第39回管理栄養士国家試験(61問目)
食べ物と健康
第39回【61問目】牛乳および牛乳加工品に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1) 牛乳製造におけるホモジナイズとは、カゼインミセルの大きさを均質化することである。
(2) バター製造におけるチャーニングとは、牛乳やクリームから分離した脂肪を練り上げることである。
(3) チーズ製造におけるカードとは、原料乳にレンネットを加えた際に生じる凝固物のことをいう。
(4) アイスクリーム類の1つであるラクトアイスは、乳固形成分が 15.0% 以上と規定されている。
(5) 発酵乳であるヨーグルトは、主にβ-ラクトグロブリンが等電点沈殿したものである。
厚生労働省 第39回管理栄養士国家試験の問題(午前の部)(2025) .
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001428960.pdf
第39回【61問目】牛乳および牛乳加工品に関する問題、解説スタート!
この問題の正解は、(3) チーズ製造におけるカードとは、原料乳にレンネットを加えた際に生じる凝固物のことをいう。 です!


第39回【61問目】牛乳および牛乳加工品に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
✖️(1) 牛乳製造におけるホモジナイズとは、カゼインミセルの大きさを均質化することである。
ホモジナイズの定義
牛乳中の脂肪球を細かく均一にすること
牛乳のホモジナイズの目的:
-
- 脂肪球の微細化と均一化
- 品質安定性(分離防止、舌触り改善)、つまり口当たりが滑らかになり飲みやすい
- 消化吸収の促進
- 栄養素の均一分散
- ノンホモ牛乳との違い: ホモジナイズしていない牛乳(ノンホモ牛乳)は、時間が経つとクリーム層が形成されることを理解しておく。
- 乳化安定性との関連: 水と油などの混合物の乳化を安定させる効果があること。
カゼインミセルは、牛乳中の主要なタンパク質であるカゼインが集合したもので、ホモジナイズによってその大きさが直接的に均質化されるわけではありません。
カゼインとは?
カゼイン(Casein)は、牛乳に含まれるたんぱく質の約80%を占める主要な乳たんぱく質です。残りの約20%は、乳清たんぱく質(ホエイプロテイン)です。
- 酸で凝固する性質: カゼインの最も大きな特徴は、酸を加えると固まる(凝固・沈殿する)性質を持っていることです。この性質を利用して、チーズやヨーグルトなどの乳製品が作られます。牛乳にレモン汁やお酢を加えると白い塊ができますが、これがカゼインです。
- ミセル構造: 牛乳中では、カゼイン分子はカルシウムやリン酸などと結合し、「カゼインミセル」と呼ばれる球状の粒子を形成して分散しています。牛乳が白く見えるのは、このカゼインミセルが光を乱反射するためです。
- 消化・吸収: カゼインは、ホエイプロテインに比べて消化吸収がゆっくりであるという特徴があります。
「スロープロテイン」とも呼ばれ、満腹感の持続や、持続的なアミノ酸供給に適しているとされています。
✖️(2) バター製造におけるチャーニングとは、牛乳やクリームから分離した脂肪を練り上げることである。
バター製造におけるチャーニング(攪拌)は、クリームを激しく攪拌して脂肪球を凝集させ、バター粒を形成する工程です。練り上げるのは、その後の「練圧」という工程です。
チャーミング
チャーニングは、クリームを攪拌することで、脂肪球の膜が破れ、脂肪球同士がくっつき合ってバター粒(凝集した脂肪)が形成される工程です。
このバター粒と、残った水分(バターミルク)を分離した後、バター粒を練り上げて水分を均一に分散させ、組織を整える工程が「練圧(ワーキング)」と呼ばれます。
バターの製造方法について
1. 最初のステップは「生乳の収集」です。
バターの主原料は、搾りたての生乳です。牧場から集められた生乳は、まず厳しい品質検査を受け、新鮮で安全であることが確認されたものだけが次の工程へと進みます。
2. 「クリーム分離」で脂肪分を抽出します。
生乳をそのままバターにするのではなく、まずはバターの主成分である乳脂肪を分離します。
