管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【71問目】インスリンの作用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

Sponsored Link

第39回管理栄養士国家試験(71問目)

基礎栄養学

第39回【71問目】インスリンの作用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

⑴ 食欲を促進する。

⑵ GLUT4の細胞膜への移行を促進する。

⑶ グリコーゲンの分解を促進する。

⑷ 糖新生を促進する。

⑸ 体たんぱく質の分解を促進する。

第39回【71問目】インスリンの作用に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(2) GLUT4の細胞膜への移行を促進する。です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【71問目】インスリンの作用に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️(1) 食欲を促進する。

インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、食後の満腹感に関与することから、食欲を抑制する方向に作用すると考えられています。

インスリンは、食事によって血糖値が上昇すると分泌され、全身の細胞にグルコースを取り込ませることで血糖値を下げます

黒アザラシ
黒アザラシ
1箇所にいると血糖値を上げるグルコースを、全身に分散させているんだね!

このインスリンの分泌増加や、それに伴う血中のグルコース利用亢進が脳の満腹中枢を刺激し、食欲を抑制する働きがあると考えられています。
食欲を促進するのは、グレリンなどのホルモンです。

⭕️(2) GLUT4の細胞膜への移行を促進する。

インスリンは、筋肉や脂肪細胞の細胞膜に存在するブドウ糖輸送体であるGLUT4を細胞膜表面に移動させ、ブドウ糖の取り込みを促進します。

インスリンは、細胞表面のインスリン受容体に結合することで、細胞内の情報伝達経路を活性化させます。
この結果、細胞内に蓄えられていたGLUT4(グルコース輸送体4)が細胞膜へと移動し、より多くのブドウ糖が細胞内に取り込まれるようになります。これが、食後の血糖値を下げるインスリンの主要な作用の一つです。

GLUT1〜GLUT5の役割

GLUTの種類 主な存在部位 特徴・役割
⭐︎GLUT1 赤血球、脳(血液脳関門)、胎児組織など グルコースの取り込み速度が速く、基礎的なグルコース供給を担います。脳のエネルギー源を常に供給する重要な役割があります。
GLUT2 肝臓、膵臓のβ細胞、腎臓、小腸 グルコース濃度が高いときに効率よく輸送する、低親和性・高容量の輸送体です。小腸ではグルコース、ガラクトース、フルクトースを血中へ輸送します。膵臓のβ細胞では、血中グルコース濃度を感知してインスリン分泌を調整します。
GLUT3 脳(神経細胞)、胎盤など 高親和性で、わずかなグルコース濃度でも効率よく輸送できます。脳の神経細胞に最も多く存在し、GLUT1とともに脳へのグルコース供給を担います。
⭐︎GLUT4 脂肪細胞、骨格筋、心筋 インスリン感受性の輸送体です。インスリンの刺激がないときは細胞内に存在し、インスリンの作用により細胞膜上へ移動することでグルコースの取り込みを促進します。
⭐︎GLUT5 小腸の上皮細胞、精巣、腎臓など グルコースではなく、主にフルクトースの吸収に関わる輸送体です。小腸でフルクトースを吸収する役割があります。
しろくまさん
しろくまさん
⭐︎マークがついているGLUTはよく国家試験に出てるよ!

✖️(3) グリコーゲンの分解を促進する。

インスリンは、血糖値を上げるグリコーゲンの分解ではなく、グルコースをグリコーゲンとして貯蔵する合成を促進します。

グリコーゲンとは

グリコーゲンは、肝臓や筋肉に貯蔵されるグルコースの多糖体です。

インスリンは、血中のグルコースを減らすために、余分なグルコースをグリコーゲンとして蓄える作用を促します。

一方、グリコーゲンの分解を促進し、血糖値を上げるのはグルカゴンなどのホルモンです。

✖️(4) 糖新生を促進する。

インスリンは、血糖値を下げるホルモンなので、血糖値を上げる原因となる糖新生を抑制します。

糖新生とは

糖新生とは、アミノ酸や乳酸など非糖質の物質から肝臓などでグルコースを新しく作る経路のことです。

インスリンは、血糖値を正常に保つために、この糖新生の働きを抑制することで、血糖値の上昇を防ぎます。糖新生を促進するのは、グルカゴンやコルチゾールといった血糖値を上げるホルモンです。

詳しく糖新生をみよう
1)糖新生の役割

1.糖新生とは 糖新生は、飢餓状態において主に肝臓で炭水化物以外の基質から グルコースを生合成する経路のことです。 ※腎臓においても一部的に糖新生は行われます。 糖新生の反応(ピルビン酸から) 2ピル ...

続きを見る

✖️(5) 体たんぱく質の分解を促進する。

インスリンは、体たんぱく質の分解を促進するのではなく、アミノ酸からたんぱく質を合成する同化作用を促進します。

インスリンは、単に血糖値を下げるだけでなく、アミノ酸を細胞内に取り込ませ、たんぱく質の合成を促進する働きも持っています。
このため、インスリンは長や組織の修復に必要な同化作用を促すホルモンとしても知られています。たんぱく質の分解を促進し、アミノ酸を糖新生の材料として利用できるようにするのは、グルカゴンや糖質コルチコイドなどのホルモンです。

インスリンの作用は、単に血糖値調節だけでなく、糖質、脂質、タンパク質の代謝全般に関わる重要な役割を担っています。これらの働きを理解することは、糖尿病の病態や治療法を学ぶ上で不可欠です。

インスリンの役割まとめ

作用 詳細
血糖値低下 筋肉や脂肪組織へのブドウ糖取り込みを促進
貯蔵促進 肝臓や筋肉でのグリコーゲン合成を促進
脂肪合成促進 余ったブドウ糖を脂肪として蓄積
たんぱく質合成促進 アミノ酸からたんぱく質を作るのを助ける
糖新生抑制 アミノ酸などからブドウ糖が作られるのを抑制
←前の問題へ
no image
第39回【70問目】栄養素の吸収に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

第39回管理栄養士国家試験(70問目) 基礎栄養学 第39回【70問目】栄養素の吸収に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。 ⑴ フルクトースは、Na+ の濃度勾配を利用して吸収される。 ...

続きを見る

次の問題へ→
no image
第39回【72問目】空腹時と比べたときの食後の糖質代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。

第39回管理栄養士国家試験(72問目) 基礎栄養学 第39回【72問目】空腹時と比べたときの食後の糖質代謝に関する記述である。 最も適当なのはどれか。1つ選べ。 ⑴ 骨格筋への血中グルコースの取り込み ...

続きを見る

Sponsored Link

-管理栄養士国家試験問題・解説