拍出量が正常あるいは増加しているにもかかわらず、全身の代謝需要に見合わないために起こるため、「高心拍出性心不全」と呼ばれます。
低心拍出性心不全は、心臓のポンプ機能そのものが低下している場合を指します。
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