「クリーム分離機」という遠心分離器を使用し、生乳を高速で回転させると、比重の軽い乳脂肪がクリームとして効率的に分離されます。これは、牛乳パックの上部にクリームが浮く現象と同じ原理です。この工程を経て、バターの基となるクリームが得られます。
3. 「殺菌・冷却」で安全性を確保し、品質を安定させます。
分離されたクリームは、雑菌の繁殖を防ぐために必ず「殺菌」されます。これにより、安全で衛生的なバターが製造されます。殺菌後、クリームはバター製造に最適な温度まで「冷却」されます。適切な温度管理は、高品質なバターを作る上で非常に重要な工程です。
4. バター製造の核心工程「チャーニング(攪拌)」
ここからがバター製造の最も重要な工程、「チャーニング」です。
冷却されたクリームを、専用の「チャーン」と呼ばれる攪拌機に入れ、強力にかき混ぜます。 クリームを攪拌し続けると、クリーム中に分散している乳脂肪の粒子が互いに衝突し、徐々に凝集し始めます。最初は液状だったクリームが、やがて粒状になり、さらに攪拌を続けると、黄色い塊となって現れます。これが、まだ水分を含んだ状態の「バター粒子」です。
5. 「水洗い・練り合わせ」で余分な水分を取り除きます。
チャーニングで得られたバター粒子には、バターミルクと呼ばれる水分が多く含まれています。このバターミルクをきれいに洗い流すために、「水洗い」を行います。 その後、「練り合わせ(ワーキング)」という作業が行われます。バター粒子をしっかりと練り合わせることで、残ったバターミルクをさらに絞り出し、バターの組織を均一で滑らかな状態に整えます。この際に、風味を調整するために塩を加えることもあります。
6. 最終工程「成形・包装」です。
最後に、完成したバターを消費者が使いやすい形に「成形」し、品質を保持するために空気に触れないよう「包装」します。 こうして、皆様の食卓に並ぶバターが完成するのです。
⭕️(3) チーズ製造におけるカードとは、原料乳にレンネットを加えた際に生じる凝固物のことをいう。
チーズを作る過程で、牛乳にレンネット(凝乳酵素)を加えると、牛乳が固まります。この固まった部分が「カード」です。
チーズ製造の最初の重要なステップは、牛乳を凝固させることです。これには主にレンネット(子牛の胃から抽出される酵素)が使用されます。レンネット中のキモシンという酵素が牛乳中のカゼインを分解し、カゼインミセルが凝集して固形物(カード)と液体(ホエイ)に分離します。このカードを加工していくことで様々な種類のチーズが作られます。
チーズの製造方法について
1. 最初のステップは「生乳の収集と検査」です。
チーズの主原料も、バターと同様に新鮮な生乳です。牛の乳だけでなく、ヤギや羊、水牛の乳が使われることもあります。 牧場から集められた生乳は、まず品質や衛生状態が厳しく検査され、チーズ製造に適していると判断されたものだけが次の工程に進みます。
2. 「殺菌・調整」で微生物を制御し、品質を整えます。
生乳は、チーズの種類や製造方法に応じて、「殺菌」されます。多くの場合、低温長時間殺菌や高温短時間殺菌が行われます。これにより、有害な微生物を除去し、同時に乳酸菌が働きやすい環境を整えます。 また、チーズの種類によっては、乳脂肪分を調整したり、乳酸菌の働きを助けるために培養した乳酸菌(スターター培養物)を添加したりする「調整」が行われます。
3. 「凝乳(ぎょうにゅう)」で乳を固めます。
ここからがチーズ製造の非常に重要な工程です。 殺菌・調整された乳に、「乳酸菌」と「レンネット(凝乳酵素)」を加えます。
- 乳酸菌: 乳糖を分解して乳酸を作り、乳のpHを下げて凝固を促進し、チーズの風味形成に貢献します。
- レンネット: 乳に含まれるカゼインというタンパク質を凝固させ、液状の乳をプリンのような固まり(カード)と、透明な液体(ホエイまたは乳清)に分離させます。
この凝固の過程は、チーズの種類によって時間や温度が細かく調整されます。
4. 「カードの切断・攪拌(かくはん)」で水分を調整します。
固まったカードは、専用の道具を使って細かく「切断」されます。このカードの大きさが、チーズの水分量や食感に大きく影響します。
例えば、硬いチーズを作る場合は小さく、柔らかいチーズの場合は大きく切断されます。 切断されたカードは、「攪拌」され、さらにホエイを排出しながら、チーズの粒が均一になるように整えられます。この際、ゆっくりと加熱すること(クッキング)で、さらにホエイの排出を促し、カードの硬さを調整することもあります。
