管理栄養士国家試験問題・解説

第39回【68問目】食欲の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

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第39回管理栄養士国家試験(68問目)

基礎栄養学

第39回【68問目】食欲の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

⑴ 空腹感は、出生後の食経験によって形成される。

⑵ 脂肪細胞におけるトリグリセリド分解が亢進すると、満腹感が生じる。

⑶ 満腹中枢は、動脈と静脈の血中グルコース濃度の差が大きいと刺激される。

⑷ レプチンは、主に胃から分泌される。

⑸ グレリンは、食欲を抑制する。

第39回【68問目】食欲の調節に関する問題、解説スタート!

この問題の正解は、(3) 満腹中枢は、動脈と静脈の血中グルコース濃度の差が大きいと刺激される。です!

黒アザラシ
黒アザラシ
なんでこれが正解で、他の選択肢は違うの??

しろくまさん
しろくまさん
じゃあ、一つずつ詳しく見ていこうね!

第39回【68問目】食欲の調節に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

✖️(1) 空腹感は、出生後の食経験によって形成される。

空腹感は、お腹が空いたと感じる生理的な感覚で、特定の食経験によって形成されるものではありません。空腹感は血糖値の低下などによって引き起こされる、生命維持のための本能的な感覚です。

空腹感は、視床下部にある摂食中枢(空腹中枢)が刺激されることで生じます。

摂食中枢(空腹中枢)とは

摂食中枢(空腹中枢)とは、血中のグルコース濃度の低下や、胃が空になることによる物理的刺激特定のホルモン(グレリンなど)の作用によって活性化されます。空腹中枢の働きは生得的なものであり、後天的な食経験がその形成に直接関わるわけではありません。

✖️(2) 脂肪細胞におけるトリグリセリド分解が亢進すると、満腹感が生じる。

脂肪細胞でトリグリセリド(中性脂肪)の分解が亢進すると、エネルギーが使われている状態なので、満腹感ではなく空腹感が生じやすくなります。
満腹感は、肪が蓄積されている時に分泌されるホルモン(レプチンなど)によって引き起こされます。

脂肪細胞は、エネルギーが不足した際に、蓄えられたトリグリセリドを分解して遊離脂肪酸を血中に放出します。この状態は体がエネルギーを必要としていることを示しており、満腹感とは結びつきません。

満腹感を教えてくれるホルモン「レプチン」って何?

レプチンとは

レプチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンで、私たちの食欲をコントロールする大切な役割を担っています。
簡単に言うと、「もうお腹いっぱいだよ!」と脳に教えてくれる、満腹シグナルを送るメッセンジャーのような存在です。

レプチンの主な働き

レプチンの主な働きは以下の3つを覚えておきましょう。

  1. 食欲の抑制:脳の視床下部にある満腹中枢に働きかけ、食欲を抑えます
  2. エネルギー消費の促進:体温を上げたり、代謝を高めたりして、エネルギーの消費を促します。
  3. インスリン感受性の向上:血糖値を下げるインスリンの働きを良くする効果もあります。

レプチンと痩せることとの関係

レプチンは脂肪細胞から分泌されるため、体脂肪が増えると分泌量も増え、満腹感を感じやすくなります。

黒アザラシ
黒アザラシ
え、じゃあ太っている人ほどレプチンがたくさん出て、食欲が抑えられるんじゃないの?

実は、ここにレプチン抵抗性という問題が隠されています。肥満が続くと、脳がレプチンのシグナルをうまく受け取れなくなり、レプチンがたくさん出ているのに満腹だと感じにくくなってしまうのです。これが、肥満の人がなかなか食欲をコントロールできない一因と考えられています。

国家試験対策のポイント!

レプチンに関する国家試験の重要ポイントは以下の通りです。

ポイント

分泌源:主に脂肪細胞から分泌されます。

主な作用:食欲の抑制とエネルギー消費の促進です。

キーワード:満腹ホルモン、レプチン抵抗性、視床下部

これらのキーワードを押さえておけば、試験でレプチンに関する問題が出ても安心です。

満腹感は、食事によって脂肪細胞にトリグリセリドが蓄積され、その結果として分泌されるレプチンなどのホルモンによって脳の満腹中枢が刺激されることで生じます。

⭕️(3) 満腹中枢は、動脈と静脈の血中グルコース濃度の差が大きいと刺激される。

食事をすると、動脈のグルコース濃度が高くなり、組織で使われることで静脈のグルコース濃度との差が大きくなります。この差を感知して満腹中枢が刺激され、満腹感が生じると言われています。

