第39回管理栄養士国家試験(55問目)
食べ物と健康
第39回【55問目】食品添加物に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) 無毒性量は、ヒトへの試験をもとに設定される。
(2) 亜硝酸ナトリウムは、着色料として使用される。
(3) ソルビン酸カリウムは、酸化防止剤として使用される。
(4) オルトフェニルフェノールは、防かび剤として使用される。
(5) 甘味料は、一括名での表示が可能である。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【55問目】食品添加物に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(4) オルトフェニルフェノールは、防かび剤として使用される。です!


第39回【55問目】食品添加物に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) 無毒性量は、ヒトへの試験をもとに設定される。
無毒性量(NOAEL)は、主に動物実験のデータをもとに設定されます。ヒトでの試験は、安全性の観点から難しいからです。
無毒性量とは
無毒性量(NOAEL: No Observed Adverse Effect Level)は、化学物質を動物に与え続けたときに、有害な影響が全く認められなかった最大の量を指します。
食品添加物の安全性評価では、まず動物を用いた毒性試験を行い、このNOAELを求めます。
そして、このNOAELに「安全係数(通常100)」を適用して、ヒトが一生涯摂取しても健康に影響がないとされる1日許容摂取量(ADI: Acceptable Daily Intake)が設定されます。ヒトへの直接的な毒性試験は倫理的な問題から行われません。
✖️(2) 亜硝酸ナトリウムは、着色料として使用される。
亜硝酸ナトリウムは、お肉の色をきれいに保ったり、細菌の増殖を抑えたりする発色剤や保存料として使われます。色素を直接つける「着色料」とは目的が違います。
亜硝酸ナトリウムは、ハムやソーセージなどの食肉製品に添加され、肉中のミオグロビンと反応してニトロソミオグロビンを形成し、加熱後もピンク色を安定させます。
この「色を安定させる」作用は「発色作用」と呼ばれ、単に食品に色をつける「着色料」とは機能が区別されます。また、ボツリヌス菌などの細菌の増殖を抑える保存料としての効果も持ちます。
✖️(3) ソルビン酸カリウムは、酸化防止剤として使用される。
ソルビン酸カリウムは、食品のカビや細菌の増殖を抑える「保存料」として使われる添加物です。酸化防止剤ではありません。
ソルビン酸カリウムは、微生物の酵素活性を阻害することで、カビや酵母、細菌の増殖を抑制し、食品の保存性を高めます。
主にチーズ、かまぼこ、ちくわ、パンなどに使用されます。
酸化防止剤は、食品の酸化(油の劣化や色の変化など)を防ぐ目的で使用され、ビタミンCやエリソルビン酸、BHTなどが代表的です。
⭕️(4) オルトフェニルフェノールは、防かび剤として使用される。
オルトフェニルフェノール(OPP)は、輸入された柑橘類などに使われる防カビ剤として知られています。
オルトフェニルフェノール(OPP)やチアベンダゾール(TBZ)、イマザリル(IMZ)などは、収穫後の柑橘類やバナナなどの果実の表面に塗布され、輸送中や保存中に発生するカビの繁殖を防ぐために使用される食品添加物です。
これらは「ポストハーベスト農薬」とも呼ばれ、日本では食品衛生法で残留基準が定められています。
ポストハーベスト農薬とは
ポストハーベスト農薬とは、収穫後の農産物の貯蔵や輸送中に発生するカビや害虫を防ぐ目的で使用される農薬のことです。特に、海外から輸入される果物(柑橘類、バナナなど)や穀物(小麦など)に使用されることが多いです。
主なポストハーベスト農薬の種類と用途
管理栄養士国家試験で問われる可能性のある主なポストハーベスト農薬は以下の通りです。主に防カビ剤として使用されます。
- イマザリル (Imazalil): 柑橘類、バナナなど
- オルトフェニルフェノール (OPP): 柑橘類など
- チアベンダゾール (TBZ): 柑橘類、バナナなど
- フルジオキソニル (Fludioxonil): 柑橘類、バナナ、あんず、キウイ、びわ、西洋なし、モモ、リンゴなど(近年、適用範囲が拡大される傾向にあります)
国家試験でよくでるポストファーベスト農薬について
項目 | 詳細 | 補足・注意点 |
正式名称 | ポストハーベスト農薬 または 収穫後農薬 | ポストハーベストは英語で「収穫後」の意味 |
使用目的 | 収穫後、農産物の貯蔵・輸送中に発生する「カビ」や「害虫」を防ぐため | 特に、海外から輸入される果物(柑橘類、バナナなど)や穀物(小麦など)に多く使用される。 |
日本での法的な扱い | 原則として「食品添加物」 | 農薬取締法ではなく、「食品衛生法」の対象となる。 |
規制 | 食品衛生法に基づき、残留濃度が厳しく規制されている。 | 基準値以下でなければ販売できない。許容一日摂取量(ADI)を基に基準値が設定されている。 |
表示義務 | ポストハーベスト農薬が使用された農産物には、原則として表示義務がある。 | 例:「防カビ剤 OPP、TBZ、イマザリル使用」などの表示。 |
主な種類(試験対策上重要) | 防カビ剤として使用されるものが多い。 | ・イマザリル (Imazalil):柑橘類、バナナなど ・ オルトフェニルフェノール (OPP):柑橘類など ・ チアベンダゾール (TBZ):柑橘類、バナナなど ・フルジオキソニル (Fludioxonil):柑橘類、バナナ、あんず、キウイ、びわ、西洋なし、モモ、リンゴなど |
健康への影響 | 日本で設定されている残留基準値は、人体への影響が限りなく小さくなるように設定されているため、基準値内であれば安全性が確保されていると考えられている。 | 大量摂取により肝臓や腎臓への影響が指摘されることもあるが、これは基準値をはるかに超える量を摂取した場合。 |
消費者への注意点 | ・よく洗う: 表面に付着しているため、食べる前によく洗うことで、ある程度除去可能。 ・皮の利用: 輸入柑橘類の皮を料理に使う場合は、特に注意が必要。 |
特に、生食する果物や、皮ごと利用する食品については意識しておくと良い。 |
✖️(5) 甘味料は、一括名での表示が可能である。
甘味料は、いくつかの例外を除いて、個別の物質名で表示する必要があります。「甘味料」という一括名での表示はできません。
食品添加物の表示には、基本的に個別の物質名を記載する「物質名表示」が原則です。
ただし、一部の用途の添加物(例えば、ガムベース、かんすい、イーストフード、香料、酸味料、乳化剤など)は、用途名と合わせて「一括名」での表示が認められています。
甘味料は一括名表示が認められておらず、例えば「アスパルテーム」「スクラロース」「ステビア」のように、それぞれ具体的な物質名を表示しなければなりません。

-
-
第39回【54問目】食品中の有害物質に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
第39回管理栄養士国家試験(54問目) 食べ物と健康 第39回【54問目】食品中の有害物質に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。 (1) アフラトキシンM1は、主に落花生から検出される。 ...
続きを見る
-
-
第39回【56問目】栄養成分とその分析方法の組合せである。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
第39回管理栄養士国家試験(56問目) 食べ物と健康 第39回【56問目】栄養成分とその分析方法の組合せである。最も適当なのはどれか。1つ選べ。 (1) たんぱく質 – カールフィッシャー法 (2) ...
続きを見る