第39回管理栄養士国家試験(78問目)
基礎栄養学
第39回【78問目】ミネラルとそれを構成成分とする酵素の組合せである。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。
⑴ 鉄 ー セルロプラスミン
⑵ 亜鉛 ー キサンチンオキシダーゼ
⑶ 銅 ー カタラーゼ
⑷ セレン ー グルタチオンペルオキシダーゼ
⑸ モリブデン ー スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
第39回【78問目】ミネラルとそれを構成成分とする酵素の組み合わせに関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(4) セレン ー グルタチオンペルオキシダーゼ です!


第39回【78問目】ミネラルとそれを構成成分とする酵素の組合せである。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️⑴ 鉄 ー セルロプラスミン
正解は・・
- 銅-セルロプラスミン
- 鉄-カタラーゼ
セルロプラスミンの構成成分と役割
1. 構成成分
セルロプラスミンは、以下の成分から構成されるタンパク質です。
- タンパク質(アポタンパク質)
- 銅イオン (Cu2+)セルロプラスミン1分子あたり、6〜8個の銅イオンが結合
つまり、セルロプラスミンの構成成分は、タンパク質と銅が結合した銅タンパク質(メタロプロテイン)です。
2. 役割
セルロプラスミンは、体内で主に以下の2つの重要な役割があります。
① 銅の輸送と代謝
銅の運搬とは・・?
食事から吸収された銅は、肝臓でアポセルロプラスミンと結合してセルロプラスミンとなり、血液中に放出されます。
セルロプラスミンは、血中の銅を安全かつ効率的に「全身の組織へ運ぶ輸送する車」のような役割を果たします。
ウィルソン病との関連
セルロプラスミンの合成や銅との結合に異常が生じると、銅が肝臓や脳などの組織に過剰に蓄積します。
蓄積することでウィルソン病という疾患を引き起こします。
② 鉄の代謝と抗酸化作用
フェロオキシダーゼ活性とは・・?
セルロプラスミンはフェロオキシダーゼという酵素活性を持っています。この酵素は、鉄イオン(Fe2+)を鉄イオン(Fe3+)に酸化する働きをしています。
つまり、セルロプラスミンは鉄イオンの酸化(Fe2+→Fe3+)をする働きを持っています
鉄の運搬補助・・?
体内の鉄は、Fe(3+)の形で輸送タンパク質であるトランスフェリンと結合し、全身に運ばれます。
セルロプラスミンが鉄イオンの酸化(Fe2+→Fe3+)をすることで、鉄がトランスフェリンに結合しやすくなり、結果として鉄の運搬を間接的に助けています。
酸化ストレスの抑制・・?
鉄イオン(Fe2+)は、フリーラジカルを生成し、細胞に酸化ストレスを与える可能性があります。
セルロプラスミンが鉄イオンの酸化(Fe2+→Fe3+)することでフリーラジカルの生成を抑え、抗酸化作用を発揮します。

