第39回管理栄養士国家試験(32問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【32問目】甲状腺・副甲状腺の疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ
(1) バセドウ病では、血中 LDL コレステロール値が上昇する。
(2) バセドウ病では、血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が上昇する。
(3) 橋本病では、基礎代謝が亢進する。
(4) 副甲状腺機能亢進症では、腎臓におけるカルシウム再吸収が抑制される。
(5) 副甲状腺機能低下症では、テタニーが起こる。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【32問目】甲状腺・副甲状腺の疾患に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(5) 副甲状腺機能低下症では、テタニーが起こる。 です!


【32問目】甲状腺・副甲状腺の疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ
✖️(1) バセドウ病では、血中 LDL コレステロール値が上昇する。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンがたくさん出すぎる病気で、体の代謝がすごく活発になります。
コレステロールも速く分解されるので、血液中のLDLコレステロール値はむしろ低下することが多いです。
バセドウ病は、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンの過剰分泌)の代表的な疾患です。甲状腺ホルモンは、全身の代謝を促進する作用があります。
これには、コレステロールの合成・分解、特にLDL受容体の発現やLDLコレステロールの異化(分解)促進も含まれます。そのため、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病では、LDLコレステロールの分解が促進され、血中LDLコレステロール値は低下する傾向にあります。反対に、甲状腺機能低下症では、LDLコレステロールの分解が滞り、高LDLコレステロール血症をきたすことがあります。
✖️(2) バセドウ病では、血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が上昇する。
甲状腺ホルモンが多すぎるバセドウ病では、脳が「もう十分だよ!」と判断して、甲状腺ホルモンを出すように刺激するホルモン(TSH)の分泌を抑えます。だから、TSHの値は低下します。
甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4、トリヨードサイロニン:T3)の分泌は、視床下部-下垂体-甲状腺のフィードバック機構によって厳密に調節されています。
視床下部-下垂体-甲状腺のフィードバック機構
視床下部から甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌。
↓
下垂体がTRHに反応して甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌。
↓
甲状腺がTSHに反応して甲状腺ホルモンを分泌。
血中の甲状腺ホルモン濃度が高い場合(バセドウ病など)、このフィードバックにより下垂体からのTSH分泌が「抑制」されます。そのため、バセドウ病では血中TSH値は低値を示すのが典型的です。
バセトウ病の症状
症状カテゴリ | 主な症状 |
代謝 | 体重減少 (食欲亢進なのに) |
暑がり、発汗過多 | |
疲労感、倦怠感 | |
下痢、排便回数増加 | |
循環器 | 動悸、頻脈 |
不整脈 (心房細動など) | |
息切れ | |
神経・精神 | 手の震え (振戦) |
イライラ、不安感、落ち着きのなさ | |
不眠 | |
特徴的症状 | 甲状腺腫 (首の腫れ) |
(メルゼブルグの三徴) | 眼球突出 |
頻脈 |
✖️(3) 橋本病では、基礎代謝が亢進する。
橋本病は、甲状腺ホルモンが足りなくなる「甲状腺機能低下症」の主な原因となる病気です。甲状腺ホルモンが少ないと、体のエネルギー消費が落ちるので、基礎代謝は低下します。
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫によって甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンが十分に分泌されなくなる甲状腺機能低下症を最も多く引き起こす疾患です。甲状腺ホルモンは基礎代謝を調節する重要なホルモンであるため、その分泌が低下すると、体のエネルギー消費が抑制され、基礎代謝は「低下」します。症状としては、寒がり、むくみ、体重増加、倦怠感などが現れます。
橋本病の症状
症状カテゴリ | 主な症状 |
代謝 | 体重増加 (食欲変化なし〜低下でも) |
寒がり、冷え性 | |
全身倦怠感、無気力、疲労感 | |
むくみ (特に顔、手足) | |
便秘 | |
皮膚・毛髪 | 皮膚の乾燥、カサつき |
脱毛、髪の毛がパサつく | |
循環器 | 徐脈 (脈が遅くなる) |
心臓肥大 | |
神経・精神 | 記銘力低下、物忘れ |
集中力低下、思考力低下 | |
抑うつ気分、眠気 | |
その他 | 甲状腺腫 (びまん性または結節性) |
声枯れ、かすれ声 | |
月経異常 (過多月経など) | |
筋力低下、こむら返り |
✖️(4) 副甲状腺機能亢進症では、腎臓におけるカルシウム再吸収が抑制される。
副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウムを増やす働きがあります。だから、このホルモンが出すぎると、腎臓でカルシウムが尿に出ていくのを防ぎ、積極的に血液中に戻そう(再吸収促進)とします。
副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌される病態です。PTHは、血中のカルシウム濃度を上昇させる働きがあります。その主な作用は以下の通りです。
副甲状腺機能亢進症
骨からのカルシウム放出を促進(骨吸収促進)
腎臓におけるカルシウムの再吸収を「促進」し、尿中へのカルシウム排泄を抑制
腎臓での活性型ビタミンDの合成を促進し、腸管からのカルシウム吸収を促進
したがって、副甲状腺機能亢進症では、腎臓におけるカルシウム再吸収は「促進」されます。これにより、高カルシウム血症をきたしやすくなります。
⭕️(5) 副甲状腺機能低下症では、テタニーが起こる。
副甲状腺ホルモンが足りなくなる(副甲状腺機能低下症)と、血液中のカルシウムが少なくなってしまいます。カルシウムが少なすぎると、筋肉や神経が異常に興奮しやすくなり、「テタニー」と呼ばれる手足のしびれや筋肉のけいれんが起こります。
副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモンの分泌が低下または欠如する病態です。PTHが不足すると、血中のカルシウム濃度が低下する「低カルシウム血症」をきたします。
カルシウムイオンは、神経や筋肉の興奮性を適切に保つ上で重要な役割を担っています。血中カルシウム濃度が低下すると、神経細胞や筋細胞の膜の興奮性が異常に高まり、手足のしびれ感、口の周りの違和感、そして特徴的な筋肉のけいれん(テタニー:母指内転、手根足根けいれんなど)が起こります。重症の場合には、喉頭けいれんや全身性のけいれん発作を引き起こすこともあります。
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