満腹中枢が刺激されるのは「食事後」

満腹中枢が刺激されるのは、食後血糖値が上昇し、体内にエネルギーが供給されているときです。
脳の視床下部にある満腹中枢は、血液中のさまざまな情報を受け取って満腹感を判断します。

満腹中枢が受け取る情報

満腹中枢は、食事によって変化するさまざまな因子を総合的に判断して、満腹感を生み出します。

1. 血中のグルコース濃度

  • 動脈と静脈のグルコース濃度差A-V: 食後、全身の組織がグルコースを消費するため、動脈血と静脈血のグルコース濃度に差が生まれます。この差が大きいほど、満腹中枢が刺激されます。

2. 消化管ホルモンの上昇

  • コレシストキニン(CCK): 十二指腸から分泌され、胆のう収縮や膵液分泌を促すホルモンです。食事、特に脂質の摂取で分泌が促進され、満腹中枢を刺激します。
  • GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1): 脂質や糖質が十二指腸・空腸に到達すると分泌されます。血糖値の上昇を抑える働きとともに、満腹感を高めます。
  • アミリン: 膵臓からインスリンとともに分泌され、胃の内容物をゆっくり排出させ、満腹感を持続させます。
  • グレリン: 胃から分泌される食欲増進ホルモン(空腹ホルモン)です。満腹中枢ではなく、食欲を増進させる働きがあります。

3. 脂肪組織から分泌されるホルモン 

  • レプチン: 脂肪細胞から分泌されるホルモンで、「肥満を抑制するホルモン」として知られています。体脂肪が増加すると分泌量が増え、満腹中枢を刺激して食欲を抑えます。

動脈と静脈のグルコース濃度差(A-V差)とは?

動脈と静脈では、流れている血液のグルコース濃度が異なります。

動脈と静脈

  • 動脈血: 心臓から全身の組織へ送られる血液。食事で吸収されたグルコースが豊富に含まれています。
  • 静脈血: 全身の組織から心臓へ戻る血液。組織でグルコースが消費された後の血液なので、グルコース濃度は低くなります。

満腹中枢は、この「動脈血のグルコース濃度」と「静脈血のグルコース濃度」の差が大きいほど、「多くのグルコースが全身の組織で利用されている」と判断し、満腹感を覚えます。

A-V差が満腹中枢を刺激するメカニズム

①食事後、小腸から吸収されたグルコースは肝臓を経由して血液中に入り、動脈を通って全身へ運ばれます。このとき、動脈のグルコース濃度は急激に上昇します。

②その後、血液が全身の毛細血管を流れる過程で、細胞はグルコースを取り込んでエネルギーとして利用します。そのため、静脈に戻る血液はグルコース濃度が低下します。

この「動脈の高濃度グルコース」「静脈の低濃度グルコース」の差が大きいと、満腹中枢は食事によって体が十分に満たされたと認識し、「お腹いっぱいだ!」と信号を送るのです。

国家試験対策のポイント!

    • 満腹中枢は視床下部にあります。
    • 「動脈血と静脈血のグルコース濃度差」は、食後に大きくなります。
    • この濃度差が大きいほど、満腹中枢が刺激されます。
しろくまさん
しろくまさん
「A-V差が大きい=全身でグルコースが使われている」というイメージで覚えておくと、忘れにくいですよ!

✖️(4) レプチンは、主に胃から分泌される。

レプチンは、胃ではなく、主に脂肪細胞から分泌されるホルモンです。

レプチンは、脂肪細胞に蓄えられている脂肪量(エネルギー量)を脳に知らせる役割を持つホルモンです。
脂肪細胞が増えてレプチンが増えると、脳の満腹中枢が刺激されて食欲が抑制されます。

一方、胃から分泌される食欲関連ホルモンとしては、食欲を増進させるグレリンがよく知られています。

✖️(5) グレリンは、食欲を抑制する。

グレリンは、食欲を抑制するのではなく、食欲を増進させる働きがあります。

グレリンとは

グレリンは、主にから分泌されるホルモンで、空腹時に分泌量が増加し、視床下部の摂食中枢に作用して食欲を増進させます。
食事を摂取するとグレリンの分泌量は減少し、満腹感が得られます。このことから、グレリンは「空腹ホルモン」とも呼ばれています。

食欲を抑制するホルモンには、レプチンやコレシストキニン、GLP-1などがあります。

食欲の調節には、グルコース濃度や様々なホルモンが複雑に関与しています。これらのメカニズムを理解することで、食事のタイミングや量、内容を意識し、健康的な食生活を送るためのヒントが得られるでしょう。

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