翻訳の仕組み①
ここでは翻訳の仕組み①に関して、翻訳に関する基本的な用語の意味や構造を理解していきましょう。
tRNAとリボソームによる翻訳の仕組み
○mRNAからタンパク質への「翻訳」
RNAは主に、mRNA、tRNA、rRNAの3つがあります。
mRNAは伝令RNAとも呼ばれ、DNAを基質としてRNAポリメラーゼという酵素の働きによって前駆体mRNAが合成されます。(この過程を「転写」といいます)
前駆体mRNAは、その後スプライシングや5'キャップ、3'ポリAテールの付加などのRNAプロセシングという過程を経て、成熟mRNAへと変換されます。
※5'UTR、CDS、3'UTRについては「5)遺伝子の転写開始点、開始コドン、非翻訳領域(UTR)などの位置関係」で詳しく解説していますので、よければ見てみてください。
○tRNAとアミノアシルtRNA合成酵素
tRNAは転移RNAとも呼ばれ、その二次構造は「クローバー型」であることが大きな特徴です。また、tRNAの三次構造は「L字型」となっています。
このtRNAには、アンチコドンと呼ばれるmRNAのコドンと相補的に結合する三つの塩基があります。
そのためtRNAは、mRNAのコドンに対応したアミノ酸を3'末端に連結しているという特徴があります。
このtRNAへのアミノ酸の連結を行う酵素をアミノアシルtRNA合成酵素といい、このようにして3'末端にアミノ酸を連結したtRNAを、特にアミノアシルtRNAといいます。
翻訳の過程が進んでいくとペプチド鎖が、tRNAに連結していきますが、このようにして生じたペプチドを隣の部位に結合したtRNAへと転移させる酵素もあり、この酵素のことをペプチジル基転移酵素といい、このようにして3'末端にポリペプチドを連結したtRNAを、特にペプチジルtRNAといいます。
○リボソームの構造とtRNAの結合部位
リボソームは翻訳(タンパク質合成)が実際に行われる場所であり、
このリボソームの構成因子には、rRNAとタンパク質(リボソームタンパク質)があります。
原核生物では、50Sの大サブユニットと30Sの小サブユニットから構成されている70Sリボソームとなっていて、真核生物では、60Sの大サブユニットと40Sの小サブユニットから構成されている80Sリボソームとなっています。
タンパク質合成を行ってないときには、リボソームの大サブユニットと小サブユニットは解離した状態にありますが、タンパク質合成が開始されると大サブユニットと小サブユニットが結合して、翻訳可能なリボソームが完成します。
mRNAがタンパク質へと翻訳されるとき、mRNAにリボソームの小サブユニットが結合し、mRNAのコドンのそれぞれを解読して、コドンに対応したアンチコドンをもつtRNA を結合させます。
tRNAのリボソームへの結合部位は3箇所あり、A部位(アミノアシルtRNA結合部位)、P部位(ペプチジルtRNA結合部位)、E部位(ペプチジル基を転移した後のtRNA結合部位)と呼ばれています。
参考
※A部位のAはAminoacyl(アミノアシル)に由来しています。
※P部位のPはPeptidyl(ペプチジル)に由来しています。
※E部位のEはExit(出口)に由来しています。
翻訳の仕組み①(アミノアシルtRNA、リボソーム)についてはこれで以上です。
次は「2)翻訳の仕組み②(開始、伸長、終結)」について学んでいきましょう。
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2)翻訳の仕組み②(開始、伸長、終結)
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