管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【75問目】たんぱく質・アミノ酸の体内代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。

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第39回管理栄養士国家試験(75問目)

基礎栄養学

第39回【75問目】たんぱく質・アミノ酸の体内代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。

⑴ たんぱく質の摂取量が不足すると、窒素出納が正になる。

⑵ たんぱく質の摂取量が不足すると、ビタミン B6 の必要量が増加する。

⑶ たんぱく質の摂取量が増加すると、尿中尿素量が減少する。

⑷ たんぱく質を過剰に摂取すると、アミノ酸の異化が抑制される。

⑸ エネルギー摂取量が不足すると、たんぱく質の必要量が増加する。

第39回【75問目】たんぱく質・アミノ酸の体内代謝に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(5) エネルギー摂取量が不足すると、たんぱく質の必要量が増加する。 です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【75問目】たんぱく質・アミノ酸の体内代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️⑴ たんぱく質の摂取量が不足すると、窒素出納が正になる。

たんぱく質の摂取が足りないと、体内のたんぱく質が分解されるため、窒素の出入りはマイナスになります。

窒素出納(窒素平衡)は、体内に取り込まれる窒素量(主に食事のたんぱく質由来)と、体外に排出される窒素量(尿や糞便中)のバランスのことです。

正と負の窒素出納とは

正の窒素出納: たんぱく質の摂取量 > 排泄量。成長期や妊娠期など、体たんぱく質が合成されるときにみられます。

負の窒素出納: たんぱく質の摂取量 排泄量たんぱく質の摂取不足、飢餓、病気などで体たんぱく質が分解されるときにみられます。

たんぱく質の摂取量が不足すると、体内のたんぱく質を分解してアミノ酸を補おうとするため、窒素の排出量が増加し、窒素出納は負になります。
したがって、この選択肢は誤りです。

✖️⑵ たんぱく質の摂取量が不足すると、ビタミン B6 の必要量が増加する。

ビタミンB6は、アミノ酸の代謝に不可欠なビタミンです。
たんぱく質の摂取が不足すると、アミノ酸の代謝量も減るため、ビタミンB6の必要量は減少します。

ビタミンB6は、アミノ酸の分解や合成など、たんぱく質・アミノ酸代謝の様々な反応で補酵素として働きます。
アミノ酸代謝が活発(たんぱく質摂取量が増加する)なほど、ビタミンB6の必要量も増えます。

つまり今回のたんぱく質摂取量が不足すると、アミノ酸代謝も低下するため、ビタミンB6の必要量も減少します。よってこの選択肢は誤りです。

✖️⑶ たんぱく質の摂取量が増加すると、尿中尿素量が減少する。

たんぱく質を多く摂ると、余分なアミノ酸が分解され、最終的に尿素として排出されます。したがって、尿中の尿素量は増加します。

過剰なたんぱく質を摂取すると、余ったアミノ酸は分解されます。
この分解過程で生じるアンモニアは、毒性が高いため、肝臓で尿素に変換されます。この尿素は腎臓から尿として排泄されます。

したがって、たんぱく質摂取量が増加すると、尿中尿素量は増加します。この選択肢は誤りです。

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✖️⑷ たんぱく質を過剰に摂取すると、アミノ酸の異化が抑制される。

 たんぱく質を摂りすぎると、余分なアミノ酸は「異化(分解)」されてエネルギー源や他の物質に変換れます。異化は抑制されず、むしろ促進されます。

異化とは、複雑な物質を単純な物質に分解する代謝のことです。

たんぱく質を過剰に摂取すると、体が必要とする量を超えたアミノ酸は、たんぱく質の合成には使われず、分解(異化)されます。
この過程で生じた炭素骨格は、グルコースや脂肪酸に変換され、エネルギー源として利用されたり、体脂肪として蓄えられたりします。したがって、たんぱく質の過剰摂取は異化を抑制するのではなく、促進します。この選択肢は誤りです。

ポイント

・異化(分解): たんぱく質→アミノ酸→尿素(排出)、グルコース/脂肪酸(エネルギー)

・同化(合成): アミノ酸→体たんぱく質

⭕️⑸ エネルギー摂取量が不足すると、たんぱく質の必要量が増加する。

体がエネルギー不足になると、たんぱく質を分解してエネルギーとして使ってしまうため、体たんぱく質を維持するためには、より多くのたんぱく質が必要になります。

私たちの体は、まず①糖質②脂質を主要なエネルギー源として利用します。しかし、エネルギー摂取量が不足すると、体はエネルギーを確保するために、筋肉などの体たんぱく質を分解してアミノ酸を取り出し、それをエネルギー源として利用します。

この現象を『たんぱく質節約作用の消失』といいます。このため、体たんぱく質の分解を防ぎ、維持するためには、通常よりも多くのたんぱく質を摂取する必要があるのです。したがって、この選択肢は正しいです。

ポイント

この問題は、たんぱく質・アミノ酸代謝における「異化」と「同化」のバランス、そしてエネルギーとの関係を理解することが重要です。

ポイント

異化(分解): たんぱく質→アミノ酸→尿素(排出)、グルコース/脂肪酸(エネルギー)

同化(合成): アミノ酸→体たんぱく質

特に、エネルギーが不足するとたんぱく質がエネルギー源として使われてしまう「たんぱく質節約作用」の概念は、栄養学の基本的な知識として非常に重要です。この知識をしっかりと身につけておきましょう。がんばってください!

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