第39回管理栄養士国家試験(33問目)
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
第39回【33問目】パーキンソン病に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) 主な責任病巣は側頭葉である。
(2) 脳内のドーパミンが増加している。
(3) まだら認知症がみられる。
(4) 四肢の筋肉は弛緩する。
(5) 便秘をきたす。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【33問目】パーキンソン病に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(5) 便秘をきたす。 です!


【33問目】パーキンソン病に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) 主な責任病巣は側頭葉である。
パーキンソン病は、脳の「黒質(こくしつ)」という部分の神経細胞が減ってしまうことで起こる病気です。側頭葉は記憶などに関わる場所なので違います。
中脳にある「黒質(Substantia Nigra)」という部位のドーパミン産生神経細胞が変性・脱落することで発症する進行性の神経変性疾患です。
黒質から投射されるドーパミン作動性神経の働きが低下することにより、運動調節に異常が生じます。
側頭葉は記憶や聴覚、言語機能などに関わる大脳の一部であり、パーキンソン病の主な病巣ではありません(ただし、病気の進行に伴って認知機能障害が出現することもあります)。
✖️(2) 脳内のドーパミンが増加している。
パーキンソン病は、脳の中で「ドーパミン」という神経伝達物質が減ってしまうことで、体の動きが悪くなる病気です。増加するわけではありません。
パーキンソン病の病態生理学的な特徴は、まさにこの「脳内のドーパミン(特に黒質線条体路におけるドーパミン)」の減少にあります。
ドーパミンについて
ドーパミンは、スムーズな運動を計画・実行するために非常に重要な役割を果たす神経伝達物質です。
ドーパミンが不足することで、振戦(ふるえ)、固縮(筋肉のこわばり)、無動・寡動(動きが少ない)、姿勢反射障害といった主要な運動症状が引き起こされます。治療薬としてドーパミンを補うL-DOPA製剤が用いられるのもこのためです。
✖️(3) まだら認知症がみられる。
「まだら認知症」は、脳梗塞などが原因で脳のあちこちにダメージが起きるタイプの認知症です。パーキンソン病の患者さんにも認知症が見られることはありますが、一般的には「レビー小体型認知症」の症状として現れることが多いです。
認知症のタイプ
認知症の種類 | 主な原因と特徴 | 主要な症状(特に初期・特徴的なもの) |
アルツハイマー型認知症 (AD) | 脳内のアミロイドβやタウタンパクの蓄積により、神経細胞が破壊される。最も多いタイプ。ゆっくり進行。 | 新しいことが覚えられない記憶障害、見当識障害(時間・場所の認識)、判断力低下。BPSD(徘徊、興奮、妄想など)も多くみられる。 |
血管性認知症 (VaD) | 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により、脳細胞が壊死する。段階的に悪化(まだら認知症)。男性にやや多い。 | まだら認知症(できることとできないことの差)、運動麻痺、言語障害、嚥下障害、感情失禁。 |
レビー小体型認知症 (DLB) | 脳の神経細胞にレビー小体という異常なタンパク質が蓄積。パーキンソン病の症状を伴う。 | 認知機能の変動(日・時間帯で状態が変わる)、幻視(リアルな幻覚)、パーキンソン症状(震え、動作緩慢、転倒しやすい)。レム睡眠行動障害。 |
前頭側頭型認知症 (FTLD) | 脳の前頭葉・側頭葉の萎縮。比較的若年発症が多い。ピック病とも呼ばれる。 | 行動障害(脱抑制、常同行動、万引きなど)が初期に顕著、人格変化、言葉の障害(失語症)。食行動異常(甘いもの過食、異食など)。 |
✖️(4) 四肢の筋肉は弛緩する。
パーキンソン病の患者さんの筋肉は、むしろ「固縮(こしゅく)」といって、こわばって硬くなるのが特徴です。だらんと緩む(弛緩する)わけではありません。
パーキンソン病の主要な運動症状の一つに「固縮(Rigidity)」があります。
固縮とは
筋肉の緊張が高まり、関節を動かそうとすると鉛管を曲げるような、または歯車を回すような抵抗を感じる状態です。
筋肉が持続的に収縮しているため、弛緩している状態とは真逆です。この固縮は、姿勢の維持や動き出しの困難さにもつながります。
⭕️(5) 便秘をきたす。
パーキンソン病は脳の病気ですが、自律神経にも影響が出ることがあり、その結果、腸の動きが悪くなって便秘になることが非常に多いです。運動症状が出る前から便秘に悩まされる方もいます。
パーキンソン病の症状は、振戦、固縮、無動・寡動といった運動症状がよく知られていますが、実は自律神経症状などの「非運動症状」も非常に多く見られます。便秘は、その中でも最も頻繁に認められる非運動症状の一つです。

ドーパミンの減少は、消化管の動きを調節する神経にも影響を及ぼし、腸管の蠕動運動が低下することで便秘を引き起こします。
また、病気の進行による活動量の低下や、使用する薬の副作用も便秘を悪化させる要因となることがあります。栄養管理において、食物繊維や水分摂取の指導、適切な排便習慣の確立が重要となります。
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