5. 「ホエイの排出・成形」でチーズの形を作ります。
攪拌が進み、適切な硬さになったカードから、残りの「ホエイを排出」します。ホエイは、栄養価が高く、ホエイプロテインなどの健康食品にも利用されます。 ホエイが排出されたカードは、その後、型に入れて「成形」されます。この型に入れることで、チーズ特有の丸い形や四角い形などが作られます。成形されたチーズは、圧力をかけてさらに水分を絞り出し、組織を密にすることもあります。
6. 「加塩」で風味を加え、保存性を高めます。
成形されたチーズは、「加塩」されます。塩は、チーズの風味を引き立てるだけでなく、微生物の増殖を抑え、保存性を高める重要な役割を果たします。加塩の方法には、塩水に漬け込む方法や、直接塩を振りかける方法などがあります。
7. 「熟成」でチーズに豊かな個性を与えます。
チーズ製造の最後の、そして最も奥深い工程が「熟成」です。 加塩されたチーズは、温度や湿度が厳密に管理された熟成庫に移されます。熟成期間中、チーズ内部の酵素や微生物の働きにより、タンパク質や脂肪が分解され、複雑なアミノ酸や脂肪酸が生成されます。これにより、チーズ特有の香り、風味、組織が形成され、その個性が生まれます。熟成期間は、数日から数年におよび、チーズの種類によって大きく異なります
✖️(4) アイスクリーム類の1つであるラクトアイスは、乳固形成分が 15.0% 以上と規定されている。
ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上10.0%未満と規定されています。15.0%以上は「アイスクリーム」の規定です。
アイスクリーム類は、乳固形分と乳脂肪分の含有量によって、大きく「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の3種類に分類されます。
乳固形分と乳脂肪分の含有量
- アイスクリーム: 乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上
- アイスミルク: 乳固形分10.0%以上、うち乳脂肪分3.0%以上
- ラクトアイス: 乳固形分3.0%以上10.0%未満
アイスクリームの種類
アイスクリーム 乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上のもの。濃厚なミルクのコクが特徴です。
- ハーゲンダッツ(バニラ、ストロベリーなど)
- MOW(モウ)(バニラ、宇治抹茶など)
- PARM(パルム)(チョコレート、アーモンド&チョコレートなど)
- よつ葉 北海道アイスクリーム(バニラ、あずきなど)
アイスミルク 乳固形分10.0%以上、うち乳脂肪分3.0%以上8.0%未満のもの。アイスクリームよりはさっぱりしていますが、ミルク感はあります。
- ピノ
- レディボーデン
- 森永 チョコモナカジャンボ
- 森永 パリパリバー
ラクトアイス 乳固形分3.0%以上、乳脂肪分の規定なし(ほとんど含まれないか、ごく少量)。乳脂肪分の代わりに植物性脂肪が使われることが多く、あっさりとした味わいが特徴です。
- 明治 エッセルスーパーカップ(超バニラなど)
- ロッテ 爽(バニラなど)
- ロッテ クーリッシュ
- モナ王
- 白熊(カップ、バータイプなど)
✖️(5) 発酵乳であるヨーグルトは、主にβ-ラクトグロブリンが等電点沈殿したものである。
ヨーグルトは、主にカゼインが乳酸菌の働きで酸性に傾き、等電点沈殿して固まったものです。
β-ラクトグロブリンはホエイタンパク質で、加熱によって変性しますが、ヨーグルトの凝固の主役ではありません。
ヨーグルトは、乳酸菌が牛乳中の乳糖を分解して乳酸を生成することで、牛乳のpHが低下します。
牛乳の主要なタンパク質であるカゼインは、pHが等電点(約4.6)に近づくと溶解度が低下し、凝集して固まります。これがヨーグルトの固まるメカニズムです。
β-ラクトグロブリンはホエイタンパク質の一種で、熱に弱く、加熱殺菌によって変性・凝集しますが、ヨーグルトの酸凝固の主たる原因となるタンパク質ではありません。

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