✖️⑵ 亜鉛 ー キサンチンオキシダーゼ
正解は・・
- 亜鉛-DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アルカリホスファターゼ
- モリブデン-キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシターゼ、亜硫酸オキシターゼ
キサンチンオキシターゼの構成成分と役割
1. 構成成分
キサンチンオキシダーゼは、以下の成分から構成される酵素です。
- タンパク質(アポ酵素)
- フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD):フラビン酵素に分類される理由となる補酵素
- モリブデン
- 鉄・硫黄クラスター
2. 役割
キサンチンオキシダーゼは、プリン塩基の代謝において重要な役割を果たします。その主な働きは、キサンチンを尿酸に生成することです。
① プリン代謝の最終段階
プリンヌクレオチド(AMP、GMP)が分解されると、最終的にキサンチンが生成されます。
キサンチンオキシダーゼは、キサンチンを触媒し、最終産物である尿酸を生成します。
✖️⑶ 銅 ー カタラーゼ
正解は・・
- 鉄-カタラーゼ
- 銅-セルロプラスミン
カタラーゼの構成成分と役割
1. 構成成分
カタラーゼは、以下の成分から構成される酵素です。
- タンパク質(アポ酵素)
- 鉄(ヘム鉄)
カタラーゼは、ヘム酵素の一種であり、ヘムタンパク質に分類されます。
2. 役割
カタラーゼの主な役割は、体内で発生した過酸化水素(H2O2)を分解することです。
① 酸化ストレスの防御
細胞の代謝過程では、活性酸素種である過酸化水素が常に生成されます。過酸化水素は、細胞に酸化ストレスを与え、DNAや脂質、タンパク質などを損傷させる可能性があります。カタラーゼは、有害を加えてしまう過酸化水素を、無害な水(H2O)と酸素(O2)に分解することで、細胞を保護する重要な役割を果たします。
② ペルオキシソームでの機能
カタラーゼは、細胞内のペルオキシソームに高濃度で存在します。
ペルオキシソームは、脂肪酸のβ酸化やアミノ酸の代謝を行う場所であり、これらの代謝過程で過酸化水素が生成されます。
カタラーゼは、そこで生成された過酸化水素を速やかに分解することで、細胞の安全性を保っています。
⭕️⑷ セレン ー グルタチオンペルオキシダーゼ
グルタチオンペルオキシターゼの構成成分と役割
1.構成成分
グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)は、以下の成分から構成される酵素です。
- タンパク質(アポ酵素)
- セレン(Se)
グルタチオンペルオキシダーゼは、セレンを必須とするセレンタンパク質であり、セレノシステイン酵素の一種です。
2. 役割
グルタチオンペルオキシダーゼの主な役割は、細胞の酸化ストレス防御です。
① 過酸化物の解毒
グルタチオンペルオキシダーゼは、細胞に有害な過酸化水素(H2O2)や脂質過酸化物(ROOH)を分解する役割を担います。
グルタチオンペルオキシダーゼは、
還元型グルタチオン(GSH)を酸化型グルタチオン(GSSG)に変化させながら、過酸化物を無毒化します。
下記の図のように分解をすることで、細胞の酸化損傷を防ぎます。特に細胞膜の脂質が過酸化されるのを防ぐ上で重要です。
② グルタチオン還元酵素との連携
グルタチオンペルオキシダーゼが酸化型グルタチオン(GSSG)を生成した後、還元型グルタチオンは基質を還元しますが、
同時に還元型グルタチオン自身も基質によって酸化されるので、還元型グルタチオンは酸化型グルタチオン(GSSG)に変化してしまいます。
このサイクルによって、グルタチオンペルオキシダーゼが継続的に機能し、細胞内の抗酸化システムが維持されます。
生体ではペントースリン酸経路由来のNADPHの還元力を利用することで還元型グルタチオンを再生しています。
グルタチオンペルオキシダーゼによるH2O2の分解はこちら↓
✖️⑸ モリブデン ー スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
- モリブデン-キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシターゼ、亜硫酸オキシターゼ
- 銅・亜鉛・マンガン・鉄-スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
スーパーオキシドジスムターゼの構成成分と役割
1. 構成成分
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、酵素の活性中心に結合している金属イオンの種類によって、いくつかの種類に分類されます。
- 銅・亜鉛SOD(Cu,Zn-SOD)
- マンガンSOD(Mn-SOD)
- 鉄SOD(Fe-SOD)
2. 役割
SODの主な役割は、スーパーオキシドラジカル(O2•−)を分解することです。
スーパーオキシラジカルとは
スーパーオキシドラジカルは、体内で生じる活性酸素の一種で、O₂⁻と表記されます。これは、酸素分子(O₂)が電子を1つ受け取って不対電子を持った、非常に不安定で反応性の高い分子です。過剰に生成されると細胞を傷つけ、老化や生活習慣病の原因となることがあります。
① 活性酸素の第一防御ライン
スーパーオキシドラジカルは、細胞のエネルギー代謝(特にミトコンドリアの電子伝達系)の過程で生成される、最も初期に発生する活性酸素です。SODは、このスーパーオキシドラジカルを無毒化する生体内の最初の防御ラインとして機能しています。
SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)はその名の通り、スーパーオキシドを不均化する酵素のことで、2分子のスーパーオキシドを不均化して過酸化水素と酸素に分解します。ここでの不均化とは、2つの同一種の物質から異なる二種類の物質を生じる反応のことをいいます。
スーパーオキシドの不均化反応についてはこちら↓
② 他の抗酸化酵素との連携
この反応で生じた過酸化水素は、さらにカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼによる分解を受けて水に変換されます。
SODはこれらの酵素と連携し、生体の酸化ストレス防御システムを形成しています。
覚えとこう!
ミネラル | 構成成分とする酵素 |
鉄 | カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、キサンチンオキシダーゼ |
亜鉛 | DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アルカリホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) |
銅 | セルロプラスミン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) |
マンガン | スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、アルギナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ |
セレン | グルタチオンペルオキシダーゼ |
モリブデン | キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシターゼ、亜硫酸オキシターゼ |

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